2013年1月からの妊娠豚檻廃止で、EUはどうなったか

2013年1月からEUでは、母ブタを、受胎の4週間後から出産の1週間前までの間、檻(ストール)へ閉じ込めることが禁止されました。

日本にはこのような規制がないため、妊娠豚檻廃止活動がおこなわれています。
http://maypat01.blog.fc2.com/blog-entry-3.html
妊娠豚檻(ストール)に入れられた母豚は、方向転換もできません。
文書3_html_m3b8ef4a
エーリック畜産情報9月号によると、
イギリス養豚理事会は、「EUでは、ストール廃止により、5~10%程度の豚肉生産量が減少し、深刻な価格高騰と豚肉不足が起きる」と警告していましたが、2013年7月時点で、豚肉生産の大きな減少は見られず、この規制強化を原因とした大きな混乱は確認されていないということです。(しかし豚飼養頭数は、この規制を受けて2012年から4%減と明らかに縮小しており、今後生産量・価格にも影響がでるかもしれません)

すべてのEU加盟国が、2013年から妊娠豚檻(ストール)の廃止ができたわけではありません。まだ未対応の国もあります。しかしストール廃止に向け、EUは動いています。EU域内では、欧州最大のミートパッカーのヴィオン社はアニマルウェルフェアに取り組んだ豚肉を評価した買い取り価格を設定して、一般の豚肉よりもプレミアムをつけて買い取る仕組みを作っています。また、アニマルエルフェア規制に違反した畜産物は取り扱わない方針を打ち出す大手スーパーも現れてきているということです。

2012年11月の段階でストール廃止未対応だったデンマークは2013年6月時点で、国内すべての養豚経営が、この規制に対応済みになったということです。
デンマークのアニマルウェルフェア規制はEUよりさらに厳しいものです。
wrepo01_h08.gif
※スノコ板は糞尿が板の間から下に落ち、糞尿処理の手間が省けます。しかし豚にとって快適なものではありません。蹄や乳頭などの体の一部がはさまり傷ついたり、立つときに足が滑ったりします。

デンマークでは2012年11月にストール廃止に対応していなかった生産者のうち、2/3は施設更新により対応し、残りの1/3は廃業したとのことです。
日本において妊娠豚檻(ストール)廃止を実施する場合も廃業しなければならない養豚業者が出るかもしれません。
ストール廃止を実施するためには、養豚業者は母豚の群飼育に適した施設の改築のための資金が必要となり、新たな飼養管理技術の習得、人材が必要になります。これらを行うことが不可能であれば、
①繁殖母豚の飼育を止め、子豚を外部から導入する肥育専門経営へ転換する
②廃業する
のいずれかを選択せねばならないでしょう。
畜産動物が少しでも暮らしやすい社会にするためには、痛み(設備投資費用・廃業)を伴います。だからといって何も行わないのなら、動物の痛みはこれからもずっと続きます。無麻酔で体の一部を切断され、方向転換もできない檻に閉じ込められ、寝床で糞をし、どんなに暑くても泥浴びのできない豚は、肥育豚なら半年、繁殖用のメス豚なら4、5年程度で殺されます。そうして苦しみ殺されてしまった豚の命は、二度と戻ってきません。

しかし私たちは、廃業しても転職することができます。設備投資してもあとでその分を取り戻すことができます。
アニマルウェルフェアに配慮した飼養技術を習得することで、生産性をあげることに成功している養豚業者もいます。
ポールセン経営は、デンマークにある養豚場で、繁殖母豚1200頭を飼育し、子豚販売を行っています。妊娠ストールを廃止し、母豚を群れで飼育する技術を持っている養豚場です。ストールを使う日本より成績がずっと良いことがわかります。
wrepo01_h10.gif
※ただし、デンマークやオランダでは豚の品種改良がすすんでおり、もともと子豚の生産能力が高い、ということもあります。

日本でストール廃止をしたらどうなるのか?
専門家によれば、日本国内の生産者が母豚の群飼育に取り組んだ場合、ストール飼いのころと比較して繁殖成績の低下が3年程度続くということです。これくらいの痛みは、今畜産動物に与えている痛みに比べるとわずかなものです。乗り越えればよいことです。EUでも2012年に従来型のバタリーケージを禁止したさい、多少の痛みを味わっています。一時、卵の生産量が落ち、価格は高騰しました。しかし加盟国は規制を遵守し2013年1月から価格は下落に転じています。卵の生産量については回復傾向にはありますが、以前より大きく減少しています。落ちて当然、落ちるべきと思います。動物に大きな負担を強いて作られる卵や肉は、そもそもそんなに大量生産大量消費されるべきではないのです。

