武蔵野美術大学課外ゼミ - 鳥を殺してカレーを作る

  • Day:2016.03.20 03:26
  • Cat:畜産
(以下、NONFIX番組案内から抜粋)

カレーライスを一から作る 関野吉晴ゼミの9か月
2016年2月25日(木)01:55~02:55 放送
探検家・関野吉晴(67歳)。現在武蔵野美術大学の教授(文化人類学)でもある彼は、ユニークな教育を行うことで知られ、学生たちの間で人気の先生だ。
2015年4月。関野は課外ゼミで学生たちに呼びかけた。
「カレーライスを一から作る」
米、野菜、肉、香辛料、塩、器、スプーンまで、カレーライスに必要なすべての材料を自分たちの手で育て、作り、食べようというプロジェクト。
関野は言う。
「いまの学生は、身の回りのものが何から出来ているかまったく知らない。モノの原点を知ることで、自分たちが生きている世界を正しく認識する力がつく」
制作期間はおよそ9か月。番組では、慣れない野菜作りや家畜の飼育に苦闘する学生たちの日々を取材。野菜や米は、有機栽培や自然農法で作った。思うように生育しない野菜を見て、「化学肥料を使ってもいいのではないか」「いや使うべきではない」と意見が分かれる。そして食べるために飼ったはずのホロホロ鳥に情が移り、「殺すのをやめよう」という意見も。学生たちは話し合い、「ペットとして飼ったのではないから屠るべきだ」という声が勝る。だが「実際に鳥を絞めるその日を迎えたら、どう感じるかわからない…」と悩む学生たち。

(抜粋以上)

カレーを作る最終段階。関野氏は育てた鳥を屠殺するよう生徒に呼び掛けます。
しかしどの生徒も殺すことをためらい屠殺を名乗り出ません。その様子に不満らしい顔で、関野氏は無言で自ら鳥の首をねじり屠殺を行います。そのあと関野氏は生徒たちに「首を切れ」と命じ、生徒たちに屠殺をさせています

構造としては、侵略した土地で強制的に地元民の殺害を命じた軍隊の上官と命じられた部下と同じです。
情を感じる相手に対して「殺したくない」という気持ちは人として当然の優しい気持ちあって、本来教師はその優しい気持ちを助長させるべき立場であるはずです。
関根氏がそうしなかったのはなぜなのか?なぜこの番組が堂々と「生きている世界を正しく認識する力がつく」授業として公共の電波を使って放送されてしまうのか?

私たちアニマルライツセンターは関野氏と番組に対して下記の質問状を送りました。


2016年3月20日
関野吉晴様

はじめまして。
NPO法人アニマルライツセンターと申します。
2016年2月24日に放送された「NONFIX カレーライスを一から作る関野吉晴ゼミの9か月」 について、栄養学上、環境保全上、法律上問題と思われる点が3つございます。関野さまのご見解をお聞かせください。

まず1点目は栄養学・環境保全上の問題です。
この授業では最終的に、生徒は必ず屠殺せねばならないという内容になっており「殺すのをやめよう」という生徒の声は無視されてしまっています。これは「肉を食べなくてはならない」という誤った栄養学上の知識を与えるおそれがあります。
すでにベジタリアン食が栄養学上何ら問題はないということは国際的なコンセンサスが得られており、2003年に作成されたアメリカとカナダの栄養士会がベジタリアンについてのガイドラインに「適切に準備されたベジタリアン食は、健康に有益であり、必要な栄養素を満たしており、いくつかの疾患の予防や治療にも利点がある」とあるように、むしろベジタリアンのほうが健康上メリットのあることが明らかになっています。
「肉を食べなければならない」という情報が日本では流布していますが、現実には牛や豚や鶏の肉を食べずとも、必要な栄養素を摂取することは十分可能であり、海外では健康面からベジタリアンになったスポーツ選手や著名人は少なくありません。
また健康面だけではなく環境面でもベジタリアンは貢献することができます。地表面積の30%を占める畜産業は環境破壊の大きな原因となっており、国際連合食糧農業機関(FAO)は、2006年の調査報告書「Livestock's Long Shadow(家畜の長い影)」の中で畜産業が環境破壊の2,3位に入ると報告しています。米国のワールドウォッチ研究所は2009年に発表した論文の中で、畜産業からの二酸化炭素排出量は少なくとも年間326億トンで、世界の年間排出量の51%に上るとしており、2010年にカナダのダルハウジー大学で発表された論文では、2050年までに1人当たりの肉の消費量を世界平均で19%から42%減らさなければ、温室効果を抑え、現状レベルの地球環境を維持することはできない、としています。
国連環境計画などの国際機関が環境の維持のためには肉食を減らす必要があると報告しており、海外では都市ぐるみで「ミートフリーデー(肉なし日)」に取り組んでいるところもあります。
こういった背景を鑑みると、肉食を強制することには環境保全上も大きな問題があると私共は考えます。
「殺したくない」という生徒には「肉を食べない」という選択肢があることを示し、その選択が栄養学上何ら問題なく、環境保全にも貢献できる選択であることを知らせることは教育者がなすべきことではないでしょうか?この点いかがお考えでしょうか?

