「再現することができない実験」

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2013年8月、Nature誌に「医学生物学論文の70%以上が再現できない」という衝撃的な記事が掲載された。
「ドイツの製薬企業バイエル社が2011年におこなった内部調査によると、67のプロジェクトの約2/3において、関連する前臨床試験の正当性を確認することができなかった。2012年には、米国の製薬企業アムジェン社の科学者たちは、がんに関する53の重要な論文の実験結果のうち、89%は再現することができなかったと報告した。」

「2012年、米国国立保健研究所(NIH)は、研究結果の再現性の問題を分析し、幹部たちは動物実験がかかわる助成金申請や論文発表についてはより高い基準が必要だと提唱した。その基準では、最低でも、動物をどのように無作為化、盲検化したか、一群匹数をどのように決定したか、データ処理をどのように行ったかの記載すべきだとされている」

科学実験の再現性の問題は、べつに目新しいことではない。
2005年にスタンフォード大学教授のジョン・P・A・ヨアニディスは、PLOS Medicine誌に論文「なぜ発表された研究成果のほとんどは偽であるのか (Why Most Published Research Findings Are False)」と題して科学論文の分析結果を発表し、実験結果には誤りが多いことを指摘している。


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それでも「再現できない実験」は続く。
「科学研究」を舞台に、我先にと行われる論文発表競争に、動物たちは巻き込まれ、命を奪われていく。

引用
Nature誌
http://www.nature.com/news/nih-mulls-rules-for-validating-key-results-1.13469

PLOS Medicine誌
http://journals.plos.org/plosmedicine/article?id=10.1371%2Fjournal.pmed.0020124

写真はPETA
http://www.peta2.com/actions/nih-stop-letting-uw-madison-kill-cats/double-trouble-at-uw-madison-photos/

実験室 独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター

臨床医や一般社会は、動物実験がヒトの疾患の治療に貢献していることを公理のように信じていますが、この見方を支持する科学的根拠は少ないそうです。
2004年のBritish Medical Journal
http://www.hsi.org/japanese/helping-animals/be-cruelty-free/facts/animal-models-jp.html

またFDA(米国食品医薬品局)の調査では動物実験で有効性と安全性が確かめられた医薬品の92%が人の試験をパスしなかった(安全性または有効性が認められなかった)というデータもあります。(地球生物会議ALIVE2015年秋号より)
参考資料
http://www.peta.org/issues/animals-used-for-experimentation/us-government-animal-testing-programs/food-drug-administration/
http://d.hatena.ne.jp/usausa1975/20140605/p1


にもかかわらず、役に立つのかたたないのかわからないまま、動物実験は続けられています。
動物実験は、人には決してできないことも、することができ、そこから何らかの新しい結果を引き出し、論文を発表することができます。

独立行政法人 国立精神・神経医療研究センターには動物実験棟があり、そこで日々動物実験が行われています。
たとえば、神経研究所 遺伝子疾患治療研究部ではビーグル犬をつかった筋ジストロフィーの実験が行われています。
写真は同センターの筋ジストロフィー犬実験室で撮影されたもの。
無題
以下、センターの取材記事より
『ガラス窓の向こうの台にビーグル犬がいました。なるほど、健康な犬とは少し様子が違います。顔のほおがやせて、よくいえば精悍な感じです。座り込んだ後脚もおかしいのは、関節が固まっているのかしら。飼育技術者の青年がビーグル犬の口を開けると、巨大な舌が見えました。舌が大きくなって食事が飲み込めなくなることもあるのが、筋ジス特有の症状です。目つ
、きもトロッとして、しっぽもボサボサ肌の艶もよくありません。「係がいくら手をかけて世話しても、自分で毛繕いできなくなるのでどうしても汚れが目立つ。これはまだ良い方ですよ」
アウ・アウッ! くぐもった鳴き声がしました。別な、元気なビーグル犬のようでした。ここには全部で 70 匹のビーグル犬がいて、これだけの集団飼育は世界でもトップクラスだといいます。』
http://www.renkyo.or.jp/kinjisutoro-dogs.pdf

