人の「心の病気」のために実験に使われる動物

人の、恐怖や不安や「うつ」をなくすために、さまざまな動物実験が行われています。


人の外傷性ストレス障害(PTSD)の薬を開発するために行われる動物実験
SPS負荷ラットに試験薬を15日間投与したあと、ラットを箱に入れて4秒間の電気ショックを与える。24 時間後にまた同じ箱に入れた際の恐怖すくみ時間を計る』
PTSD:強い恐怖感を伴う経験をした人が、その経験を思い出して恐怖を感じたりパニックになったり、人生に絶望したりするなどの症状


SPS負荷ラット
心的外傷後ストレス障害(PTSD)として学際的に認められているモデル
SPSラットの作成方法
2時間の拘束→20分の強制水泳→15分間の休憩→エーテル麻酔を負荷
拘束にはこのような方法があります
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強制水泳とは出口のない容器に動物を入れて強制的に泳がせることです

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このようにして動物に恐怖を与え心に傷を負わせ「PTSDモデル」をつくり、実験に使っています。
グラクソ・スミスクライン社の販売する薬「パキシル」でも、上記のような動物実験が行われています。
http://www.info.pmda.go.jp/shinyaku/P201300142/340278000_21200AMY00200_A100_1.pdf



人の「うつ」に効く薬を調べるために行われる動物実験
学習性無力試験(絶望状態においた動物の反応を見る試験)
尾懸垂試験法
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『マウスの尾にテープを貼り付け、そのテープに穴を開けて懸垂用のフックに掛けます。逆さ釣りの状態をマウスは嫌がるので初めは暴れますが、次第にあきらめて無動となります。この状態を"絶望状態"と呼び、10分間中の無動であった時間(無動化時間)を計測します。抗うつ薬は無動化時間を短縮させる(絶望状態にさせない)効果があるので、抗うつ薬のスクリーニング法として用いられています。』
マウスが吊り下げられている下の写真と文は、星薬科大学のサイトより。

ほかにも絶望状態を作り出す動物実験方法があります。
シャトルアボイダンスを使う方法
下の動画の装置が「シャトルアボイダンス」です。音が鳴った後で、床に電撃が流されるとマウスはとなりの部屋へ逃げます。

真ん中のしきりを閉めると、マウスは電撃が流れても逃げることができなくなります。これを繰り返すとマウスは絶望し、無力になり動かなくなります。この状態で試験薬を投与し、しきりを開け、電撃を与え、マウスが隣に移動した回数から、その薬の効果をみます。
絶望状態をつくらせる「装置」にはさまざまなものがあり、星薬科大学では下のような電流の流れる装置を使っています。
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人の「不安」に薬物がどう作用するかを調べるための動物実験
コンフリクト試験
レバーを押すと餌が与えられるようにして、マウスにレバー押し行動を行うよう訓練した後、餌と同時に電気ショックを与える(絶水を施したマウスに水を飲むと電気ショックを与えるという設定もある)。
マウスは電気ショックを恐れ、レバー押し行動を行わなくなる 。(水は飲みたいが飲めないという葛藤(コンフリクト)状態)
抗不安作用のある薬物を与えると、そのマウスは電気ショックにかまわずにレバー押しを行うようになる。




人が恐怖の記憶で苦しむことのないように行われる動物実験
1.マウスをかごに入れ、ブザーを鳴らした直後に電気ショックを与える。マウスは、電気ショックにおどろき、はげしくジャンプする。
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2.24時間後に、マウスを別のかごに入れ、ブザーを鳴らす。電気ショックの記憶がよみがえり、マウスは身をすくめる。(下写真)
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3.身をすくめた時間を計る。
この実験は群馬大学大学院医学系研究科で行われた実験です。


2015年10月 遺伝子操作でうつ病モデルマウス作製に「成功」
理化学研究所のグループは、「ミトコンドリア病」の患者がうつ病や躁うつ病を併発することに着目して、その原因となる遺伝子を操作することで、自発的にうつ症状を繰り返すモデルマウスを初めて作製し、うつ状態の原因が脳内の特定部分の機能障害と関係がある可能性が高いことを突き止めた。
http://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/1/1/11240.html






ラットやマウスをおぼれさせたり、電撃を与えたり、身動きできない入れ物に閉じ込めたり、水が飲みたいのに飲めなくさせたり、遺伝子操作したり、人にはとうていできないことをすることで、なんらかの「新しいデータ」は得られるでしょう。実験者はその「発見」を学会で発表することができるでしょう。
でもそれだけです。

ラットを拘束しておぼれさせて作られたパキシルは、若者の自殺増加と相関関係にあることが報告されています。
2009年度の『自殺対策白書』では、自殺者が自殺したときの年齢は、精神科を受診していないグループより、受診したグループのほうが低い、となっています。
『精神科受診群は、非精神科受診群に比べて顕著に死亡時の年齢が低く、その60%が20~30代という比較的若年の成人であり、他方で、非精神科受診群の約75%が40歳以上であった』

できるだけ薬は使わないに越したことはありません。
しかし精神を追い詰められて行き場を失い、応急処置として、薬が必要なときがあります。
でもその薬をつくるために、動物実験をすることは正当化できる倫理的・科学的な理由はありません。

今使用されている抗精神薬がすべて、動物実験の結果発見されたものなのではありません。

最初の抗うつ薬であるイプロニアジドは、動物実験の結果発見されたものではありません。結核患者にこの薬を投与したところ、多幸的になるという観察が報告されたことによって、偶然に発見されたものです。
統合失調症の薬クロルプロマジンも、フランスの外科医がもともと手術後のショック症状の軽減のために使った薬が、患者に無痛覚をもたらすことが分かったことで開発されたものです。
抗躁病の薬リチウムはリウマチや痛風治療に使われていたもので、それが躁病にも効果があることが分かったものです。

(『精神疾患は脳の病気か』エリオット・ヴァレンスタイン 2008年著)




参考サイト http://kameriki.info/anxiety.html


以下、重要だと思われるコメントをいただいたので、追記します。
このコメントをいただいたことで、どうしても薬が必要なことがあるのだとわかり、記事の修正削除を行いました。

 横やりを入れるようで、申し訳ありませんが、やはり私も先のコメントの方と同様、薬を飲む我々患者を非難されたように感じました。私は躁鬱病という精神疾患を抱えており治療を続けています。躁状態の時に、多言、暴言、DV、浪費、異常な性欲、上司に対する上から目線な態度などがとまらず、入院したことがあります。現在は特に問題はありませんが、予防薬を服用しております。

 さて私が気になった点、不愉快になった点ですが、「人はどうでもいい」というよりも「精神疾患を患っている人に対して無知に基づく心無い発言をしてしまいがち」な印象を受けたことです。

具体的にはあなたが本文やコメントで書いた以下の4箇所です。

①「心の病気は、人的対応や社会的対応で治すのが基本です。」
②「あなたが悪くならないのは薬を飲んでいらっしゃらないからじゃないでしょうか?」
③「適切に使えば効果のある例もあるのですね」
④「心の病気になるととりあえずこの苦しみを何とかしてほしいと思います。とても苦しいです。一時的には救われます。でも覚せい剤と同じで、それがなければやっていけなくなります。それがほんとうに救うことになるのでしょうか?」

 こうした発言は、それを発言した側がどのような意図から発言したものであったとしても、しばしば精神疾患者を苦しめることになる可能性が高いことは理解しておかれた方がよいかと思います。

以下これら4つの書き込みについて、少しコメントします。

①病気にもよりますが、私の躁状態の場合、人的対応や社会的対応ではどうにもならなかったと思います。たとえば妻が私の話を聞いてるとき、妻が何か返答をすれば私は「なぜそんな返答しかできないんだ」と罵倒し、逆に妻が黙れば「なぜ黙っているんだ。お前はしゃべるだけの知性もないのか」と罵倒する。家族に連れられて病院に連れていかれた日、電車の中で家族に大声で怒りをぶつけ(椅子をたたく、ドアを蹴るなども、周りの乗客が引いていたようです)、診察待ち時間にも家族と大喧嘩し、診察中にも家族を罵倒するという状況でした。こんな状態の人に人的・社会的対応はまず無理だとおもいます(むしろ科学的に根拠のある有効な人的・社会的対応があるのであれば聞いてみたいものです)。

②逆に言うと「薬を飲むと悪化する(薬毒論)」ですね。私の場合は躁状態をかなり強い薬で鎮静化しました。入院中は副作用も強くでましたが、症状が良くなるのに合わせて、薬を徐々に減らし、今は予防薬のみです。これといった副作用もありません。予防薬を飲んでいることで入院中よりも症状が悪化したということもありません。

③少なくとも私には効果があるようですね。難しいのは「一般化」ですね。全体の何ケースがうまくいって何ケースがうまくいっていないのか。たとえば教員の不祥事が相次ぐと、あたかも教員全体に問題があるような印象ができてしまいますが、教員全体における問題のある教員の比率がわからないと正しいことは言えません。また「教員が」というのであれば、当然教員以外の職業集団との比較も必要です。医療の話になると、自分や知人の治った治らないの体験から、治療の効果が一般化されやすいですが、これは厳密な試薬試験をしなければわかりませんので、個人の体験談を集めていってもあまり意味はありません。もちろんわたしの治療経験もあくまで私がたまたまそうだったかもしれませんので、一般化はできません。

④少なくとも私の場合、薬物療法で救われた部分が少なからずあります。妻からも発病する以前のような温厚な性格に戻ったと言われています。またストレスがかかったとしても、極端に気分が上がったり下がったりすることなく、休めば元に戻るようになりました。さらに心の病気になったことで、心の病気を持つ人やその家族の辛さ(本の一部かもしれませんが)、心の病気への心無い発言(たとえば上に述べたあなたの発言)がどれだけ患者本人を苦しめるのか、といったことが当事者の実感としてわかるようになってきました。心の病気には、薬物療法も含めた近代西洋医学が有効である場合があることも実感できました。

 というわけで長々と書いてしまいましたが、こういう経験をする人もいるわけです。そして、私およびくろいのさんからすると、①人的・社会的対応で直すべきはずなににそれを知らないバカ、②薬をやめてなおったはずなのにそれを薬で治ったと勘違いするバカ、③効果のない治療法でも偶然なおることがある、④人間精神を薬に頼ってコントロールしようとするバカ(「覚せい剤」という喩もひどい)、と言われたように感じるわけです。

もちろん

>人への差別や搾取も看過できないものとして、原発や労働問題など、自分にできることに取り組んでいます

と考えているあなたが、精神疾患者をバカにして快感を味わっているような人間であるとは思えません。私も差別や搾取は許すべからざるものであると考えています。

ただ、医療に関する問題を扱うときは、さじ加減が非常に難しいと思いますね。医療の恩恵を受けるのは病人であり、差別の対象にもなりかねない「弱者」です。医療技術(動物実験も含む)を批判する言説は、時に医療技術がなければ困る人々に不安を与えます。両刃の剣といったところでしょうか。その辺のバランスが取れた価値観や言説がうみだせるとよいのかなと思います。




そして、もはや動物を使うのは時代遅れともいえるニュースが発表されました。
2016/11/22
脳の制御訓練で恐怖記憶を消去 PTSD治療に可能性

 人工知能(AI)を使って人の脳活動を制御する訓練をすることで、恐怖を感じたときの記憶を無意識のうちになくすことに成功したと、国際電気通信基礎技術研究所(京都府)などのチームが22日、発表した。
 災害や戦争に伴う心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療に応用できる可能性がある。一方で人々の洗脳に悪用される恐れもあり、チームは「生命倫理の有識者と慎重に使い方を検討する」としている。
 男女17人を対象に実験。赤色など特定の色の図形を見たときに、弱い電流を手首に流すという方法で実験参加者に恐怖記憶を植え付けた。
 その後、自分の脳活動を制御する訓練をしてもらった。



メモ kita
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EUの動物福祉政策

1992年のマーストリヒト条約に「動物保護宣言」が付帯された
「動物保護宣言
会議は,欧州議会,理事会および欧州委員会,ならびに加盟国に対して,CAP,輸送,域内市場および研究に関する EC 立法を起草・実施する際には,動物の福祉要件に十分配慮するよう要請する。」


1997年のアムステルダム条約では,動物保護への言及は議定書(全加盟国による合意書)の形をとり,マーストリヒト条約よりも高い位置づけが与えられた。
対象範囲は立法から政策に拡大され,さらに動物を「感受性のある生命存在」(sentient being)として認めた。またその一方,宗教や文化的伝統への配慮も求められることとなった。
EC 設立条約に付帯する「動物の保護と福祉に関する議定書」
「 高位なる条約締結者は,感受性のある生命存在としての,動物の福祉の擁護と尊重が確実に改善されることを願い,欧州共同体を設立する条約に以下の条項を付帯させなければならないということに合意した:共同体の農業,運輸,市場,研究に関する政策の策定と実施において,共同体および加盟国は,動物福祉の要件に十分な配慮を行わなければならず,その際,とりわけ宗教儀式,文化的伝統および地域遺産にかかわる,加盟国の法的または行政上の措置と慣例を尊重する。」