2点目は法律上の問題です。
具材にするために飼育されていた鳥ですが、関野さまは「逃げてしまった」と言っています。しかし動物の愛護及び管理に関する法律第7条には次のように記載されています。
(動物の所有者又は占有者の責務等)
第七条 動物の所有者又は占有者は、命あるものである動物の所有者又は占有者として動物の愛護及び管理に関する責任を十分に自覚して、その動物をその種類、習性等に応じて適正に飼養し、又は保管することにより、動物の健康及び安全を保持するように努めるとともに、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない。
2 動物の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する動物に起因する感染性の疾病について正しい知識を持ち、その予防のために必要な注意を払うように努めなければならない。
3 動物の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する動物の逸走を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
4 動物の所有者は、その所有する動物の飼養又は保管の目的等を達する上で支障を及ぼさない範囲で、できる限り、当該動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(以下「終生飼養」という。)に努めなければならない。
5 動物の所有者は、その所有する動物がみだりに繁殖して適正に飼養することが困難とならないよう、繁殖に関する適切な措置を講ずるよう努めなければならない。


テレビ報道で、関野さまは安易に「逃げてしまった」とおっしゃっていますが、関野さまの行為はこの第7条に反するものではないでしょうか。またホロホロ鳥や鶏は家畜伝染病予防法の対象動物です。その動物を逃がしてしまわれていますが、捜索はされましたでしょうか?この点社会的な責任をいかがお考えでしょうか?

最後の3点目も法律上の問題です。
関野さまは鳥をしめる際に意識のある状態で首をねじり断頭していますが、「動物の殺処分方法に関する指針」(屠殺も適用されます)第3 殺処分動物の殺処分方法には
殺処分動物の殺処分方法は、化学的又は物理的方法により、できる限り殺処分動物に苦痛を与えない方法を用いて当該動物を意識の喪失状態にし、心機能又は肺機能を非可逆的に停止させる方法によるほか、社会的に容認されている通常の方法によること。
と書かれています。
OIEの屠殺基準Slaughter of animals for human consumptionにもEUの屠殺規則on the protection of animals at the time of killingにも、「首をねじり断頭」という方法を福祉的とする記述は見られません。
「首をねじり断頭」という方法が「できる限り苦痛を与えない方法」だと判断された理由とその科学的根拠をお示しください。また屠殺する際に生徒に「動物の殺処分方法に関する指針」を明示したかどうか教えてください。

以上です。

わたしたちは動物と人とが穏やかに共存できる社会を目指して市民運動を行っております。
たとえ屠殺される動物であっても福祉への配慮は国際スタンダードであること、動物を食べないという選択が動物の犠牲を減らすだけではなく自らの健康に有益で環境負荷も軽減できる選択であることを一人一人が知らされるべきだと思っております。
それには教育が大きな役割を果たすと考えており、教育者である関野さまのお考えを伺いたいと思っております。
お忙しい中恐縮ですが、下記までメール(sato@arcj.org)あるいはFAX、文書などでご回答願えますようよろしくお願い申し上げます。

〒150-0042
東京都渋谷区宇田川町12-3ニュー渋谷コーポラス1009
NPO法人アニマルライツセンター
佐藤史子
TEL:03-3770-0720 FAX:03-3770-0720


(NONFIX番組あてにも同日、同内容の質問書を提出)
フジテレビNONFIX“番組へのメッセージ”
http://www.fujitv.co.jp/nonfix/index.html
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「私たち人間の都合だけで、鶏を不幸せにしていいんでしょうか?」参議院農林水産委員会で言及

  • Day:2016.03.11 02:15
  • Cat:畜産
第190回国会
2016年3月10日(木曜日)参議院農林水産委員会で、小川勝也議員が畜産動物のアニマルウェルフェアについて言及しました。
小川議員秘書の計らいで、傍聴に行ってまいりました。


小川議員は冒頭「私は日本は先進国だとならってきて祖国に誇りを持っていた。しかし近年日本が世界に劣っているなあと思う分野がいくつかある。その中でも一番劣っているのがアニマルウェルフェアの概念だと思います」と述べ、日本の畜産動物福祉の評価が、中国やフィリピンよりも劣っていることを明らかにしました。


そして、日本のと畜場で牛や豚が水が飲めない状況にあることを資料で明示し、このことはOIE(世界動物保健機関)基準に反する、OIE基準の存在を知っているかと森山ひろし農林水産大臣にと問いただし、アニマルウェルフェアの意識を高めることを求めました。