1988年にアメリカで筋ジストロフィーのゴールデン・レトリバーが見つかり、その精子をわけてもらい、日本で人工繁殖させ、産まれつき筋ジストロフィーのビーグル犬を作り出し、研究に使っているということです。
この取材記事には
「2013 年中にも結果がまとまり、国に新薬として申請が行われる。認められれば新薬の製造と販売が始まります」
と書いてありますが、研究がはじめられ25年たった今(2014年11月時点)、申請は行われていません。


同じ独立行政法人 国立精神・神経医療研究センターの神経研究所 モデル動物開発研究部では、霊長類のマーモセットでヒトの脳卒中モデルを作ることに成功したそうです。
http://www.ncnp.go.jp/press/press_release141021.html
マーモセットの脳の血管を手術で閉塞させ、脳卒中と同じ状態を作ることに成功。今後この脳卒中マーモセットをつかって、治療薬の研究が進められます。




kita

豚の犠牲:ゲノム操作でブタの筋肉倍増に成功…明大など

明治大学教授
長嶋 比呂志様


新聞で標記のニュースを拝見して、大変ショックを受けました。
感受性のある生き物がこのような実験に使われていることをとても悲しく思いました。
「食糧問題の解決に貢献できるかもしれない」とおっしゃっていますが、遺伝子操作された豚の肉が商業ベースで流通する可能性があると、先生ほどの方が本気でお考えですか?
私にはこの豚の苦しみと死をともなう実験が、ただ単に発表のための研究に思われてなりません。

先生は科研費、つまり私たちの税金を使ってブタをつかってさまざまな実験をしていらっしゃいますね。
私が一生懸命働いて稼いだお金が、「遺伝子操作された豚の肉を食料にしよう」という非現実的な研究に費やされ、豚の苦しみにつながっていることを 考えると罪悪感でいっぱいになります。

今年の3月には動物実験の廃止を求めるヨーロッパ市民が117万名の署名をEUへ提出したのをご存知ですか?
日本にも動物実験の廃止を求める市民はたくさんいるはずです。私もその一人です。
EUは市民の提案を退けましたが、この提案を審議して報告書を出しています。その報告書には「EUは動物実験を段階的に廃止すべきという市民の考 えを共有しており、動物実験の段階的廃止はEUの法規制の最終目標である。」との明言が繰り返し記述されています。

先生には、動物実験は最終的に廃止しなければならないものだという意識がございますか?もしそういった意識があるのなら、わたしのような素人が見ても無意味だと思える実験に豚を使って苦しめ殺すようなことはしないはずではないでしょ うか?

動物は湯水のようにいくらでも利用してもよい「モノ」ではありません。
少なくとも「遺伝子操作された豚の肉を食料にしよう」という研究は今すぐにやめていただけないでしょうか?
もしやめていただくことが出来ないのであれば、その理由をお聞かせください。
よろしくお願いします。

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ゲノム操作でブタの筋肉倍増に成功…明大など
http://www.yomiuri.co.jp/science/20151113-OYT1T50011.html

「遺伝子を効率よく改変するゲノム編集という技術を使い、ブタの筋肉を増やすことに成功したと、明治大や広島大などの研究チームが米専門誌で発表した。
 ゲノム編集は食肉や作物の品質を改良する新技術として注目を集めているが、安全性の検証や規制についての議論が今後、必要になりそうだ。
 研究チームは、ブタの皮膚細胞の核をゲノム編集で操作し、筋肉の成長を抑える遺伝子「ミオスタチン」を働かないようにした。この核をブタの卵子に移植し、2匹のブタの子宮に入れた。
 子ブタは4匹生まれ、このうち1匹のブタの筋肉を生後約1か月で調べたところ、筋肉の細胞の数が約2倍に増え、食肉となる部分の筋肉の重さが同時期の通常のブタに比べて1・4~1・7倍になった。ほかの3匹は生後まもなく死んだが、核を移植する時の操作が原因で、ゲノム編集の影響ではないという。
 今回研究を行った明治大の長嶋比呂志教授(発生工学)は「食料問題の解決に貢献できる可能性がある」と話す。」