2008 年のリスボン条約(2009 年12月1日に発効)では,EU条約本体に初めて動物福祉が取り込まれた。
EU の2つの基本条約(EU 条約とEU機能条約)のうち、EU機能条約に動物福祉が追加、かつ対象となる政策分野も増えた。(漁業,工業技術開発,宇宙)。
「第 13 条
農業,漁業,運輸,域内市場,研究,工業技術開発,宇宙に関する連合の政策形成および実施に際して,連合および加盟国は,動物は感受性のある生命存在であるから,動物の福祉上の要件に十分配慮する。その際,とりわけ宗教儀式,文化的伝統および地域遺産にかかわる,加盟国の法的または行政上の措置と慣例を尊重する。」




以上引用元
農林水産省 平成 25 年度海外農業・貿易事情調査分析事業(欧州)報告書
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
http://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokusei/kaigai_nogyo/k_syokuryo/pdf/h25eu-animal.pdf

野生動物の殺し方


グラフィックス1
ワナにかけられ、「腱と皮だけでつながった状態」で、捕獲者に発見されたイノシシ。
2012年に撮影されたもの。

野生動物は、さまざまな方法で殺されています。
こういうやり方で殺さねばならない、という決まりはありません。
鳥獣保護を図るための事業を実施するための基本的な指針には
「捕獲個体を致死させる場合は、できる限り苦痛を与えない方法によるよう指導するものとする」
とされていますが、具体的な殺し方は示されていません。

殺す際に、長時間にわたり恐怖と痛みを与えるやり方は珍しいものではありません。
止めを刺す「止め刺し」の時だけではなく、ワナにつかまり捕獲者がやってくるまでの間も、動物はもがき苦しみます。
逃れようともがき、ワナにかかった足が擦りむけ、「関節がちょん切れて、腱と皮だけで繋がっていました。」ということもあります。


残酷ではないワナはありませんが、その中でもくくりわなやトラバサミは特に残酷です。

2013年6月
鹿 くくりワナ 
長時間かけて足をワイヤーで固定後、ナイフで殺す。

くくりわなに捕らえられた動物が「足が折れ皮一枚で繋がっている状態」で、ワナを見回りに来た捕獲者が発見することもあります。

ワナの見回りが3日にいっぺんなら、最長で3日間、捕獲者がやってくるまでもがきます。
人の仕掛けたワナにかけられたイノシシや鹿の中には、もともと3本しか足がないものもいます。
以前ワナにかけられたときに、足を引きちぎって逃げたのでしょう。

箱ワナならいいというわけではありません。
親子で捕らえられることもあります。

2012年12月
鹿 親子


2012年10月
イノシシ 親子
「親は外傷性ショックで虫の息」


2010年3月
鹿 親子
一撃必殺でない場合は、もがき苦しみます。子がさきに殺され、親は自分の番を待ちます。


2014年4月
イノシシ
箱ワナにかかった動物は「保定」されるまでの間、恐怖で苦しみます。


箱ワナの中で放置され、熱中症で死んでしまうハクビシンもいます。
現実に箱ワナにかかった小動物を、そのまま川に投げ込んで溺れ死にさせるということも行われています。
法的に問題はありません。






しかし、できるだけ苦しまない方法を考案されている方もいます。

電殺による方法

2013年5月
イノシシ
『実際の止め刺しはヤリで何度も刺したり棒で殴ったりと壮絶です。猪の最後を苦しませずに止め刺しすることを願っての方法です。狩猟をされている方のみご覧ください。』


電気止め刺し器
2016年10月31日 日本農業新聞より
https://www.agrinews.co.jp/p39326.html
[資材ナビ] 電気止め刺し器 末松電子製作所 「短時間で安全に」 負担減り捕獲数増
長崎県農林技術開発センターなどの研究チームは、害獣用の電気止め刺し器を開発した。捕獲した鹿やイノシシを電気で止め刺し(殺処分)する。作業が素早く、安全にできるため、捕獲従事者の負担が軽減できる。9月から限定販売を始めた。狩猟者に利用のポイントを聞いた。

 長崎県東彼杵町の鳥獣被害対策実施隊の粒崎松二さん(68)は「止め刺しが早くできるので、次のわな設置も早く、捕獲数が増えた」と効果を実感する。町から貸与され、試作段階から止め刺し器を利用する。

 止め刺し器は、充電式バッテリー内蔵の電源ユニットと、害獣に電気を流す通電支柱などで構成する。支柱先端の通電針(先端電極)を、害獣の背骨付近に刺し、失神させた後、心臓や脳に近い首筋などに通電させて殺処分する。「取り出しやすいように、取り出し口にイノシシを追いやって止め刺しする。最初は失神に20秒、2回目も20秒ほど電気を通す。1分で作業が終わる」と粒崎さん。出血もなく、殺処分までが早い。

 害獣が箱わなと先端電極に同時に触れることで電気が流れる仕組み。粒崎さんは、箱わなの取り出し口に水2リットルを掛け、電気を通しやすくして、効果を確実にする。

 「とにかく作業が安全」と粒崎さん。成獣のイノシシは100キロを超えることもあり、暴れると、箱わなを壊すほど危険。以前は、ロープやワイヤをイノシシの体に絡めて固定して殺処分していたが「大き過ぎると5、6時間かかることも。手が出せず、弱るまで2、3日待つこともあった」と話す。

 粒崎さんは、地元集落内の10箇所ほどで箱わなを管理する。以前は年間20頭ほどの捕獲が、いまは100頭を超える年もあるほど。今年は8、9月だけで74頭を捕獲。殺処分から箱わなを再び仕掛けるまで短時間にできることで、捕獲頭数増につながったとみる。

 利用の際には安全対策を怠らない。使用時は電気を通さないゴム製手袋、長靴を着用。作業は決められた手順を必ず守る。止め刺し器の使用前は、研修会に参加。毎年開かれる鳥獣害の講習会にも参加して、常に安全の意識を持つ。「大変なのは捕獲後の殺処分。止め刺しの負担軽減は、鳥獣害対策に必要」と強調する。

 東彼杵町では他の鳥獣被害対策実施隊メンバーも止め刺し器を使う。イノシシの捕獲は2015年度で約900頭。止め刺し器導入で「捕獲量が増えた」(同町)とみる。年1回開く、わなや電気柵の講習会に止め刺し器の利用と安全講習も設け、必ず参加してもらうという。
電気止め刺し器「エレキブレード」
 農水省の事業で長崎県農林技術開発センターと、電気柵メーカーの末松電子製作所(熊本県八代市)、捕獲わなメーカーの三生(佐賀県鳥栖市)などが共同開発し、特許を出願した。殺処分作業の軽減と、出血がなく、殺処分後の個体もきれいなため、精神的負荷が大きく減らせる。

 末松電子製作所が「エレキブレード」の名で9月から販売。支柱は組み立て式。支柱先端部分の長さは、注文に応じて変えられる。電源は、フル充電で20~30回使える。通電ケーブルの接続部などは防水仕様。ショート防止機能付きで先端電極が、箱わなに接触した時は、自動停止する。誤作動を防ぐため、二つのスイッチ操作で通電するなど安全性を高めている。

 「鳥獣害対策をしていない地域に販売しない」と同社。販売は、社員が購入先を訪れ、適正な使用方法を説明する体制をとる。当面は、地方自治体が組織する鳥獣害対策協議会向けに販売し、実施隊を中心に安全利用を進める。長崎県などの研究チームは「止め刺し技術の継承も必要。止め刺し器も対策の選択肢の一つと考えてほしい」と提案する。


価格は84,240円
問い合わせは末松電子製作所0965(53)6161


↓こちらの電気止め刺し器の値段も88,000円ほどだそうです。
http://newfuel1.com/kariken/densatu.html



電殺器であればほとんど一秒で即死です。
銃であれば、動物がワナにかかっているのを確認してから出ないと、銃を持ち出すことができません。銃刀法に反するからです。しかし電殺器は、銃と違い持ち運ぶことができます。法的な問題はありません。
電気的スタニング (Electrical stunning) による野生動物の殺処分について


一撃で急所を狙うためにレーザー付の銃を使う方法

2014年10月
イノシシ


箱ワナの動物を穏やかに保定する方法

2010年11月
イノシシ
角材を檻の網目から一本ずつ突っ込み、動きを封じる方法



箱ワナにかかった動物を、何度もヤリで突き刺して殺す、という方法がおこなわれている自治体に下記文書をFAXしました。
何度もヤリで突き刺して殺す、というのはこの自治体だけではありません。
多くの自治体で行われていることです。
みなさんが住んでいる地域の農業振興課や野生動物グループなどに問い合わせて見てください。(「野生動物の駆除について聞きたいのですが」と問い合わせると、担当部署につないでくれます)
もし何度もヤリで突き刺して殺しているのなら、改善を求めてみてください。
くくりワナやトラバサミの使用をやめるよう求めてみてください。
殺すのではなく、侵入の防止に重点をおいてほしいと、お願いしてみてください。
税金の使い道を決めるのは、わたしたちです。


農業振興課 ○○様

先ほどは電話でお話を聞いていただきありがとうございました。
野生動物の殺し方ですが、より人道的な方法として、電殺を検討していただけますようよろしくお願いします。
こちらのサイトに詳細・問い合わせ先が掲載されています。
「止め刺し 電殺器」で検索できるかと思います。
http://newfuel1.com/kariken/densatu.html

通常箱ワナにかかった野生動物を殺す際には、何度もヤリで刺して、という方法が行われますが、動物が死ぬまでに時間がかかり苦しむだけではなく、止め刺しをする人にも危険な作業だといわれます。
何度も突くとアドレナリンが出て、動物はより暴れることもあります。
しかしこの電殺ですと、背中の辺りのどこか1点に、電殺ヤリを刺せば、1秒で動物は殺されます。
(箱ワナ以外ですと、電気を通す役割をする金網部分がないため、2点刺す必要があります)
銃と違い持ち歩きができ、法的な問題はありません。
電殺による止め刺しがどのようなものか、動画で見ることもできます。
「猪 電気による止め刺し 動画」で検索できるかと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=nnWq7hp9bzM
電殺器の金額は8万円程度だということです。

また、箱ワナにかけられた動物を、従来どおりヤリで刺す場合も、狙いがそれて何度も刺して苦しめてしまうようなことのない方法を見つけました。
角材を箱ワナのメッシュの間から差し込んでいく方法です。
「箱ワナのイノシシの止めさし1.AVI」で検索できるかと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=H9Bq2SI5nvQ

このやり方ですと、銃を使う場合でも、銃の狙いが外れて即死させることができないということも減ると思います。また、時間のかかる保定作業は、動物を恐怖で苦しめ、人も疲れる作業ですが、角材を使うこのやり方でしたらそのような問題も軽減されると思います。

また、今年の夏に、農研機構の「野生動物による畜産被害の状況」の講演を聞きましたが、「駆除を続けてきたが効果がないことがわかっている。的確な侵入防止対策に今は重点を置いている」というおはなしでした。殺すのではなく「確実に防ぐ」ことを推進していただけますよう、あわせてお願い申し上げます。




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二酸化炭素による殺処分で、動物は苦しむのか

多くの自治体が、二酸化炭素ガスによる犬猫の殺処分を行っています。
衆議院調査局環境調査環境調査室資料より下図抜粋
無題
※注射では、麻酔薬であるバルビツール系や塩酸ケタミンが一般的に使用されています

注射による安楽殺の方法(新潟県生活衛生課に確認)
1.全身麻酔+鎮静剤を注射
2.筋弛緩剤を注射
※暴れる犬などに対しては注射ができません。その場合はケージに追い込み動けない状態にして麻酔注射をうつとのことです。麻酔+鎮静剤入りの餌を食べさせたらいいのではないかとも思い、その事をたずねると、そういった方法も何度も試したけど、効果が出ないことが多かったそうです。そのため、やむをえず注射による方法がとられているということでした。


私の住む大阪府(※)でも、新潟県と同じように一頭一頭、注射による殺処分を行っています。
(殺処分機を新設予定ですが、これは二酸化炭素による殺処分ではなく、吸入麻酔剤(イソフルランか、それと同等の薬剤)併用の機械とのことです。狂犬病発生時などの危機管理対策のためにより人道的な安楽殺ができるよう導入を予定しているということです。また暴れて注射できない動物を、安楽殺する場合にも、この機械が必要だということです。2014.7月大阪府に確認)
※大阪「市」ではガス室(麻酔なし)での殺処分が行われています。一部病気の動物に対しては注射による処分もしているとのこと(2014.9月確認)

大阪府の一年間(2012年度)の犬猫の殺処分数は3,172頭。 
※中核市(高槻市、東大阪市)、政令指定都市(大阪市、堺市)は除く

隣の兵庫県では、2012年度に4,968頭の犬猫が殺処分されています。
兵庫県の殺処分は、二酸化炭素を用いてガス室でおこなわれます。
(負傷動物など弱った犬猫に対しては、注射器による殺処分)

※2012年度の全国殺処分数→ http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/files/h23_dog-cat2.pdf

ガス室での殺処分

わたしには、「暴れているが苦しんではいない」とはとても見えず、見知らぬ場所へ連れてこられ、数日を不安の中で過ごしたのちに、このような方法で殺されることはどんなに辛いことだろうか、と思われます。