妊娠豚檻(ストール)廃止で、EU域内での豚の飼育頭数は減っていますが、今後すべての国がストール廃止に対応するにつれ、もっと減ると思われます。もっと減るべきです。
EU域内だけで、月に2060万頭の豚が殺されています。日本は月に130万頭、日に5万頭近くが殺されています。


詳細は
エーリック 畜産情報9月号へ
http://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2013/sep/wrepo01.htm
スポンサーサイト

バタリーケージを使い続けるイタリアとギリシアが起訴されました

まだバタリーケージを使っているイタリアとギリシアが起訴されました。
EUでは2012年に従来型のバタリーケージは禁止になっています。
バタリーケージ(写真はアニマルライツセンターより 2011年の日本)
6423249741_7ab9004a4c.jpg

2012年からEUでは、ケージ飼育する場合は一羽あたり750平方センチメートル以上、止まり木や砂場、巣箱を設置(エンリッチケージ)しなければならなくなっています。
しかし2013年4月の時点でイタリアとギリシアが未だ同規制に対応していないとして、欧州委員会は、2カ国を欧州司法裁判所にEU指令違反として同月に起訴しました。今後、同裁判所にて違反が認定され、さらに是正期間を超過した場合、高額の罰金が科せられる可能性もあります。

バタリーケージは、誰が何と言おうと動物虐待です。エンリッチケージでさえ、砂があって止まり木があっても、かなり狭く(30センチ×30センチもない)、これが福祉!?と驚くようなしろものです。それすらも守れないような国は起訴されて当然です。
日本がもしEU加盟国であれば、同様に起訴されます。日本では採卵用養鶏の、90%以上でバタリーケージを使用し、鶏は金網の中で砂もないのに砂浴びの真似事をし、金網の上で羽は擦り切れ、土の上を歩いていれば自然に擦り切れてしまう爪は伸びきり、金網に絡まります。
日本の養鶏場 2011年アニマルライツセンター撮影
6423226765_b075c6cda3.jpg

EUでは2012年に従来型のバタリーケージが禁止になり、卵の生産量が減少し、その価格も高騰しました。
しかし加盟国のほとんどが規制を守り、生産量は回復し、2013年1月からは価格が下落に転じています。
wrepo01_10.gif
バタリーケージを廃止することで、痛みを負わなければなりませんが(設備投資や技術の習得など)、その痛みは一時的なもので取り返しのつくものです。しかしバタリーケージを使い続ける限り、動物の痛みはこの先もずっと続き、苦しみの一生を終えてと殺された鶏は、二度と戻りません。日本で、一日に廃鶏(卵の生産効率が悪くなりと殺される鶏)される鶏は25万羽です。(2012年度農林水産省統計より)