明治大学教授 長嶋 比呂志氏
メールアドレス
https://www.meiji.ac.jp/agri/daigakuin/teacher/04/6t5h7p000001duv8.html



kita

実験用モデルブタ 血友病A ブタの精巣をヌードマウスに移植

2012年、自治医科大学、農業生物資源研究所、プライムテック株式会社は「血友病Aモデルブタ」の開発に成功したと発表した。
http://www.nias.affrc.go.jp/press/20121204/

以下、写真、動画、文章ともに発表論文から抜粋。

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A) 血友病Aブタモデル クローン・ブタ#1肉眼による写真、生後 2 日後に死亡。頬、前肢、後肢(写真は示していない)に斑状出血がみられる。病理学的検査により、血腫が明らかになった。
B)出生後、クローン・ブタ#4の前肢を示す。出生後、クローン・ブタ#4の左前肢に血腫が見られる。
C)ヒト型第 VIII 因子(150U/kg)投与後、5 日目 左前肢の出血は見られていない。出生後 28 日目のクローン・ブタ#4の肉眼による写真では、繰り返される出血により、左前肢に腫れが見られ、
D)ブタは足をひきずっている。(ビデオ1参照)


ビデオ1


抜粋以上
論文 http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0049450
要旨 http://www.habatakifukushi.jp/square/hemophilia/upimg/heamophilia%20A%20pigmodel.pdf


この血友病Aモデルブタは、大人になる前に血友病で死ぬ。そのため精子や卵を得ることができず、このモデルブタの後代を残すことが出来ない。
この問題を「クリア」するために、新たな実験が行われている。

「生後10日ほどの子ブタの精巣を子供の段階で切り取り、ヌードマウスの背中の皮下に移植し、子豚の精巣組織を発育させ、精子を作らせる」

このブタの精巣をヌードマウスの背中に移植するという実験は、科学研究費助成事業を受けている。つまり私たちの税金が使われている。2014.2015年度合わせて936万円が助成されている。
https://kaken.nii.ac.jp/d/p/26292171.ja.html


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参考資料
「血友病Aブタの開発に世界で初めて成功」PLoS Oneに掲載、2012年11月30日に自治医科大学で発表
http://www.nias.affrc.go.jp/press/20121204/
国立研究開発法人農業生物資源研究所の平成26年度に係る業務の実績に関する評価書
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/hyoka/dokuho/pdf/8_h26_seiken2.pdf

ブタの精巣をマウスに移植
http://maypat01.blog.fc2.com/blog-entry-58.html

sou

異種間移植

何百年、もしかしたら何千年も前から動物を使って試みられてきたこの実験はいまだ人への実用化に成功していない。
もうとっくの昔にあきらめただろうと願いたいが、残念ながらいまだ異種間移植は続けられている。
例えば最近でも
「ミニブタの臓器や細胞をレシピエントである霊長類に移植した場合、腹部への異所性心臓移植では500 日以上、機能性腎臓移植では約 3 カ月の臓器生着が得られている。異種膵島移植では多数の施設で 6 カ月以上の血糖制御が報告されていることから、最も近い将来に臨床応用が実現化されると期待されている」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/organbio/22/1/22_23/_pdf

しかし過去同様、実現化されることは決してないだろう。
何度も何度も失敗を繰り返し、遺伝子改変技術やiPSなどあたらしい「技術」が「発見」されるたびに、その「技術」を使ってあらたに異種間移植が試みられ、そのたびにおびただしい数の動物が苦しんで死ぬ。
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写真の一番下の産まれたての白いブタはすい臓がない。すい臓のないブタが生きられるわけもなく、生後まもなく重度の高血糖症状などによって死亡してしまう。もう死んでしまってるだろう。
このすい臓のないブタは、iPS技術を使った異種間移植を成功させるために産みだされた生き物だ。
人のiPS細胞を、産まれつきすい臓のないブタに入れて人のすい臓を作ろうという研究が現在行われている。

最近では特にブタの利用が多い。ブタは人に似ているからだという。
私たちはブタを見下げているからこそ実験に使っているわけだが、そのブタが人に「似てる」から実験につかうというのはご都合主義といおうか厚顔といおうか。

遺伝子なんとかやiPSなどに何百億もの税金を投入するより、食べ物に気をつけ精神を鍛錬するほうがずっと平和に長生きできるだろう。