2013年3月はじめ。兵庫県に、殺処分方法を二酸化炭素によるガス室ではなく、一頭一頭麻酔注射器による方法か、あるいは山口県下関市のように二酸化炭素ではなく麻酔剤によるガス室での処分を検討してもらえないか、問い合わせました(生活衛生課の方が対応)。
その方が言われるには
「二酸化炭素による殺処分方法は、環境省が処分方法として『妥当だ』として示しているものである」
「二酸化炭素による殺処分方法は、苦しんでいるように見えるかもしれないが、実際のところはわからない。苦しんでいるという、科学的なデータを持っていますか?」
「一頭一頭麻酔注射でと言われるが、その注射をするときに、動物はおとなしくしているのか?暴れるのではないか?動物を押さえつけないといけないのではないか?それは動物をより苦しめることになるのではないか?」

電話を切ったあとで、調べました。

環境省が二酸化炭素による殺処分を認めているのか?
動物の殺処分方法に関する指針の「解説」の中で、環境省は、確かに殺処分方法の一つとして「二酸化炭素」をあげています。それは1995年に定められた古いものですが、環境省に電話して確認したところ現在も同じ方針であるということでした。ただ、どういった殺処分方法を選ぶかについては「各自治体に任せている」とのこと。
※解説は、インターネットで見ることができません。

二酸化炭素注入による殺処分で、動物は苦しんでいないのか?
2012年の衆議院環境局環境調査室資料(2012年に動物愛護管理法が改正されましたが、その改正のために審議された内容などについてまとめられたもの)では、二酸化炭素による殺処分について次のように書かれています。

麻酔ガスによる複数頭の殺処分は安楽死なのか疑問ではある。ただ、米国のように1頭ずつ静脈注射をするのは困難。(獣医師による意見)


日本大学獣医内科学研究室の研究では繁殖の役に立たなくなったビーグル犬雌を17頭実験に使い、二酸化炭素により死に至らしめる際の麻酔効果と覚醒状態を研究しています。
(繁殖させるために動物を利用し(ビーグル犬ということですから、実験用のビーグル犬かもしれません)殺す際に、さらに実験で使用するという非人道的なことが行われています)

【方法と結果】実験犬には、動脈圧測定用のカテーテルを大腿動脈、脳波測定用の電極を頭頂部皮下にそれぞれ留置した。実験犬は、急速炭酸ガス注入群、段階的ガス注入群 イソフルレン-炭酸ガス注入群 (このイソフルレンが、山口県下関市で、日本で唯一行われている麻酔ガスによる殺処分方法です)の3群に分けた。
急速炭酸ガス注入群は、二酸化炭素が95%の時に動脈血圧と心拍数の急速な低下を認めたが、脳波の値は覚醒を示す92±10であった。血液ガス測定では急速な二酸化炭素分圧の上昇と酸素分圧の低下を認めた。
段階的ガス注入群は、チャンバー内の二酸化炭素の上昇に伴って徐々に動脈血圧と心拍数が低下し、脳波の値も二酸化炭素60%で53±21、80%で41±23、95%で31±19と低下した。血液ガス測定では急速な二酸化炭素分圧の上昇が認められたものの、酸素分圧は段階的な低下を認めた。
イソフルレン注入群では、イソフルレン注入後に動脈血圧の低下と心拍数の上昇を示し脳波の値は54±10であった。その後炭酸ガスの急速注入で心拍数と動脈血圧と脳波の値29±20の低下が認められた。血液ガス測定では二酸化炭素注入後に急速な二酸化炭素分圧の上昇が認められ、酸素分圧は段階的な低下を示した。

【考察】二酸化炭素の急速注入は、中枢よりも先に循環動態への影響が大きく、覚醒下で低酸素(低酸素になると激しい頭痛、下痢、嘔吐などが起こる)陥ることが明らかとなった。
また、段階的な二酸化炭素の導入においては麻酔効果も段階的に現れたが、炭酸ガスによる刺激のためか忌避行動が観察されたため、安楽な麻酔状態ではないと考えられた。
イソフルレン麻酔の併用では、イソフルレン麻酔による非覚醒状態で炭酸ガスを導入するため、他の注射麻酔による深麻酔と同等な効果が得られると考えられた。

諸外国の状況・知見
アメリカの半分の州はガスによる殺処分を禁止しています。残りの州に対してもHSUS(全米人道協会)は、膨大な科学的データをもとに「ガスによる殺処分は動物を不必要に苦しめる」として、廃止を求めています。
Bringing an End to Inhumane Euthanasia
http://www.humanesociety.org/animals/resources/facts/end-inhumane-gas-chambers.html?referrer=https://www.google.co.jp/
WSPA(世界動物保護協会:現在はWAPと改名)は、犬と猫の場合、二酸化炭素殺処分は受け入れられないとしています。
http://www.icam-coalition.org/downloads/Methods%20for%20the%20euthanasia%20of%20dogs%20and%20cats-%20English.pdf
イギリスでは注射による安楽殺が行われています。
AVMA(アメリカ獣医師会)は条件付きで二酸化炭素を認めていますが、推奨はしていません。またこの「条件」をすべて整えるのは困難かもしれません。
http://atwork.avma.org/2013/02/26/euthanasia-guidelines-the-gas-chamber-debate/
OIE(世界動物保健機関)の動物福祉基準「野良犬の人口抑制(Stray dog population control)」では、犬への二酸化炭素を使用した殺処分は「死ぬまでに時間がかかる場合があり、苦しむ可能性がある」とされています。
http://www.oie.int/index.php?id=169&L=0&htmfile=chapitre_aw_stray_dog.htm

動物種によっては二酸化炭素が妥当な場合もあるかもしれませんが、犬猫に関しては、二酸化炭素殺処分は苦しむリスクがあり、もっとも苦しむリスクが低い方法は安楽死用注射剤だ、というのは間違いがなさそうです。



麻酔注射は、より動物を怖がらせるのか?
麻酔注射による殺処分を行っている、大阪府に確認。
「いったん引き取った犬猫は施設で保護するが、引き取り手がないとなると『ケージ』にいれて、処分する施設へ移動させる。ケージに入れたまま、ケージの隙間から手を入れて麻酔注射を打つ。」そうです。そのため暴れる、という状況にならないようでした。

麻酔注射による殺処分のレポート(アニマルライツセンターより)
→ http://www.bethevoiceforanimals.com/satsusyobun/detail/satsusyobun_02.html

ほかの自治体での、麻酔注射による殺処分


2013年3月6日
兵庫県 生活衛生課へ上記を伝え、日本大学獣医内科学研究室の研究報告が掲載されているURLを知らせ「殺処分方法を、苦しみの少ない方法へ変えてほしい」と再度要望。


アニマルライツセンターより
自分の住んでいる自治体に、殺処分方法の改善を求めよう
※下のほうに各自治体の動物行政担当窓口へのリンクがあります。


大阪府の動物行政担当の方は、このようにも言われていました。
「飼い主に連れてこられて、見知らぬ施設で何日か過ごし、そのあとケージに入れられ殺処分の場所へ連れて行かれ、処分される。それが動物にとってどれだけ苦しいことか考えると、一番いいのは、飼い主の腕の中で麻酔注射で処分されることではないかと思うこともあります」


メモ souken

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は じ め に
本報告書は農林水産省「平成25年度海外農業・貿易事情調査分析事業(欧州)」のうち,EUにおける動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要に関する調査結果を取りまとめたものである。
本調査の目的は,EUではどのような考え方のもとに動物福祉政策が行われているのかを踏まえた上で,農業部門に関わる現行制度を中心に概要を整理し,政策の全体像を示すことである。日本は現在EUとの間で経済連携協定(EPA)の交渉を進めており,こうした情報の提供は時宜に適ったことと思われる。
欧州における動物福祉はもともとキリスト教の教義に由来している。しかし現在では動物衛生,食品の質と安全,人間の健康,環境とのつながりが強く意識され,また科学的な裏付けをもった各種規制がなされている。先駆的な取組みはおもに英国で進み,やがて各国共通の最低基準としてEU法規が整備された。
EUは動物福祉に関する法規を1974年以降順次拡充してきており,2006年からは包括的な戦略を策定している。また2009年には基本条約(EU機能条約)にも動物福祉の尊重を盛り込んだ。さらに対外的にも世界動物保健機関(OIE)や二国間の自由貿易協定(FTA)を通じて動物福祉の基準導入を働きかけている。
しかしその一方でEUは,動物福祉に対する取組み姿勢の加盟国間の相違や,加盟国による法規不順守,消費者の認知度不足などの問題を抱えている。現在は2012-2015年の動物福祉戦略でこうした課題に対処しながら,新たな規制手法の検討を進めている。
OIEの規約は国際基準として我が国の畜産にも大きな影響がある。今後の国際的進展を把握する上でも,世界の動物福祉政策を先導するEUの状況を把握することは有益であろう。
本調査を進めるにあたっては以下の有識者(五十音順)による検討委員会を組織し,3回の検討会を開催した。