次に、海外と日本の規制の比較表を提示し(*)、豚のストール飼育、豚の歯・尾の切断、鶏のバタリーケージ飼育、鶏のクチバシの切断の問題について、一つずつ言及していきました。


妊娠ストールの母豚の写真が掲載された資料を示し「繁殖用のメスの豚です。だいたい身動きのできないところで育てられているのが私たちの国ではほとんどであります」、豚の歯の切断については「麻酔なしの歯の切断は悲惨だ」「人間の歯もそう変わりありません。想像してみてください。麻酔なしでニッパーで歯をカットしようとするとどういうことになるでしょうか」「ずっと痛みにさいなまされる豚もいます」と述べ、80%の養豚場で豚の尾が切断されていることも明示しました。

そしてバタリーケージについては次のように述べました。

「なるべく狭いケージで小さい鶏で、卵をたくさん長期間産むように改良に改良を重ねてきたのが私たちの国の鶏卵生産現場です。そのおかげで物価の優等生といわれています。」

「私たち人間の都合だけで物価の優等生だということで鳥を不幸せにしていいんでしょうか?嘴を切断します。神経があるので痛いのではないかと言われています。鶏という動物がどういう動物かというと、一日に15000回地面をつつく。そして彼らも産まれてきた特徴があります。止まり木が必要である、砂場が必要である。そして地面をつついて餌があるかどうかを探したい。これを全部人間の欲望だけでクチバシをカットしてバタリーケージに押し込めているのが世界に冠たる経済大国、日本の姿なんです」




最後に小川議員は
「儲かる農業、これは否定しません。しかし私たちの国の農業は持続、共存これが大事だと思います。人間さえ良ければ家畜はどんなことをしてもいいんだという概念は私は間違っていると思う。もっともっといい国にしようじゃありませんか。」と述べ、ともに努力していこうと訴えました。



政治を担う人々が集まる国会という場で、このように詳細にわたり畜産動物の飼育の問題が取り上げられたのはおそらく初めてではないかと思います。「産業動物」というくくりで、その感受性についてクローズアップされることのほとんどない畜産動物たちの現状に、ほかの議員の方々も驚き、関心を持ったように感じました。


この小川議員の問題提起がきっかけとなり、畜産動物の苦しみを少しでも減らせるよう、私たちアニマルライツセンターは今後も尽力します。


*下記の比較表から「絶食・絶水による採卵鶏の強制換羽」「強制給餌(フォアグラ)」を除いたもの
http://www.hopeforanimals.org/animalwelfare/00/id=422



会議録


当日の小川議員の質疑は、下記のリンク先から動画で見ることができます。
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
*審議中継カレンダーで3/10を選択し、ポップアップ画面で小川勝也(民主党・新緑風会)を選択してください。
アニマルウェルフェアについての質疑は2:25:37ごろから始まります。

動画視聴には期限があります。期限切れの場合は、下記のリンク先から会議録をご覧ください。
http://kokkai.ndl.go.jp/
*詳細検索を選択し、日付を入力し検索してください。

「再現することができない実験」

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2013年8月、Nature誌に「医学生物学論文の70%以上が再現できない」という衝撃的な記事が掲載された。
「ドイツの製薬企業バイエル社が2011年におこなった内部調査によると、67のプロジェクトの約2/3において、関連する前臨床試験の正当性を確認することができなかった。2012年には、米国の製薬企業アムジェン社の科学者たちは、がんに関する53の重要な論文の実験結果のうち、89%は再現することができなかったと報告した。」

「2012年、米国国立保健研究所(NIH)は、研究結果の再現性の問題を分析し、幹部たちは動物実験がかかわる助成金申請や論文発表についてはより高い基準が必要だと提唱した。その基準では、最低でも、動物をどのように無作為化、盲検化したか、一群匹数をどのように決定したか、データ処理をどのように行ったかの記載すべきだとされている」

科学実験の再現性の問題は、べつに目新しいことではない。
2005年にスタンフォード大学教授のジョン・P・A・ヨアニディスは、PLOS Medicine誌に論文「なぜ発表された研究成果のほとんどは偽であるのか (Why Most Published Research Findings Are False)」と題して科学論文の分析結果を発表し、実験結果には誤りが多いことを指摘している。


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それでも「再現できない実験」は続く。
「科学研究」を舞台に、我先にと行われる論文発表競争に、動物たちは巻き込まれ、命を奪われていく。

引用
Nature誌
http://www.nature.com/news/nih-mulls-rules-for-validating-key-results-1.13469

PLOS Medicine誌
http://journals.plos.org/plosmedicine/article?id=10.1371%2Fjournal.pmed.0020124

写真はPETA
http://www.peta2.com/actions/nih-stop-letting-uw-madison-kill-cats/double-trouble-at-uw-madison-photos/
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