動物実験は人の役に立っていない

清潔すぎる実験用マウス〜日経サイエンス2016年9月号より
http://www.nikkei-science.com/?p=50753
免疫系が未熟でモデルとしてお粗末。“汚い”ネズミと一緒にすると改善

科学者はふつう実験用マウスをネット注文で購入しているが,免疫学者のマソプスト(David Masopust)はわざわざ手のかかる方法をとった。以前にエモリー大学で研究していたころ,車で数時間かかる家畜小屋まで行って自分でマウスを捕まえた。市販の実験用マウスはいくつかの重要な免疫細胞を欠いているように思えたからだ。非常に清潔な環境で育てられているので,免疫系が未熟なのだろうと考えた。

その後マソプスト(現在はミネソタ大学教授)はこの仮説の検証に正式に取り組み,それが正しいことを10年越しで明らかにした。科学界や医薬品業界が人間用の疾病治療薬やワクチンを試すのに使っている実験用マウスは,いくつかの点で成人の免疫系モデルとしてはお粗末なのだ。この結果は先ごろNature誌に報告された。

メモリーCD8+T細胞なし
それによると,無菌施設で育てられたマウスの免疫系は,存在する免疫細胞の種類とそれらの細胞内で活性化している遺伝子から判断して,成人よりも乳幼児の免疫系に近いという。例えば感染に対する緊急応答を担うメモリーCD8+T細胞は,家畜小屋やペットショップのマウスには明らかに存在するのに,成体の実験用マウスでは実質的に検出不能だ。

実験用マウスがほかと違うことを「みな知ってはいたが,ついに証明されたのは喜ばしい」と,スタンフォード大学の計算システム免疫学者カトリ(Purvesh Khatri)はいう。

さらに,マソプストらが“清潔”な実験用マウスを“不潔”なペットショップのマウス(雑菌を持っている)と一緒に飼育したところ,2〜3カ月で実験用マウスの約1/5が感染症で死んだ。だが生き残ったマウスの免疫は以前よりも強くなり,免疫細胞の遺伝子活性も成人に似たものに変化した。その後の追跡実験で,これらのマウスはワクチン接種を受けたマウスと同様に細菌感染を撃退した。

これらの結果は,実験用マウスを野生マウスやペットショップのマウスと一緒に飼育すれば,ヒト成人の病状進行と治療への反応についてより現実に近い結果がわかる可能性を示唆している。加えて,実験用マウスが重要な免疫特性のモデルになっていないことを示しており,動物実験で成功した治療薬が人間の臨床試験で往々にして失敗するのはなぜかに部分的な説明がつきそうだ。「現実世界で重要な意味を持つ要因が,管理環境下の実験では抜け落ちている」とカトリは説明する。



ビールに含有の食品添加物が原因で死者続出!動物実験での安全性評価はアテにならず
2016年07月30日 06時12分 nifty ニュース

https://news.nifty.com/article/item/999/12111-25643/

私が以前、非常勤講師をしていた時に使用していた食品衛生学のテキストに、次のような記述があります。

「1963年以来アメリカ、カナダなどの一部のビール会社がビールの泡を安定化させるために、ビールにコバルト塩を添加するようになりました。ところが、コバルト塩を添加し始めて約半年後から、ビール愛飲家の間に急激に悪化する心筋障害を特徴とする奇病の発生が認められるようになりました。たとえば、カナダのケベック州では50名が発病し20名が死亡したと報告されています。それから4年後の1967年になって、この奇病の原因がビールに添加されていたコバルト塩であることが判明しました。この病気はコバルトビール心筋症と命名されました。コバルト塩の添加は中止され患者の発生もなくなりました。

 患者のコバルト塩の摂取量は一日当たり5~10ミリグラムと推定されましたが動物での試験では毒性を示すことはなかったのです。この心筋症はコバルト塩をアルコール(ビールはアルコールを含みます)とともに摂取することにより発症することがわかりました。
またコバルト塩の毒性はタンパク質やビタミンB1の欠乏によって増強され、コバルトビール心筋症が発症することがわかりました」(『食品衛生学』<水谷民雄/培風館>より)

 もしコバルト塩の毒性が、この例のように急激に悪化し死亡する心筋症ではなかったらどうでしょう。1~3年ぐらいビールを飲んでいたらがんになるとか、神経が徐々に侵され半身不随になるといった症状でしたらどうでしょう。誰もコバルト塩の毒性に気づくことなく、現在でもコバルト塩添加のビールをおいしそうに飲んでいるかもしれません。ぞっとしますね。

●動物実験では「安全」

 この非常に悲惨な事例は、次のような大変貴重な教訓を私たちに残してくれました。

(1)動物で添加物の安全性を調べた結果から人間に対する安全性を推定することが、いかに難しいことであるか。動物試験の結果から得られた安全量に一定の安全係数を乗じて、人間に対する安全量を算出することによって「添加物は安全」ということになっているのですが、皆様はどのように思われますか。コバルト塩の場合も、同様の方法でビールに使用されていたのです。

(2)このコバルトビール心筋症は、コバルト塩とアルコールが一緒に摂取された場合に発症、つまり添加物と他の成分との併用で発症するのです。添加物の安全性試験は、ネズミなどの実験動物に添加物を混ぜたエサを食べさせて試験しますが、一般に行なわれている動物による安全性試験では添加物の安全性は確保できないということを示しています。

 死者まで出たこの貴重な教訓は無視され、毎年新しい添加物がどんどん許可されています。TPP(環太平洋経済連携協定)が批准されると、加盟国から日本では承認されていない添加物を使用している食品が次々と大量に輸入されます。私は添加物を使用することなく食品をつくる研究を行っていますが、毎年いくつかでもこの世から添加物を減らしていくべきだと思います。

 読者の皆様は毎年新しい添加物が出てくるのを望みますか。ファッションのように新しい添加物の混ぜ込まれた食品を食べてみたいと思いますか。
(文=小薮浩二郎/食品メーカー顧問)

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