第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
1 動物福祉の歴史
日本においてはそもそも動物福祉という概念自体,畜産分野や動物保護分野以外ではまだ比較的馴染みが薄いと思われる。また動物福祉は日本とは異なる思想的伝統を持つ西洋で生まれたものであり,独特の考え方に基づいている。
そこでまず本章では,動物福祉はどのような考え方に基づいているのか,またそれはどのように形成されてきたのかといった点についてやや詳しく説明し,あわせて先駆的な英国等の法制化について紹介する。
1-1 動物福祉思想の起源:キリスト教
1-1-1 聖書に由来する概念
紀元前8百年から2百年の時代に,中国(孔子・老子),インド,ペルシャ(ゾロアスター),イスラエル,ギリシャで,他者への愛や助力をきわめて重要視する思想が発生した(注1)。
そのうちインドのマハーヴィーラ(ジャイナ教の教祖),ブッダ,ヴィヤーサ(ヒンドゥー教の改革者)と,ギリシャのピタゴラス,そしてイスラエルの後期預言者達は,動物を人間と同様に愛すべきだとした。これらの思想家は,後期預言者を除き,いずれも食用および犠牲のための屠殺を禁じた。そのため,ジャイナ教徒の圧倒的多数と,多くの仏教徒・ヒンドゥー教徒は今日に至るまで多くが菜食主義である。
ユダヤ教においては,動物の虐待と生贄を止めようとする後期預言者の主張を受けて,動物福祉(動物に与える不要な苦痛を避ける限りにおいて動物を奴隷化し屠殺できるという信念)がヘブライ語聖書に記された。これによって人間と動物の二重基準が成立した。またPhelps (2007: 46, 48)によれば,聖書は動物の(食料,衣類,労働力,輸送手段等としての)利用を認めると同時に動物の尊重を求めていた。そのためユダヤ教では,人間は動物を利用してよいが,ただし優しく思いやりをもって扱い,殺すべき時には素早く苦しみを与えないようにしなければならないと定めた(「聖書の妥協」)。今日この妥協は「動物福祉」と呼ばれる。
しかし,東地中海にキリスト教を広め,キリスト教の教義形成に貢献したパウロは,聖書の妥協と(後期予言者による動物と人間の)道徳的単一性を退け,ギリシャの哲学的伝統(アリストテレスや,ストア学派。動物は人間の便益のためにのみ存在し,望むままに搾取・屠殺してよい)を支持した。
その結果,4世紀にローマ帝国がキリスト教に改宗して以降,プロテスタントの宗教改革まで千年以上の間キリスト教ヨーロッパにおける動物擁護運動は事実上消え去った。中世の神学者たち(聖アウスグスティヌスや,トマス・アクィナス)はアリストテレス的な
1 動物福祉の歴史
教義を教え,理性的な魂を持つ存在たる人間のみが倫理的な扱いを受ける権利を有しており,動物に対する直接的な道徳的責務はないとした。
1-1-2 プロテスタントによる再発見と成文法
近世になってプロテスタントの神学者たち(ジョン・カルヴァンやジョン・ウェスレー)は,ヘブライ語聖書の中に「聖書の妥協」を発見してその教えを広めた。すなわち人間のために動物を搾取・屠殺してよいが,その利用に不可欠でない限り動物のあらゆる苦痛を避けねばならない。Phelps(2007: 48)によれば,この聖書の妥協は啓蒙主義以降1970年代前半に至るまで,欧州と北米における動物福祉思想を支えた。
1641年に清教徒の聖職者ナサニエル・ワードは,(アメリカのニューイングランドにある)マサチューセッツ湾植民地の法典「マサチューセッツ自由法典(Massachusetts Body of Liberties)」を編纂した。曰く,「何人も,通常人間の利用のために飼われている動物に対して,虐待や残酷な行為を働いてはならない。」これが西洋世界で最初の動物福祉法となった。
このように,プロテスタントや英国教会(次節を参照)は,欧米における動物福祉概念の再生と普及に大きな役割を果たした。その一方,カトリック教会は1992年まで動物福祉を完全には認めなかった。
1-2 世論の支持に基づく動物保護政策の成立
1-2-1 動物保護の広がり
プロテスタント宗教改革と啓蒙主義によって聖書の妥協は西洋の動物思想の中心になったが,しかしその関心が哲学者や宗教思想家を越えて広がったのは18世紀後半のことであった。その結果,18世紀までの動物保護の歴史は精神史であったのに対して,19世紀以降のそれは運動史あるいは政治史となった(Phelps 2007)。
17世紀から18世紀にかけて,さまざまな新しい思潮によって動物に対する旧来の見方が揺らいでいった(Radford 2001: pp.19-28)。具体的には諸分野における科学の進歩,芸術における自然の賛美,プロテスタントの伝える聖書の教え(聖書の妥協),普遍的人権,功利主義などである。とくに科学の進歩(地動説や,世界の探検と未知の生物種,人類発生前の絶滅種,動物と人体の組織の類似,種の進化の概念など)によって,世界が人間だけのために創造された,あるいは人間だけが特別であるという考えは弱まった。またベンサム(功利主義を体系化した)やルソーなどの18世紀の思想家は,感受性のある存在として動物の尊重を主張した。そして動物が喜びと苦痛を感じるという認識は,動物の虐待に対する非難につながっていった。
1-2-2 英国の法律制定
欧州における法律制定の最初の例は英国であり,他の諸国に大きな影響を与えた。
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
― III-3 ―
1776年に英国教会のハンフリー・プリマット神父が『動物に対する慈悲の責務と残酷な行為の罪』を刊行し,動物福祉は一般公衆の注目するところとなった(Phelps 2009)。そして19世紀初頭になると,イングランドで世界初の動物保護に関する広範な大衆運動が発達した(Phelps 2007)。
こうした流れを受けて1800年に初めて動物保護の法案が議会で審議され,その後1809年の法案を経て,1822年に初めて「残酷で不適切な牛の扱いを防止するための法律」(マーチン法とも呼ばれる)が成立した(Phelps 2007)。これはマサチューセッツ自由法典に続き近代世界で2つ目の動物福祉法となった。この法律基づく告発や,公衆への啓蒙を行う組織が作られ,1840年にはヴィクトリア女王の後援を得て現行の王立動物虐待防止協会となった。
その後英国では,一連の立法により保護の対象となる分野と動物の種類が拡大し,1911年には各種の虐待防止法令を統合・拡張した「1911年動物保護法」が成立した。これもまた世界に先駆けたものであった(松木・永松2004: p.15)。さらにその後多数の個別法が制定されたが,近年になって「2006年動物福祉法」に統合・現代化された(地球生物会議 2007)。
なお,Hardouin-Fugier(2006)によれば,1920年代まで大陸欧州各地では,公衆の面前での動物虐待(道徳上の悪影響が懸念される)のみが規制の対象であったが,やがてそうした条件は外されていった。
1-3 現代英国における進展
現代における動物福祉政策においてもまた,1960年代半ば以降の英国における展開が先駆的な事例となった。
農薬の害を警告した『沈黙の春』(レイチェル・カーソン,1962年)の影響を受けて,英国で1964年にルース・ハリソンの著した『アニマルマシーン』が出版された。この書籍は集約的工業的畜産の残虐性を批判し,欧州一般市民の関心を喚起した(松木・永松2004: pp.15-16)。その結果,英国農業省は「集約的畜産システムの下にある農用動物の福祉に関する調査のための専門家委員会」(ブランベル委員会として知られる)を設置した(Knierim et al. 2011: p.292)。
1965年のブランベル報告書は,動物は「立ち上がり,横になり,向きを変え,毛繕いをし,肢を伸ばす」自由(「ブランベルの5つの自由」)を持つべきだと表明し(注2)、正確な飼育基準を作るために応用動物行動学の進展が重要であると指摘した。動物の飼養基準を策定する動きは西欧全体に広がり、欧州評議会による一連の動物保護協定(2-1を参照)につながった(佐藤2005: p.9)。また1968年に英国が制定した農業(雑条項)法ははじめて家畜の「福祉」を具体的な施策として盛り込み(Radford 2001: p.264),その後EUで整備された豚,牛,バタリー鶏に関する指令と規則の原型となった(松木・永松2004: p.16)。
英国農業省はブランベル報告書を受けて農用動物福祉諮問委員会(FAWAC)を設置し,
1 動物福祉の歴史
― III-4 ―
1979年には農用動物福祉審議会(FAWC)へと移行した。これら2つの組織のいずれか(注3)が遅くとも1979年までに動物福祉の理想的な状態を定義する枠組みとして,「5つの自由」をまとめた。5つの自由はその後(1992-1993年)FAWCによって手直しされた。
(5つの自由)
1. 飢えと渇きからの自由 - 新鮮な水と,十分な健康と活力を維持する食物をすぐに利用できることによる
2. 不快からの自由 - すみかと快適な休息場所を含む適切な環境を与えることによる
3. 痛み,怪我,病気からの自由 - 予防あるいは速やかな診断と治療による
4. 正常な行動を発現する自由 - 十分な場所,適当な施設,および同じ種類の動物との交流による
5. 恐怖と苦悩からの自由 - 精神的苦痛を避ける条件と扱いの確保による
その後5つの自由は英国および各国において多くの立法の基礎となってきた。また2011年4月に設立された後継組織である農用動物福祉委員会(FAWC)の基礎となっている。
ただし近年になってFAWCは農業における動物福祉の最低基準は5つの自由を上回るべきであり,動物が自身の観点からみて生きるに値する生活を送っているかどうかに照らして定めるべきであると提案した。
1-4 今日的な考え方
1-4-1 健康,食品安全性,環境,科学
現在,動物福祉政策に対する世論の支持は,単に動物に対する倫理のみから来ているわけではなく,その背景には工業的と揶揄される集約的な畜産への反省がある。
集約的畜産では,家畜の病気と薬品の多用,環境汚染の問題が深刻となり,人の健康への影響や食品安全性,畜産物の品質に対する懸念が持たれるようになった。その最たるものがBSE(狂牛病)であった。また密飼いと広域大量輸送は口蹄疫などの家畜の病気の大
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
― III-5 ―
規模な発生と広範な広がりに寄与している。
動物を心身ともに健康に飼養することは,動物福祉に資するだけでなく,こうした問題への対応策とも重なっている。そのため動物福祉,家畜衛生,食品安全性の分野における政策は密接な関係がある。
Benett & Appleby(2011: p.252)によれば,動物福祉は感情に関わる問題であり,EUでは様々な非政府組織が関与している。しかしそれと同時に,動物衛生・食品の品質/安全性・人間の健康・環境とのつながりも強い。そのために動物福祉はEUにおいて重要な政治課題となっている。
また,動物保護の範囲が動物に対する暴力などの明らかな虐待の禁止から,生理的必要や種固有の行動の要求を満たす方向(福祉)へと拡充されるとともに,動物の心身の状態を明らかにする科学的な取組みが強化された。生理学,動物行動学,畜産学,病理学などの領域横断的な科学研究を根拠として政策や各種基準が検討されるようになった。
1-4-2 もう1つの流れ:動物の権利
Regan (2009: p.36)とFrancione(2009: pp.38-39)によれば,かつて動物倫理においては動物福祉の考え方が支配的であった。しかし1970年代以降は「動物の権利」が台頭し,現在は動物福祉とともに重要な地位を占めている。動物の権利は,動物福祉と異なり動物の使用(研究,食料,狩猟など)を認めない点が特徴である。その影響を受けて,多くの新しい動物福祉論者たちは動物搾取の廃止を長期的な目標としつつ,そのための手段として短期的には動物利用にかかる規制の改善を唱道するようになった。この立場は動物の道徳的重要性に対する関心を次第に高めて動物利用の廃止(または大幅な削減)を実現しようとするものであり,北米・南米・欧州で多くの大きな動物団体によって推進されている。また近年は英国教会やユダヤ教関係者の間にも,聖書の妥協にとどまらず,動物は人間と道徳的に同等であるというキリストや後期予言者の見方を伝える例がみられる(Phelps 2009: p.483, 485)。
(注1)以下,本項は特に断らない限りPhelps (2009)による。
(注2)5つの自由については農用動物福祉委員会(FAWC)のWebサイトによる(http://www.defra.gov.uk/fawc/about/five-freedoms/ last modified March 31, 2011)。
(注3)前注のWebサイトによると,いずれであったかは不明。
2 EU における動物福祉
― III-6 ―
2 EUにおける動物福祉
2-1 欧州評議会による動物保護協定
EUにおける動物福祉政策の導入には,欧州評議会が大きな役割を果たした。欧州評議会(注4)は人権などの分野で活動する欧州の国際機関であり,EU加盟国はいずれもこの機関に加盟している。
欧州評議会の取組みはしばしば条約の形をとり,現在200の条約がある。欧州評議会はこれまでに動物福祉に関する5つの協定(国際輸送,農用動物,屠畜,実験,ペット)を成立させており,EUはこれに署名している(注5)。そのうち農業に関係する協定は最初の3つである(以下,本報告書ではそれぞれ欧州国際輸送動物協定,欧州農用動物協定,欧州屠畜動物協定と呼ぶ)。欧州評議会が動物福祉に取り組んだ理由は,欧州評議会の主な活動分野である人権擁護が,動物の尊重と切り離せない関係にあるとの認識による(コックス 2005)という(注6)。
動物福祉関連の欧州協定
(1968年)国際輸送中における動物の保護に関する欧州協定(2003年改定)
(1976年)農用目的で飼養される動物の保護に関する欧州協定(1992年改定)
(1979年)屠畜される動物の保護に関する欧州協定
(1986年)実験その他の科学的目的に使用される脊椎動物の保護に関する欧州協定
(1987年)ペット動物の保護に関する欧州協定
5つの国際協定はいずれも「動物に不必要な苦痛あるいは障害を与えるのを避け,動物特有の生理的・行動上の要求に合った条件を用意することを目的としている」。また各協定の原則について,さらに詳細な情報を提供する勧告も採択されている(アップルビー&ヒューズ2009: p.252)。
EUでは,これらの協定を履行するために各種の指令を定めている。実際のところ,動物福祉に関する指令の大部分は欧州評議会の国際協定と勧告に基づいている(アップルビー&ヒューズ2009: p.254)。
なお,DG SANCO (2010: p.21)によれば欧州評議会は2010年に動物福祉に関する活動を中止した。
2-2 動物福祉に関するEU法の性格
以下ではEUの動物福祉政策に関わる範囲で,EU法の枠組みについて説明する。こうし