採卵用鶏の一生 http://maypat01.blog.fc2.com/blog-category-7.html

参考資料
http://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokusei/kaigai_nogyo/k_syokuryo/pdf/h25eu-animal.pdf
4-1-1-1 EU 法の違反手続き
欧州委員会は,加盟国が基本条約の義務に違反した場合は理由を付した意見を表明し,当該国が委員会の定めた期限内に意見に従わない場合は欧州裁判所に提訴することができる(EU 機能条約 258 条)。とくに,加盟国が指令の(理事会と欧州議会の合意を得た)実施期限を守らなかった場合は,欧州委員会が欧州裁判所に対し適当な額を明記して,当該加盟国に罰金を科すよう求めることができる(EU 機能条約 260 条(3))。
実際の違反手続き(infringement procedure)(注 16)は,まず欧州委員会が加盟国に正式通知文書(letter of formal notice)を送付し,一定の猶予期間(通常は 2 カ月)を与える。それでも是正されない場合は,次に理由を付した意見書(reasoned opinion)を送付し,また一定の猶予期間(通常は 2 カ月)を与える。順守できない場合,欧州委員会は欧州裁判所に提訴することができる,約 95%の違反例では提訴にいたる前に加盟国が法令を順守している。
4-1-1-2 採卵鶏指令の場合
採卵鶏指令については,国内法規の整備と規制実施の両方で複数の国が違反を指摘された。
1999 年の指令で狭いケージの使用が禁止された際,12 年間の猶予期間が設定された。しかし業界からは猶予期間の終わりが近づいても延長を要望する声が上がっていた(AgraEurope Jan 8 2008, Jan 2 2009)。
採卵鶏指令の規定により,加盟国は 2002 年 1 月 1 日までに指令に対応する国内法規を施行しなければならない。しかし対応の間に合わない加盟国は少なくなかった。1年後の 2003年 1 月 13 日,欧州委員会は5カ国(オーストリア,ベルギー,ギリシャ,イタリア,ポルトガル)に理由を付した意見書を送付した(以下,欧州委員会の報道発表による)。さらに半年後の同年 7 月 14 日,欧州委員会は 4 カ国(オーストリア,ベルギー,ギリシャ,イタリア)を欧州裁判所に訴えた。
そして 2012 年 1 月 1 日に,狭いケージの使用禁止が発効すると,今度は加盟国の約半数が違反手続きの対象となった。欧州委員会は規定の発効から1カ月経たない同月 26 日に,13 か国に正式な通知文書を送付し,さらに同年 6 月 21 日,欧州委員会は 13 か国に理由を付した意見書を送付した。うち 11 か国はその後順守にいたったものの,残り 2 カ国(ギリシャとイタリア)は翌 2013 年 4 月 25 日,欧州裁判所に訴えられた。




http://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2013/sep/wrepo01.htm
畜産動物に関する情報は、こちらから無料メルマガ登録すれば、届きます。
http://www.alic.go.jp/form/index.html




日本でもバタリーケージの卵を食べたくない!キャンペーン
がはじまっています。
http://save-niwatori.jimdo.com/





メモ sou

その豚肉がどうやって作られたのか?

  • Day:2013.08.05 13:19
  • Cat:畜産
一定の基準を満たした商品に対して、JAS(日本農林規格)マークをつけることが認められています。
JASE3839EE383BCE382AF-thumbnail2 (1)
JASマークには上の5種類があって、それぞれ基準が定められています。
たとえば、豚肉の商品について、有機JASマークをつけるなら
・畜舎が「家畜が横臥することができる敷料を敷いた状態又は土の状態の清潔がで乾いた床面を有すること。」
・繁殖用の雌豚は1頭あたりの面積が3㎡は確保されること
・家畜を野外に自由に出入りさせること(もしくは週2日以上野外に放牧すること)
などの基準をクリアしなければなりません。
※ただし、2013年現時点で有機JAS認定された豚肉はありません。有機JAS認定された畜産物は、とても少ないです。
http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/jiseki_h23_250213r.pdf

上から4つ目の「生産情報公表JASマーク」は、その食品の生産情報(生産者、生産地、農薬及び肥料の使用情報など)が、消費者に正確に伝えているということが認められている、というマークです。

生産情報公表JAS規格は、牛肉、豚肉、農産物、加工食品(豆腐、こんにゃく)及び養殖魚について制定されています。消費者の「食」に対する関心が高まっている中で、食品の生産情報(誰が、どこで、どのように生産したか)を消費者に提供する仕組みとして制定されたJAS規格です。

豚肉ついて生産情報公表JAS規格の認定を得ようとおもったら
・豚の出生日と、と殺日
・豚の飼育者
・豚の飼養場所と、と殺場所
・豚の食べた餌
・豚へ投与した動物用医薬品
などを消費者へ正確に伝えなければなりません。
しかし消費者へ知らせるべき情報は、とてもそれだけで十分だとは思われません。これだけでは、豚がどのように扱われていたか、まったく分かりません。

・尾、歯の切断が行われたか(行われたのなら麻酔ありか、なしか)
・去勢が行われたか(行われたなら麻酔ありか、なしか)
・繁殖用の豚を、妊娠豚用檻(ストール)で飼育したか(ストールを使ったなら、その期間と、1頭あたりの面積)・肥育豚の1頭あたりの飼養面積
・屋外への放牧を行っているか
・と殺のさいに、意識を失わせていたか
といった情報も公表すべきです。