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
― III-7 ―
た事項の理解は,EU段階における動物福祉政策の位置づけや個々の施策の性格,あるいはEUと加盟国の役割分担を把握するうえで欠かせない。
2-2-1 EU法の種類と性格
EUの基本条約であるEU条約とEU機能条約は第一次法(あるいは一次法)と呼ばれる。それに対して基本条約の規定に基づきEU機関が制定する法令(派生法)は第二次法(あるいは二次法)と呼ばれ,「規則」「指令」「決定」などの種類がある(庄司2013: p.198)。また二次法には理由が付さていなければならない(EU機能条約296条)。
EUにおける畜産種類別の動物福祉関連法令はいずれも「指令」である。指令は達成すべき目的についてすべての加盟国を拘束するが,形式と手段の選択は国内機関に委ねられる(EU機能条約第288条)。つまり加盟国は指令に従って具体的な国内法令を整備する義務がある。ただし近年EUに加盟した国の一部には,動物福祉分野のについて最長10年間の猶予(Benett & Appleby 2011: p.251)が与えられている。また,農用動物の動物福祉に関する指令はいずれもEU共通の最低基準であり,加盟国は任意でより高度な福祉基準を独自に設けることができる(注7)。
それに対して「規則」は全体が拘束力を有し,すべての加盟国において直接適用可能(EU機能条約第288条),つまり国内立法がなくとも実施される(庄司2013: p.252)。動物の輸送や屠畜の例では,当初は指令として導入されたルールが,より統一的な基準が必要となったために規則へ移行した。
また,「決定」はその名宛人のみを拘束する。
動物福祉に関するEU法は経済的な性格が強い。EECを設立したローマ条約(1957年)の本来の目的は経済的なものであり,とりわけ加盟国間の自由貿易の促進に重点があった(Radford 2001: p.141)。そのため動物の保護に関するEU法は元来,第一義的には各加盟国で支配的な条件の間の相違を最小化してEU単一市場における競争の歪曲を防ぐことを意図している。農業,輸送,屠殺における動物保護のEU法は,EC条約の37条(共通農業政策と共通組織の策定。現EU機能条約の43条にあたる)に基づいている(Radford 2001: p.145)。
2-2-2 一次法の重要性
動物福祉の具体的な施策は二次法によっているが,その基礎となる基本条約の規定も重要である。EU条約はEUの管轄範囲および管轄権の行使基準について以下の原則を定めている(小林 2009: p.11-12を参照)。
・限定的個別授権の原則: EUは,加盟国が二条約(EU条約とEU機能条約)においてEUに委譲した管轄権の範囲内でのみ行動する(5条2項)。
・補完性の原則: EUの排他的管轄権に属さない分野においては,EUは検討中の措置
2 EU における動物福祉
― III-8 ―
の目標が,加盟国によって十分に達成できず,その範囲または効果のゆえにEUでより良く達成できる場合に,かつその限りにおいてのみ行動する(5条2項)。
・比例性の原則: EUの措置は内容的にも形式的にも,二条約の目標を達成するのに必要な限度を超えない(5条3項)。
したがって動物福祉に関する二次法を制定する際は,基本条約(とくにEU機能条約)における動物福祉の位置づけあるいはそれ以外の根拠と,EU段階の施策の必要性,および施策の限定が問われることになる。
2-3 EUにおける政策の沿革
2-3-1 規制の開始
EU内でも加盟国によって動物福祉に対する態度は異なっている。欧州北部と西部の国々では関心がより強く,動物福祉を保護する法律も広範かつ詳細な傾向にあるのに対して,南部および東部の国々ではその逆の傾向にある(Benett & Appleby 2011: p.249)。
原加盟6か国のうち動物福祉の伝統を有していたのはドイツとオランダだけであり,動物福祉は当初のCAPにおける優先事項ではなかった。しかし1973年にデンマークとアイルランド,英国が加盟するまでには,動物の扱いに対する世論の関心が高まっていた(Radford 2001: p.145)。とくにドイツと英国では屠畜の方法に対する世論の関心が強く,1974年には家畜保護に関する初のEC立法(屠殺前の気絶に関する要件を規定)につながった(Radford 2001: pp.145-146)。その説明条項は,経済上の関心にとどまらず,全ての形態の動物虐待を避けるためにECが行動すべきであることが受け入れられたと述べたが,後者にはEC条約上の根拠がなかった(Radford 2001: p.146)。
2-3-2 欧州協定を受けた規制の本格化
1977年には,国際輸送中の動物の保護に関する最初の指令が採択された。その内容は欧州評議会の協定とほぼ同じであった(Radford 2001: p.146)。協定の締結から9年後のことであった。
続いて1978年,閣僚理事会は「農用目的で飼育される動物の保護のための欧州協定」(1976年)を承認した。しかしこのときは農業ロビーによる反対もあって,決定の説明条項は「動物の保護それ自体はECの目標ではない」とした。以後,この欧州協定を受けて各種の保護基準が制定されていったが,1992年のマーストリヒト条約における付帯宣言(後述)まで,ECには動物福祉に関与する正式な権限がなかった(Radford 2001: p.146)。
EUにおける農用動物の福祉に関する法令の導入
1974年 屠畜前の動物の気絶処置に関する指令(74/577/EEC)
1977年 国際輸送中における動物の保護に関する指令(77/489/EEC)
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
― III-9 ―
1978年 農用目的で飼育される動物の保護のための欧州協定の締結に関する決定(78/923/EEC)
1986年 バタリーケージで飼養される採卵鶏を保護するための最低基準を定める指令
1991年 豚の保護のための最低基準を定める指令(91/630/EEC)
1991年 子牛の保護のための最低基準を定める指令(91/629/EC)
1998年 農用目的で飼養される動物の保護に関する指令(98/58/EC)
1999年 有機生産規則(EEC) No 2092/91を補完して家畜生産を含める規則((EC) No 1804/1999)
2007年 食肉生産のために飼養される鶏の保護のための最低限のルールを定める指令(2007/43/EC)
1989年には,共通農業政策(CAP)に動物福祉の保護が取り入れられた。この規則修正は「自然環境と動物福祉を,とりわけ望ましくない集約農業の防止により維持・保護・改善する」と述べた。またこれは「動物福祉の関心が環境上の関心と結び付けられる始まりとなった」(Benett & Appleby 2011: p.250)。
1999年には有機生産規則((EEC) No 2092/91)に家畜生産に関するルールが追加され,高度な動物福祉要件が盛り込まれた。
なお,2006年からは各種施策(農業以外も含む)を網羅した計画や戦略を取りまとめるようになった(4-3を参照)。
2-4 基本条約における動物福祉の位置づけ
現行のEU機能条約は第13条で,EUの政策における動物福祉への配慮について規定している。これは以下にみるとおり,1992年以来(Bennett & Appleby 2011: p.250)進められてきた基本条約への段階的な取り込みの結果である。
まず1992年のEU条約(マーストリヒト条約)に付帯された「動物保護宣言」は,CAP・輸送・域内市場・研究にかかるEU立法で動物福祉に十分配慮するよう呼びかけた。
「動物保護宣言
会議は,欧州議会,理事会および欧州委員会,ならびに加盟国に対して,CAP,輸送,域内市場および研究に関するEC立法を起草・実施する際には,動物の福祉要件に十分配慮するよう要請する。」
次に1997年のアムステルダム条約では,動物保護への言及は議定書(全加盟国による合意書)の形をとり,マーストリヒト条約よりも高い位置づけが与えられた。この「動物の保護と福祉に関する議定書」の内容は,アムステルダム条約の動物保護宣言を踏襲しつつ,対象範囲は立法から政策に拡大され,さらに動物を「感受性のある生命存在」(sentient
2 EU における動物福祉
― III-10 ―
being)として認めた。またその一方,宗教や文化的伝統への配慮も求められることとなった。
EC設立条約に付帯する「動物の保護と福祉に関する議定書」(1997年)
「 高位なる条約締結者は,感受性のある生命存在としての,動物の福祉の擁護と尊重が確実に改善されることを願い,欧州共同体を設立する条約に以下の条項を付帯させなければならないということに合意した:
共同体の農業,運輸,市場,研究に関する政策の策定と実施において,共同体および加盟国は,動物福祉の要件に十分な配慮を行わなければならず,その際,とりわけ宗教儀式,文化的伝統および地域遺産にかかわる,加盟国の法的または行政上の措置と慣例を尊重する。」(注8)
そして2008年のEU機能条約(リスボン条約。2009年12月1日に発効)では,動物福祉が初めて条約本体に取り込まれ,かつ対象となる政策分野が追加された(漁業,工業技術開発,宇宙)。これが現行の規定である。
「第13条
農業,漁業,運輸,域内市場,研究,工業技術開発,宇宙に関する連合の政策形成および実施に際して,連合および加盟国は,動物は感受性のある生命存在であるから,動物の福祉上の要件に十分配慮する。その際,とりわけ宗教儀式,文化的伝統および地域遺産にかかわる,加盟国の法的または行政上の措置と慣例を尊重する。」(注9)
この条項によって動物福祉は同じ通則に挙げられた他の事項と並ぶ高い位置づけを得た(注10)。すなわち条文の構成上は,男女の平等促進(8条),社会的保護の保証と保健(9条),差別の克服(10条),環境保護・持続可能な発展の促進(11条),消費者保護(12条),情報公開(15条),個人情報の保護(16条),宗教・思想の尊重(17条)といった極めて重要な諸原則と肩を並べて配置されたのである。
ただし政策分野の限定があることと,「政策形成および実施に際して」十分配慮するという受動的な性格であることは引き続き制約になっていると考えられる。
2-5 EU機関と加盟国の役割
2-5-1 欧州委員会および欧州食品安全庁
EUの行政と法規立案を担う欧州委員会の中で,動物福祉を管轄している組織は保健・消費者保護総局(略称はDG-SANCO)である(注11)。この配置は動物福祉と食品安全性のつながりを反映している。
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
― III-11 ―
欧州委員会は動物福祉を改善すべく継続的に提案(EU法規の制定や改正を含む)を提出する。公衆の関心を考慮し,公開協議および科学的な証拠と助言に基づき法制化が行われる(決定は通常,理事会および欧州議会による)。
欧州委員会は加盟国がEU法規を適格に実施するよう行動する役割を負っている。動物福祉に関するEU法規の執行は,食品獣医局(FVO)によって監視されている。執行の不履行は,最終的には欧州裁判所に提訴される。ただし食品獣医局による現地査察は農用動物のみが対象である(実験動物や動物園の動物は対象外であり類似の規制機関がない)(DG SANCO 2010: p.16)。
フードチェーン・動物衛生常設委員会は加盟国代表の討議の場であり,必要に応じて緊急措置を承認する。
また,独立したEU組織である欧州食品安全庁(EFSA)は,動物衛生・福祉パネル(AHAW)を有している。このパネルは科学的な報告書と意見を提供する(注12)。
2-5-2 加盟国の管轄と役割
EUが管轄しない,つまり加盟国が管轄する動物福祉の対象分野は,ペット,競争,ショー,文化,スポーツイベント,野生動物(捉えられたものを含む),野良犬の管理である(DG SANCO 2010: p.16)。これらの分野では加盟国が必要に応じて独自の法規を定めている。
それに対してEU法規が存在する分野における加盟国の役割は,EUルールの国内における実施と,国内の立法・規制活動によるその執行である。またEU法規が「指令」の場合は加盟国法規への取込みも行う。EU法規に反しなければ同じ分野で追加の国内法規(より厳しい動物福祉基準など)を定めることもできる。
それに加えて,新たなEU法規の提案を欧州委員会に要請し,あるいは提案の審議に参画することも加盟国の役割である。
(注4) 欧州評議会は1949年に設立された欧州内協力を担う国際機関であり,加盟国は欧州の47カ国(EUの全加盟国28カ国を含む)である。設立目的は人権・民主主義・法の支配を促進することであり,欧州人権条約や欧州人権裁判所で知られている。
欧州評議会とEU(当時はEC)はいずれも第二次世界大戦後に同じ人々によって創設され,当初から密接に連携してきた。例えば両機関は1986年以降同じ旗を用いているが,これは元来欧州評議会が1955年に採用したものである(欧州評議会のWebサイトを参照 http://www.coe.int/)。
(注5) ただしその時点で個々の加盟国はすべてが批准しているわけではない。
(注6) 「CoE(筆者注:欧州評議会のこと)が動物福祉に関心をもつようになったのは,人間の尊厳は,環境とその中にすむ動物を尊重することと切り離せないということに気づいたためである。」(コックス 2005: p.11)。
(注7) 欧州委員会Webサイト http://ec.europa.eu/food/animal/welfare/farm/index_en.htm (2013年5月8日アクセス)
(注8) 訳文は地区生物会議(2004)を参考にした。
(注9) 訳文は小林(2009: p.63)を参考にした。
(注10) 欧州委員会による指摘(http://ec.europa.eu/food/animal/welfare/policy/index_en.htm 2013年7月アクセス)。
(注11)本節はおもにBenett & Appleby (2011: p.252)による。DC-SANCOのWebサイト(http://ec.europa.eu/food/animal/welfare/)も参照。
(注12)この役割はかつてはDG-SANCOの動物衛生・動物福祉科学委員会が担っていた。
3 現行制度
― III-12 ―
3 現行制度
3-1 動物福祉政策の枠組み
本節では農業以外を含むEU動物福祉政策全体の枠組みを説明する(注13)。農業分野の基準・規制については次節以降で詳しく述べるので,本節での説明は大幅に割愛する。
3-1-1 EUの管轄分野
欧州の動物福祉に関するEU法規は大部分が農用動物と実験動物に関するものである。そのほかには犬・猫毛皮製品の貿易及び販売禁止,絶滅が危惧される野生生物の貿易,アシカ・アザラシ類の産品に関する規制がある。動物園における野生生物の保全に関する法令もある。
3-1-2 農用動物の動物福祉基準・規制
3-1-2-1 一般的な規制
食料・毛・毛皮の生産ないしその他の農用目的のために飼育される全ての脊椎動物種が対象となっている。
・農用動物指令(指令98/58/EC)
3-1-2-2 分野別規制
畜種別の指令および分野別の規則があり,動物を閉じ込めるある種の飼育方法(仔牛の個別囲い,繁殖雌豚の個別仕切り,採卵鶏の狭いケージなど)の段階的廃止や,飼育スペースに関する要件,動物管理の追加要件,輸送や屠殺時の各種要件などを含む。
・豚指令(2008/120/EC)
・仔牛指令(2008/119/EC)
・採卵鶏指令(1999/74/EC)
・肉用鶏指令(2007/43/EC)
・輸送規則((EC) No 1/2005)
・屠殺規則((EC) No 1099/2009)
・有機生産・表示規則((EC) No 834/2007)
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
― III-13 ―
3-1-2-3 CAPの施策
共通農業政策(CAP)では補助金交付の条件として動物福祉法令の順守を課しているほか,動物福祉関連の取組みそのものにも助成を行っている。
・横断的規則((EC) No 1306/2013) 直接支払いのクロスコンプライアンス
・CMO(市場管理組織)規則((EC) No 1308/2013) 牛の生体輸出補助金
・農村振興規則((EC) No 1305/2013) 動物福祉支払い,品質保証制度助成
3-1-3 実験用動物
EUは実験動物の代替と福祉改善に関与してきた(ただし現行の指令はいわゆる「3R」――代替,削減,改良――を明示していない)。1986年の実験動物指令(86/609/EEC)の措置は飼育設備や管理,従事者の認可,動物の痛み・苦しみ・苦悩の最小化などに関するものであった。2010年には,加盟国間のハーモナイゼーションや,新たなニーズと科学の進歩を反映するため,従来の指令に替わるより詳細かつ包括的な新しい実験動物指令(2010/414/EEC)が定められた。
化粧品指令(76/768/EEC)には,改正によって化粧品およびその成分の動物実験を段階的に廃止するためのプログラムが盛り込まれた。
化学物質の登録,評価,認可および制限に関する(REACH)規則((EC) No 1907/2006)は,目標の一つとして,検査に脊椎動物を用いるのは最後の手段でなければならず,検査の重複は排除すべきであると述べている。
そのほかの関連する法令としては,植物防除製品に関する指令(91/414/EEC),優良試験所基準に関する指令(2004/10/EC),そして第7次欧州共同体研究・技術開発・実証活動枠組みプログラム(FP7)に関する決定(1982/2006/EC)がある。
3-1-4 野生動物
アザラシ・アシカ(seal)製品の取引に関する規則は,EU市場において全てのアザラシ・アシカ製品の販売を禁じている(ただし限られた例外あり)。
足枷罠の使用に関する規則により,EU内で足枷罠の使用は禁止されている。またセーフガードとして,足枷罠の非禁止国(ないし罠に関する国際的な人道的基準の非適用国)からの毛皮輸入は制限されている。EUは1998年にカナダおよびロシアと罠の国際的な人道的基準について合意した。米国とは草案について合意している。
動物園における野生動物の飼育は,生物多様性の保全における動物園の役割強化により,野生動物種の保護・保全を促進することを目的として規制されている。
3-1-5 研究
第5次から第7次の欧州共同体研究・技術開発・実証活動枠組みプログラム(FP)にお
3 現行制度
― III-14 ―
いて,農用動物,実験用動物,ペット動物,野生動物の福祉に関する研究に予算が投じられてきた。
FP7における農用動物の研究としては以下の2つが挙げられる。
・「Econwelfare」: 動物福祉を社会・経済的な文脈の中で検討する。動物福祉基準を引き上げた場合の動物,生産チェーン,欧州社会への影響についての理解を促進する。
・欧州動物福祉プラットフォーム(EAWP): 消費者,農業者,育種家,小売業者,学者および各種NGOのための議論の場を提供することで,フードチェーン全体における農用動物福祉の改善をめざす。
3-1-6 コミュニケーション活動
農用動物の福祉に関するEU内向けのコミュニケーション活動は以下のとおり。
・欧州委員会健康・消費者保護総局のwebサイト上に動物福祉のページを多数作成
・9歳から12歳の子供向け対話型webツール「Farmland」
・EAWP(上記)
・特定の政策課題についてインターネットによる公開協議を実施するなど,より包摂的(ステークホルダーの幅広い参加)かつ協議に基づく政策形成を促進。
・消費者の考え方に関する世論調査(Eurobarometerによる)
(注13)本節はおもにDG SANCO (2010)による。
3-2 農用動物指令
正式名称:
「農用目的で飼育される動物の保護に関する1998年7月20日の理事会指令98/58/EC」
3-2-1 概要
これは農用目的で飼養される脊椎動物全般(魚,爬虫類,両生類を含む)に適用される規制である(注14)。欧州委員会によれば欧州評議会の欧州農用動物協定に基づいており,「5つの自由」(前述,英国農用動物福祉審議会)を反映している。
前文によればEC設立条約43条(共通市場組織の提案と決定)を参照して,加盟各国間の動物福祉規制の相違による競争の歪曲と,それによる共通市場の円滑運営に悪影響があるとの懸念から,生産の合理的発展を確保するために導入された。
指令の内容は,付属書に示された基準の順守,施策と科学技術の発展に関する5年ごとの報告および提案,査察などである。また国際情勢および影響(他の諸国における動物福
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
― III-15 ―
祉規定,この規則の国際的な受容度,国際競争への影響)に関する調査も盛り込まれている。
3-2-2 背景
欧州評議会の欧州農用動物協定(1976年)について,EECでは1978年に欧州委員会が承認(理事会決定78/93/EEC)し,その後協定に沿った形で1991年にかけて畜種別の指令(採卵鶏,豚,子牛)が制定されたが,当該欧州協定そのものに対応する農用動物一般についての法令は制定されていなかった。また,これら畜種別の指令は動物福祉について基本条約上の根拠を欠いていた。
1988年にEECは全加盟国の批准を経てこの欧州協定の締約国となり(注15),協定の定める諸原則を実施しなければならなくなった。また1987年に欧州議会は欧州委員会に対し,家畜飼養全般に適用されるEECルールの提案を提出するよう求めた。
さらに1992年にはEU条約に付帯された宣言で動物福祉への十分な配慮が謳われ,基本条約との関係で動物福祉が位置付けられた。
こうしたことを受けて1992年に欧州委員会がこの規則を提案した。
3-2-3 おもな規定
・本指令は農用目的で飼育される動物の保護のための最低基準を定める(1条1項)。
・本指令の適用は畜種別の指令(採卵鶏,豚,子牛)など他の特定のECルールを損なうことなく適用される(1条3項)。
・対象となるのは食料,毛,皮,毛皮の生産あるいはその他の農用目的で繁殖あるいは飼育される動物で,魚類・爬虫類,両生類を含み(2条1項),無脊椎動物を含まない(1条2項(d))。
・加盟国は所有者ないし飼育者が,その管理下にある動物の福祉を確保し,またそれらの動物が何らの不必要な痛み,苦悩あるいは負傷を引き起こされることのないようにするための規定を定めねばならない(3条)。
・加盟国は動物(魚類・爬虫類・両生類を除く)の繁殖・飼育条件が,その種や,発達・適応・家畜化の程度,また確立された経験と科学的知見に基づく生理的・動物学的な必要に応じて,付属書に定める基準が満たれるようにしなければならない(4条)。
・欧州委員会は,欧州農用動物協定の一律適用に必要な提案,および科学的評価に基づき協定下の勧告やその他の適当な具体的ルールを理事会に提出する(5条1項)。これらの施策および科学技術の発達に関して,欧州委員会は5年ごとに理事会に報告書,およびその結論を勘案した適当な提案を提出する(5条2項)。これらの提案を理事会は特定多数決により実行する(5条3項)。
・加盟国はこの指令の規定の順守を確認するため,管轄当局による査察を実施する。査察は他の目的の点検と同時に実施できる(6条1項)。加盟国は欧州委員会に査察の結果を
3 現行制度
― III-16 ―
報告する(6条2項)。
・欧州委員会の獣医専門家は,加盟国当局とともに,加盟国の要件順守を確認し,また査察がこの指令に従って実施されているかどうかを現場で確認することができる(7条)。
・欧州委員会は1999年6月までに以下に関する報告書を提出する(8条)。
○対EC輸出国(EC外)とECの動物福祉規定を比較
○この規則に定められた動物福祉の原則が国際的にどの程度広範に受け入れられるか
○同等の基準を持たない国との競争により,動物福祉に関するECの目標がどの程度損なわれる可能性があるか
・欧州委員会はフードチェーン・動物衛生常設委員会により補佐される(9条。2003年改正)。
(参考) 付属文書のおもな内容
○質量とも十分な人員による管理。
○原則として1日1回以上の点検,適切な照明。
○傷病のありそうな場合は遅滞なく手当てし,効果がなければ獣医の助言を得る。
○医療措置と各点検時における死亡数を3年以上保管し,検査等での提出に備える。
○種ごとに確立された経験と科学的知見により,不要な苦しみや傷害を発生させるようなやり方で動物の動きを制限しない。
○継続的または定期的に動物を係留ないし閉じ込める場合は,確立された経験と科学的知見により,生理学的・動物行動学的な必要に応じたスペースを与えねばらない。
○畜舎の材料は動物に有害でなくかつ完全に清掃と消毒が可能でなければならない。また動物に傷害を負わせるような鋭い角や突起のないようにする。
○換気,塵埃,温度,湿度,ガス濃度は動物の害のない限度以内に維持する。
○恒常的な暗闇や,適切な中断時間のない人工照明の下で飼育してはならない。
○屋外飼育の場合は,悪天候,捕食者,健康リスクからの保護を与える。
○動物の健康と福祉に不可欠な自動機器は1日1回以上点検する。動物の健康と福祉が依存する人口換気システムについてはバックアップシステムを設ける。
○適切な配合と十分な量の飼料を適切な時間間隔で与える。十分な水分が摂取できるようにする。治療や予防などの目的を除き,科学研究あるいは確立された経験により悪影響がないと示されない限り,他の物質を与えてはならない。
○餌やりと水やりには飼料・水の汚染および動物間の競合による悪影響が最小限となる機器を用いる。
○動物に苦痛や傷害を与える(可能性のある)繁殖は行ってはならない。ただし最低限あるいは瞬間的な処置などの場合は国内法規により認めることができる。
○遺伝子型または表現型に基づきその健康と福祉に悪影響なく飼育できると予想できない限り,農用目的で動物を飼育してはならない。
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
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(注14)以下,本章では新旧の法規と必要に応じその提案文書,欧州委員会保健・消費者保護総局のWebサイト(http://ec.europa.eu/food/animal/welfare/),地球生物会議 (2004)を参考としている。
(注15)この指令の提案文書(COM(92)192: p.2)を参照。この年にスペインが批准した(欧州評議会Webサイトによる http://www.conventions.coe.int)。
3-3 採卵鶏指令
正式名称:
「採卵鶏の保護のための最低基準を定める1999年7月19日の理事会指令1999/74/EC」
3-3-1 概要
従来の規制を強化し,1羽当たりの面積を中心として鶏舎の改良を義務付けるもの。鶏舎を従来型バタリーケージ(「非エンリッチケージ」),改良型バタリーケージ(「エンリッチケージ」),非ケージ(「代替システム」)の3つに分類し,それぞれの満たすべき要件を規定。とくに従来型バタリーケージについては,2012年から使用禁止とした。従来型バタリーケージは1羽当たり550平方cm以上,改良型バタリーケージは1羽当たり750平方cm以上,非ケージは1平方m当たり9羽以下(1羽当たり1,111平方cm以上)である。
また,施設の登録と識別番号付与,各種の飼育方式に関する報告書の提出などについても定めた。
3-3-2 背景
欧州農用動物協定(1976年)を大多数のEEC加盟国が批准し,欧州委員会も承認(1978年)したことを受けて,1981年には採卵鶏の保護に関する指令案が提出され,1986年に最初の指令(86/113/EEC)が制定された。これは鶏舎やその管理について共通の最低要件を定義し,それによって加盟国間の規制の相違による競争条件の歪曲を克服し,共通市場組織の円滑な運営をはかることを目的としていた。当初の規則は制定時における手続き上の問題から裁判となり,1988年に若干の修正がなされた。
既往の指令:
1986年 バタリーケージで飼養される採卵鶏を保護するための最低基準を定める指令(86/113/EEC)
1988年 欧州裁判所の判決(訴訟131/86)に従うための指令(86/113/EECの無効化)(88/166/EEC)
1990年代になると,欧州農用動物協定の常設委員会が採卵鶏を含む詳細な勧告を採択し(1995年),農用動物指令が制定され(1998年)た。また,既往指令の規定(1993年1月1日までに科学の進展に関する報告と適切な調整を提案)に基づく科学獣医委員会の報
3 現行制度
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告書は,従来型のバタリーケージおよびその他のシステムで飼養される雌鶏の福祉状態は不十分であり,可能な限り最高の基準を導入すべきであると結論した。
こうしたことを受けて欧州委員会は1998年にこの規則を提案した。
3-3-3 おもな規定
・本指令は採卵鶏の保護のための最低基準を定める(1条1項)。
・本指令は採卵鶏350羽未満の施設および採卵鶏の繁殖施設には適用されない(1条2項)。
・付属書に定める要件の順守(3条)。
付属書のおもな要件:
○1日1回以上の点検,騒音の抑制,照明の管理基準,清掃と消毒
○ケージの設置,多層ケージの要件,ケージの設計と寸法
○切断処置の原則禁止
(非ケージ方式)
・新設,再設置,新規使用には2002年1月1日から基準を適用(4条1項)。2007年1月1日から全ての該当施設に適用(4条2項)。
・全ての非ケージ設備における全ての採卵鶏に義務付けられる装備の最低基準(4条1項の1)
○給餌容器および給水容器の配備数と大きさ
○7羽に1つ以上の巣箱の設置,群巣箱の大きさなど
○1羽につき15cm以上の止まり木の設置と配置など
○1羽につき250平方cm以上かつ地面の3分の1の敷料