動物をひどい目にあわせて平気だという人はほとんどいません。
畜産技術協会が行ったアンケート(2006年)では『家畜の快適さより価格を優先させるべき』と答えた人は5%にすぎません。74%の消費者は『価格と家畜の快適さのバランスが大切』と答えています。そして、じつに19%の消費者は『価格が高くなっても家畜の快適さを優先させるべき』と回答しています。動物がひどい目にあって平気という人は、少ないのです。
多くの人が家畜の快適さを無視すべきと考えていないのに、家畜の快適さについての情報を与えないのは、あやまりです。

ヨーロッパでは80%の消費者は『動物の権利はコストに関わりなく支持すべき』と考えています。そして畜産物を購入する際には『動物福祉に配慮されたものかどうか』ということが畜産物を購入する際の基準にもなっています。動物福祉への配慮はすでに国際的な合意が得られています。しかし日本において、畜産動物への関心は今も薄いままです。広々とした草原で動物が草を食んでいると思っている消費者が多いです(わたしもそうでした)
日本において畜産動物の地位を向上させるためには、まず畜産動物がどのように育てられているのか、私たち一人一人が知る必要があります。実態を知り、このままではいけないと多くの人が動くことで、今のような非人道的な飼育はなくなります。実態を明らかにするためにも、生産者情報公表JAS規格の中に、畜産動物の福祉に関する情報も含めるべきです。

生産情報公表の日本農林規格の見直しについて国が求めています(豚肉についてのみ)
2013年8月20日締め切り ※終了しました
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550001784&Mode=0
国の出している見直し案は「現状のままでよい」です。

「現状のままでよい」と思われない方は、意見を送ってください。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550001784&Mode=0
このリンク先の一番下に「意見提出フォーム」というボタンがあります。ここをクリックすると、意見提出フォームに切り替わります。

わたしは以下の意見を出しました。

現行の、生産情報公表豚肉の日本農林規格は、とても十分なものと思われません。
消費者が知りたい情報は、現行の
・豚の出生日と、と殺日
・豚の飼育者
・豚の飼養場所と、と殺場所
・豚の食べた餌
・豚へ投与した動物用医薬品
だけではありません。
畜産技術協会が行ったアンケート(2006年)では『家畜の快適さより価格を優先させるべき』と答えた人は5%にすぎません。74%の消費者は『価格と家畜の快適さのバランスが大切』と答えています。そして、じつに19%の消費者は『価格が高くなっても家畜の快適さを優先させるべき』と回答しています。動物がひどい目にあって平気という人は、少ないのです。
多くの人が家畜の快適さを無視すべきと考えていないのに、家畜の快適さについての情報が含まれていないのは、適切でないと思われます。
わたしは、以下6点の家畜福祉に関する情報を、生産者情報公表豚肉の日本農林規格の中に、含めるべきと考えます。
・尾、歯の切断が行われたか(行われたのなら麻酔ありか、なしか)
・去勢が行われたか(行われたなら麻酔ありか、なしか)
・豚の生産に当たって、繁殖用の豚を、妊娠豚用檻(ストール)で飼育したか(ストールを使ったなら、その期間と、1頭あたりの面積)
・肥育豚の1頭あたりの飼養面積
・屋外への放牧の有無
・出荷、と殺の際の動物福祉への配慮の有無(降載、移動、一時保管、世話、保定、気絶、と殺、及び放血の方法)

ヨーロッパでは80%の消費者は『動物の権利はコストに関わりなく支持すべき』と考えています。そして畜産物を購入する際には『動物福祉に配慮されたものかどうか』ということが畜産物を購入する際の基準にもなっています。
動物福祉への配慮はすでに国際的な合意が得られています。しかし日本において、畜産動物への関心は、今も薄いです。広々とした草原で動物が草を食んでいるという、実態とかけ離れた認識をもっている消費者が多いです(わたしもそうでした)
日本において畜産動物の福祉を向上させるためには、まず畜産動物がどのように育てられているのか、私たち一人一人が知る必要があります。実態を知り、このままではいけないと多くの人が動くことで、今のような非人道的な飼育はなくなります。
消費者の関心のある情報を与え、畜産動物の福祉を向上させるために、生産者情報公表豚肉の日本農林規格の中に、上記6点の畜産動物の福祉に関する情報を含めていただけるよう、お願いします。