・床は両脚の前向きの爪すべてを適切に支える作りであること(4条1項の2)
・採卵鶏が異なる層に自由に移動できる飼育方式,あるいは屋外運動場を持つ場合の基準(4条1項の3)
・飼育密度は利用可能面積1平方m当たり9羽以下(4条1項の4)
(従来型バタリーケージ)
・基準は2003年1月1日からすべての該当設備に適用(5条1項)。設置および新規使用は2003年1月1日から禁止。2012年1月1日からは完全に使用禁止(5条2項)。
・すべての従来型バタリーケージ設備に義務付けられる広さと装備の最低基準(5条1項)
○1羽当たり550平方cm以上のケージ面積
○制約のない給餌容器の設置と長さ(1羽当たり10cm以上)
○給水器・給水容器の種類と配置
○ケージの高さ(ケージ面積の65%以上で40cm以上,最低か所で35cm以上)
○床は両脚の前向きの爪すべてを適切に支える作り。床の傾斜は14%または8%以下。
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
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○爪研ぎ用具の設置
(改良型バタリーケージ)
・基準は2002年1月1日からすべての該当設備に適用(6条)。
・すべての改良型バタリーケージ設備に義務付けられる広さと装備の最低基準(6条1項)
○1羽につきケージ面積750平方cm(うち利用可能面積600平方cm)以上,全体が高さ20cm以上。総面積2000平方cm以上。ただし利用可能面積とは,幅30cm以上,床の傾き14%以下,高さ45cm以上を満たす部分の面積(2条2項)。
○巣箱,敷料,止まり木(1羽につき15cm以上)の設置
○制約のない給餌容器の設置と長さ(1羽当たり12cm以上)
○給水装置の設置と数
○ケージの各層間(90cm以上)および建物の床と最下層ケージの間(35cm以上)の距離
○爪研ぎ用具の設置
・当局による施設の登録と識別番号(卵の追跡手段となる)の付与(7条)
・加盟国による査察と欧州委員会への報告(8条)
・欧州委員会の獣医学専門家による加盟国の遵守・実施状況の確認(9条)
・欧州委員会は2005年1月1日までに採卵鶏の各種方式(とりわけ本指令の適用される方式)に関する報告書を提出する。報告書は各種方式の病理学・畜産学・生理学・動物行動学的な側面と,予想される社会・経済的な影響の両方を考慮に入れ,科学獣医委員会の意見に基づく(10条)。
・欧州委員会は講ずる措置の案を常設獣医学委員会に提出し意見を求める。賛意を得られた場合は欧州委員会で採択し,得られない場合は理事会に提案する。(11条)
・加盟国は本規則より厳しい基準を用いることができる(13条2項)
3-4 豚指令
正式名称:
「豚の保護のための最低基準を定める2008年12月18日の理事会指令2008/120/EC(体系化版)」
3-4-1 概要
養豚施設の最低基準であり,2006年から繁殖雌豚の繋ぎ飼いを禁止し,2013年から繁殖雌豚のストール飼い(特定の期間は例外)を禁止した。また畜舎の広さと床の作り,鼻で地面を掘り返せる環境,従事者の訓練と資格などを規定している。
3 現行制度
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そのほかに基準を満たさない豚の輸入規制や,所定の事項に関する報告書の提出も定めている。
3-4-2 背景
1988年にすべてのEEC加盟国が欧州農用動物協定(1976年)を批准し,欧州委員会も承認(1978年)していたことを受けて,1989年には豚の保護に関する指令案が提出され,1991年に最初の指令(91/630/EEC)が制定された(この間の推移は子牛指令と同様である)。これは育成・肥育のため飼育される豚の保護について共通の最低基準を設定し,それによって加盟国間の規制の相違による競争条件の歪曲を克服し,共通市場組織の円滑な運営と生産の合理的発展をはかることを目的としていた。
既往の指令:
1991年 豚の保護のための最低基準を定める指令(91/630/EEC)
繁殖雌豚の繋ぎ飼いは当初の指令から禁じられていたが,2001年の改正(指令2001/88/EC)により繁殖雌豚のストール飼いも禁じられた(特定の期間は例外)。これは社会的交流を好む雌豚の習性を尊重するためである。また繁殖雌豚が鼻で地面を掘り返せるようにすることも追加された。これは探索行動の必要を満たすためである。
2008年にはそれまでの改正(指令2001/88/EC,指令2001/93/EC,規則EC No 806/2003)を反映して現行の体系化版が制定された。
3-4-3 おもな規定
・本指令は育成と肥育のために閉じ込められる豚のための最低基準を定める(1条)。
・群飼いされる離乳子豚・育成豚の体重に応じた1頭当たりの最低床面積(3条1項(a))。
・経産豚・未経産豚について
○繋ぎ飼い施設の建設(改築も含む)禁止。2006年1月1日からは繋ぎ飼い禁止(3条3項)。
○群飼で競合があっても各個体が十分な飼料を得られる仕組みで給餌する(3条6項)。
○離乳後の経産豚と未経産豚には,高カロリーの飼料とともに十分な量の粗飼料ないし繊維質の飼料を与える(3条7項)。
・以下に列挙する規定(3条1項(b),2項,3項,5項)は2003年1月1日から新設,再設置および新規使用の施設に適用される。また2013年1月1日からは全ての施設に適用される(3条9項)。
○経産豚・未経産豚について
- 1頭当たりの最低床面積と平床(3条1項(b), 項2(a))。
- 種付け後4週間から分娩予定の1週間前までは群飼する(3条4項)。
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
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- 動かせる素材(manipulable material)を使えるようにすること(3条5項)。
○群飼いに用いられるコンクリート製スノコ床の,生育段階に応じたスノコの幅と隙間(3条2項(b))
・群飼の必要な豚であっても,特に攻撃的なものや,他の豚に攻撃されたもの,あるいは傷病を患ったものは一時的に単独の囲いで飼育することができる(3条8項)。
・育成豚の条件は付属書Iの総則を満たすようにする(4条)。
・付属書Iの規定は科学の進歩を考慮に入れるため所定の手続きにより改正できる(5条)。
(参考) 付属書Iの構成
第1章 総則
騒音,照明,畜舎の作り,探索行動や操作行動を可能にする素材,床の作り,給餌,給水,切断等の原則禁止(と例外および処置実施者の要件)
第2章 豚の種類別規定
A. 種雄豚
B. 経産豚と未経産豚
C. 新生子豚(離乳まで)
D. 離乳豚と育成豚
・豚の世話をする者には,雇い主が3条と付属書Iの関連規定について教育と指導を受けさせる。福祉面に重点をおいた訓練コースを利用できるようにする(6条)。
・欧州委員会は欧州食品安全庁の意見に基づく報告書を作成し,理事会に提出する(7条)。
○できれば2005年7月1日(できれば1月1日)までに提出する報告書
- 社会経済的・衛生上・環境への影響と,様々な気候条件を考慮する。
- 外科的去勢の必要性を減じそうな豚生産および食肉加工の技術とシステムの発展についても考慮する。
- 必要であれば離乳豚と育成豚の福祉に適用可能な,様々な割当面積および床の種類による効果に関する適当な立法提案を付する。
○2008年1月1日までに提出する報告書:
- 特に盛り込むべき事項: 家畜密度,ストールの設計と床の種類,尾かじり,妊娠経産豚の群飼方式,成種雄豚のスペース要件,経産豚や母豚の放飼,消費者の態度と行動,社会経済的意味と貿易相手国への影響。
- 必要に応じて適当な立法提案を付することができる。
・加盟国による査察の実施。査察は他の目的の検査と同時に実施してもよい。各種の飼育方式について毎年統計的に代表性のあるサンプルを網羅する(8条)。
・第三国から来る豚をECへ輸入するには,当該国の管轄当局が発行する証明書を付さねばならない。証明書は,その豚が少なくともEC産の豚と同等の扱い(本指令による)を受
3 現行制度
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けてきたことを証するもの(9条)。
・欧州委員会の獣医学専門家は管轄当局と協力して現場検査を実施できる(10条)。
・欧州委員会は常設フードチェーン・動物衛生委員会の補佐を受ける(11条)。
・加盟国は豚の保護について本指令より厳格な規定を維持ないし適用できる(12条)。
3-5 子牛指令
正式名称:
「子牛の保護のための最低基準を定める2008年12月18日の規則2008/119/EC(体系化版)」
3-5-1 概要
この指令は子牛について,個体を閉じ込める囲いの使用(2007年以降),繋留,口籠の使用を禁じている。また最低面積と生理学的必要に応じた飼料(とくに十分な鉄分と繊維)などについて規定している。
そのほかに所定の事項に関する報告書の提出も定めている。
3-5-2 背景
1988年にすべてのEEC加盟国が欧州農用動物協定(1976年)を批准し,欧州委員会も承認(1978年)していたことを受けて,1989年には子牛の保護に関する指令案が提出され,1991年に最初の指令(91/629/EEC)が制定された(この間の推移は豚指令と同様である)。これは育成・肥育のため飼育される子牛の保護について共通の最低基準を設定し,それによって加盟国間の規制の相違による競争条件の歪曲を克服し,共通市場組織の円滑な運営と生産の合理的発展をはかることを目的としていた。
既往の指令:
1991年 子牛の保護のための最低基準を定める指令(91/629/EEC)
1997年の改正(指令97/2/EC)により,個体を閉じ込める囲いの使用が改正禁じられた。これは群れで生活する種の要求を満たすためである。また同じ年のもう一つの改正(決定1997/182/EC)により繋留と口籠も禁じられた。
2008年にはそれまでの改正(指令97/2/EC,決定97/182/EC,規則EC No 806/2003)を反映して現行の体系化版が制定された。
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
― III-23 ―
3-5-3 おもな規定
・本指令は育成と肥育のために閉じ込められる子牛のための最低基準を定める(1条)。
・「子牛(calf)」とは生後6か月までの牛を指す(2条1項)。
・以下に列挙する規定(3条)は1998年1月1日から新設,再建設およびこの日より後に使用を始める施設に適用される。また2006年12月31日からは全ての農場に適用される。ただし,子牛6頭未満の農場と,授乳のため母牛とともに使用される子牛には適用されない。
○生後8週間以後の子牛を個体別の囲いに閉じ込めてはならない(獣医が治療に必要と認める場合を除く)。個体別の囲いの大きさに関する最低基準。
○群飼の子牛には,遮る物のない所定の面積(1頭当たり,体重に応じて規定)を与える。
・育成子牛の条件は付属書Iの総則を満たすようにする(4条)。
・付属書Iの規定は科学の進歩を考慮に入れるため所定の手続きにより改正できる(5条)。
(参考) 付属書Iのおもな内容
1畜舎の材料,
2電気回路・設備の敷設,
3建物の断熱・暖房・換気,
4自動式・機械式装置の点検と人工換気システムの予備,
5照明,
6子牛の点検,
7動きの自由,
8繋留の禁止(例外は1時間以内で群飼の子牛に授乳する場合),
9設備の清掃と消毒,
10床の作りと敷料,
11生理的必要に応じた飼料(鉄分,繊維質),口籠の禁止,
12給餌,
13給水,
14汚染を最小限とする給餌・給水設備,
15誕生後速やかに初乳を与えること
・欧州委員会は欧州食品安全庁の意見に基づく報告書を作成し,その結論に関連する提案とともに2006年1月1日までに理事会に提出する。報告書は病理学・動物学・生理学・行動学の観点からみた福祉の要件を満たす集約的飼育システム,および各種方式の社会経済的影響に関するものである(6条)。
・加盟国による査察の実施。査察は他の目的の検査と同時に実施してもよい。各種の飼育
3 現行制度
― III-24 ―
方式について毎年統計的に代表性のあるサンプルを網羅する(7条)。
・第三国から来る子牛をECへ輸入するには,当該国の管轄当局が発行する証明書を付さねばならない。証明書は,その子牛が少なくともEC産の豚と同等の扱い(本指令による)を受けてきたことを証するもの(8条)。
・欧州委員会の獣医学専門家は管轄当局と協力して現場検査を実施できる(9条)。
・欧州委員会は常設フードチェーン・動物衛生委員会の補佐を受ける(10条)。
・加盟国は豚の保護について本指令より厳格な規定を維持ないし適用できる(11条)。
3-6 肉用鶏指令
正式名称:
「食肉生産のために飼養される鶏の保護のための最低限の規定を定める2007年6月28日の指令2007/43/EC」
3-6-1 概要
この種のものとして初めて制定された指令である。肉用鶏飼養密度を下げるために,最大飼養密度(1平方mあたり33kg。より厳しい福祉基準を満たせば39kg)を定めた。また照明,敷料,給餌,換気などについても要件を規定している。加盟国は2010年6月までに実施しなければならない。
そのほか,表示制度やその他の所定の事項に関する報告書の提出や,加盟国によるデータ収集も求めている。
3-6-2 背景
肉用鶏は最も集約的な畜産システムの一つであるが,それまでは農用動物指令(98/58/EC)によって規制されるのみで専用のEC法規がなかった(COM (2005) 222 final: p.2)。その一方でECは欧州農用動物協定の締約国であり,この協定の枠組み内では家禽に関する勧告が採択され,そこには肉用鶏の追加規定が含まれていた。また動物衛生・福祉科学委員会による2000年の報告書「食肉生産用に生産される鶏(ブロイラー)の福祉」は動物福祉上の問題を多数特定した。
こうしたことから2005年に立法提案が提出され,2007年にこの指令が成立した。なお,これまでのところ改正はされていない。
3-6-3 おもな規定
・本指令は食肉生産のために飼育される鶏に適用される(1条1項)。また本指令は種鶏と育成鶏の両方を保有する農場の育成鶏に適用される(1条2項)。
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
― III-25 ―
・適用の対象外(1条1項)。
○500羽未満の農場
○種鶏のみの農場
○孵化場
○粗法的な屋内の平飼い
○有機飼育の鶏
・加盟国は本指令の適用される分野について,さらに厳しい施策を自由にとることができる(1条2項)。
・第一義的な責任は鶏の所有者ないし飼育者が追う(1条2項)。
・全ての鶏舎は付属書Iに定める要件を満たさなければならない(3条1項(a))。
(参考) 付属書Iの項目
・給水機,給餌,敷料,騒音,照明
・点検(1日2回以上),清掃と消毒,記録の保持
・治療・診断目的以外の外科処置の原則禁止(嘴のトリミングと去勢は条件付きで許可可能)。
・管轄当局または公認の獣医専門家(official veterinarian)が,本指令に定める査察,監視,追跡(follow-up)を実施する(3条1項(b))。
・最大飼養密度(3条2項, 3項, 4項, 5項)
○原則として1平方m当たり33kg。
○所有者または飼育者が付属書Iに加えて付属書IIの要件を満たす場合,加盟国は1平方m当たり39kgまで引き上げることができる。
(参考) 付属書IIのおもな内容
1 当局への通知
2 生産新ステムに関する詳細な文書の保持・更新・提供
3 換気・冷暖房設備の数値要件
○付属書Vの基準を満たす場合,加盟国は平方m当たり42kgまで認めることができる。
(参考) 付属書Vのおもな内容
・当局による農場の監視で過去2年間に不備がないこと
・所有者または飼育者による農場の監視を実施するに際して良好な管理慣行の手引きを用いていること
3 現行制度
― III-26 ―
・1日当たりの累積平均死亡率が所定の水準未満であること
・所有者と飼育者が十分な訓練を受けるようにし,免許証の取得を義務付ける。免許証は訓練課程の修了者ないし同等の経験を有する者であることを証する。訓練課程は動物福祉の側面に重点をおき,とくに付属書IV(本報告書では割愛)に挙げられた事項を網羅する(4条)。
・欧州委員会は欧州議会と理事会に対して以下の報告書を提出する。
○2009年12月31日までに提出する報告書(5条):
- 鶏肉,鶏肉産品,調理済製品を対象とする具体的で統一的な(harmonized)義務的表示制度の導入可能性に関するもの。
- 社会経済的影響,貿易相手国への影響,WTOルールとの整合性を考慮する。
- 報告書には適当な立法提案を付す。上記の点に加えて加盟国における自主的表示制度から得られた経験も考慮に入れる。
○2010年12月31日までに提出する報告書(6条1項):
- 欧州食品安全庁の意見に基づく。
- 福祉の低水準につながる特定された欠陥(identified deficiencies)への遺伝的パラメーターの影響に関するもの。
- 必要であれば報告書に適当な立法提案を付すことができる。
○2012年6月30日までに提出する報告書(6条2項, 3項):
- 本指令の適用と鶏の福祉への影響,および福祉指標の開発に関するもの。利用可能なデータと新たな科学的証拠に基づく。様々な生産の条件と方法を考慮に入れる。また社会経済的および行政上(administrative)の影響(地域的な側面を含む)も考慮に入れる。
- 加盟国は,1年間以上の期間にわたる屠殺群を代表するサンプルの監視に基づく収集データを欧州委員会に提出する。サンプリングとデータの要求は科学に基づき客観的かつ比較可能であるべきである。加盟国はECによる財政負担を必要とする可能性がある。
・加盟国による査察の実施。査察は他の目的の検査と同時に実施してもよい。各国の飼養数に対して十分な割合の査察を行う(7条)。
・加盟国は良好な管理慣行に関する手引きの作成を奨励する(8条)。
・加盟国は,本指令に従って採択された国内規定への違反に適用される罰則を定める(9条)。
・加盟国は,遅くとも2010年6月30日までに本指令の順守に必要な法令を施行する。規定には本指令への参照を含めるか,あるいは公式刊行の機会にそうした参照を付する(12条)。
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
― III-27 ―
3-7 屠殺規則
正式名称:
「屠殺の際における動物の保護に関する2009年9月24日の規則 No (EC)1099/2009」
3-7-1 概要
農用動物が殺される際の痛みと苦しみを最小限に抑えるために,科学知識と実務上の経験に基づき適切に認められた気絶処理の使用を定める規制である。従来は指令であったがEU共通のルールを定めるため規則に変更された。現行規則は2013年から施行された。
3-7-2 背景
1974年の指令(74/577/EEC)は動物福祉に関するEUで最初の指令であった。加盟各国間における法規の違いに共通市場に影響するほどの格差があったことと,全ての形態の動物虐待を避けるための第一歩として,動物が屠畜される際の全ての不必要な苦痛を避けるような条件を定めることが望ましいとの判断から導入された。屠殺前に適切な承認された技術による動物の気絶処置を施すことや,宗教儀式に配慮することなどが定められた。
やがて欧州委員会は1988年に欧州屠畜動物協定(1979年)を承認した(理事会決定88/306/EEC)が,欧州協定の範囲は既存のECルールよりも広範であった。そこで加盟国間の法規の相違を抑えて生産の合理的発展を確保し,動物および動物産品の域内市場の完成を促進するために,EC共通の最低基準として,大幅に強化された1993年の指令が制定された。またこの指令は欧州協定よりも広範な動物を対象に含めた。
既往の指令:
1974年 屠畜前の動物の気絶処置に関する指令(74/577/EEC)
1993年 屠畜ないし殺処分の際における動物の保護に関する指令(93/119/EC)
その後技術の進歩によって基準の一部は時代遅れとなり,欧州食品安全庁は2004年と2006年にそれぞれ指令を見直すよう科学的意見を提出した。また,世界動物保健機関(OIE)は2007年に屠畜と疾病制御のための殺処分に関する指針を含む陸生動物衛生規約を採択した。この間に公衆の動物福祉に対する関心は高まり,食品安全性規制においては屠畜事業者の責任が強化され,また動物の伝染病発生時における大量の殺処分方法に疑義が呈された。屠殺時における動物の保護改善は肉質の向上に貢献し,屠場における職業上の安全にも間接的によい影響があるとみなされた。こうしたことを受けて2009年に新たな規則が制定された。また,1993年の指令には加盟国間で実施状況に大きな格差があり,動物福祉上の懸念と競争力への影響が指摘されていたため,指令から規則に変更された。これにより,国内法規への取込みが不要となり,各国一律かつ同時の適用が実現した。
3 現行制度
― III-28 ―
3-7-3 おもな規定
・本規則は食料,毛,毛皮ないしその他の産品を生産するために飼養ないし飼育される動物の屠殺,および殺処分(depopulation)に関するルールを定める(1条)。
・ただし屠場外における緊急殺処分,および人間の健康ないし安全に対して直ちに深刻なリスクをもたらすであろう場合には,規定の大部分は適用されない(1条)。
・本規則の対象とする動物は,爬虫類と両生類を除く脊椎動物である(2条(c))。
(2章 一般要件)
・動物は,殺される際および関連する工程において,すべての回避可能な痛み,苦悩あるいは苦しみを免れなければならない(3条)。魚にはこの規定のみが適用される(1条)。
・動物を殺す前には付属書Iに定められた方法で気絶処置を行わなければならない。意識と感覚の喪失は死ぬまで維持されなければならない。気絶処置後は可及的速やかに殺すための手段をとらねばならない(4条1項)。
・付属書Iは科学技術の進歩を考慮して改正できる。改正は欧州食品安全庁の意見に基づき,所定の手続きに従う(4条2項)。
(参考) 付属書I 第1章(方法)に挙げられた項目
表1 機械的方法
1 貫通性家畜ボルト銃(captive bolt device)
2 非貫通性家畜ボルト銃
3 自由貫入(free projectile)小銃
4 Meceration(ひよこなどの即時の粉砕)
5 頸部脱臼(cervial dislocation)
6 頭部への打撃
表2 電気的方法
1 頭部のみの電撃
2 頭部と胴体の電撃
3 電気水槽(waterbath)
表3 ガスによる方法
1 高濃度二酸化炭素
2 二段階式二酸化炭素
3 二酸化炭素と不活性気体
4 不活性気体
5 一酸化炭素
6 一酸化炭素と他の気体の混合
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
― III-29 ―
表4 その他の方法
1 致死注射
・気絶処置の検査。定期的に実施し,十分に代表性のある動物のサンプルを用いる(5条)。
・動物を殺す事業者は予め標準運営手続きを作成し,それに従って実施する(6条)。
・動物を殺す作業およびその関連作業は十分な能力を有する者が行う(7条1項)。あるいは資格証明書を有する者の立会の下でその直接の指示により行うことができる(7条3項)。特定の作業については資格証明書を有するもののみが行う(7条2項)。
・拘束用および気絶処置用の機器を販売する際は,動物福祉の状態を最善にする使い方の解説を付さねばならない。また当該解説はインターネットで公開しなければならない(8条)。
・気絶処置用機器の維持管理および予備(9条)。
・自家用屠殺に対する規制の免除(10条)。
・最終消費者(あるいは最終消費者に生鮮肉を提供する施設)に対して少量の肉(家禽,ウサギ,野ウサギ)を供給する場合に適用される規制の免除(11条)。
・第三国から輸入される食肉に付される衛生証明書には,少なくとも本指令の2章および3章と同等の要件を満たしていることを証する証明書を添付しなければならない(12条)。
・適正実施指針(guides to good practice)の作成奨励と普及。原則として業者の団体が作成する(13条)。
(3章 屠場に適用される追加要件)
・事業者は屠場の配置,建設,機器が付属書II(注:内容は割愛)の規定を満たすようにしなければならない(14条)。
・事業者は付属書III(注:内容は割愛)に定められた屠場作業規定を満たすようにしなければならない(15条)。
・事業者は屠場における適切な監視手続きを実施しなければならない(16条)。
・事業者は各屠場に1名の動物福祉officerを任命しなければならない。動物福祉officerは事業者に直属し,直接報告する。また本指令の定める規定を順守するため任意の是正措置を屠場職員がとるよう要求できる地位を与えねばならない(17条)。
(その他の規定)
・殺処分の際は,本規則の規定を順守するよう開始前に管轄当局が実行計画を策定する(18条)。
・緊急殺処分の際,飼育者は必要な全ての手段を講じて出来る限り速やかに動物を殺さねばならない(19条)。
・管轄当局への科学技術に関する支援(20条)。
3 現行制度
― III-30 ―
・資格証明書と訓練課程(21条)。
・違反事業者への対処(22条)。
・加盟国は本指令の違反に対する罰則(penalties)を設ける(23条)。
・加盟国は本規則よりも厳しいルールを維持あるいは定めることができる(26条)。
・欧州委員会は欧州議会と理事会に対して以下の報告書を提出する(27条)。
○2014年12月8日までに提出する報告書:
- 屠殺時における魚の保護に関する要件を導入する可能性について。
- 動物福祉,また同様に社会経済と環境への影響も考慮する。
- もし適当であれば,本規則を改正して具体的なルールを導入するための立法提案を付する。
○2012年12月8日までに提出する報告書:
- 上下反転(inversion)など不自然な姿勢での牛の拘束方式について。
- それらの方式と直立姿勢を比較した科学的研究の結果に基づくこと。
- 動物福祉の側面,および社会経済的な影響(宗教団体にとっての受容可能性を含む),作業者の安全性を考慮に入れる。
- もし適当であれば,本規則を改正して具体的なルールを導入するための立法提案を付する。
○2013年12月8日までに提出する報告書:
- 家禽の気絶処置の各種方式について。特に多数の鳥を同時に処置する水槽気絶処置について。
- 動物福祉,また同様に社会経済と環境への影響も考慮する。
・本指令は2013年1月1日から適用される(30条)。
3-8 輸送規則
正式名称:
「輸送中および関連作業中における動物の保護に関する2004年12月22日の規則 (EC) No 1/2005」
3-8-1 概要
商業目的の長距離輸送時における動物の保護を定めた規則。すべての脊椎動物を対象としている。畜種別や輸送手段別に各種の基準を定めているほか,輸送及び関連業務に携わる関係者や当局についてそれぞれの責任や許認可を詳細に規定している。従来は指令であったがEU共通のルールを定めるため規則に変更された。
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
― III-31 ―
3-8-2 背景
動物輸送に関する当初の法規は1977年の指令(77/489/EEC)である。EEC加盟国の多くが欧州国際輸送動物協定(1968年)を批准したことを受けて,加盟国間の法規の格差を是正し,生体動物貿易の技術的障壁を撤廃して共通市場の機能を確保するとともに,結果として動物を輸送中の残酷な取り扱いから保護することを目的としていた。1981年に関連施策を具体化する指令(81/389/EEC)が追加された。
1991年の指令(91/628/EEC)は加盟国間の国境における検査を廃止した。
1995年の指令(95/29/EC)は一部の加盟国が域内貿易を制限するのに用いていた輸送時間の上限,給餌・給水の間隔,休憩時間,積載密度などについて共通の基準を定めた。
1997年の規則((EC) No 1255/97)は長距離輸送中の休憩地に関する基準を定めた。
1998年の規則((EC) No 411/98)は8時間を上回る移動の場合における車両の空調などの基準を定めた。
既往の指令:
1977年 国際輸送中における動物の保護に関する指令(77/489/EEC)
1981年 指令77/489/EECの実施に必要な施策を定める指令(81/389/EEC)
1991年 輸送中における動物の保護に関する指令(91/628/EEC)
1995年 指令91/628/EECを改正する指令(95/29/EC)
1997年 休憩地の共同体基準および指令91/628/EEC付属書に述べる行程計画書の修正に関する理事会規則((EC) No 1255/97)
1998年 8時間を上回る移動における家畜の輸送に用いられる道路車両(路上走行車)に適用される追加的な動物保護基準に関する規則((EC) No 411/98)
現行の規則((EC) No 1/2005)は既往の法規を見直し,輸送チェーンにおける関係者毎の責任を定めた。1991年の指令以来,加盟国間の法規の調和や,指令の加盟国法規への取込みの相違による問題が多かったために規則の形をとり,輸送形態毎の詳細な規定を定めた。
3-8-3 おもな規定
・本規則はEC内における生きた脊椎動物の輸送に適用される(ECの関税領域に入る,あるいはそこから出る際に当局が実施する特定の検査を含む)(1条1項)。
・加盟国は本規則よりも厳しい施策を設けてよい(1条3項)。
・本指令は経済活動に関わりのない動物の輸送には適用されない。また獣医の指示の下で動物の医療のために行われる動物の輸送にも適用されない(1条5項)。
・動物に傷害ないし必要以上の苦しみを引き起こす可能性の高いやり方で動物を輸送してはならない(3条)。
3 現行制度
― III-32 ―
・動物を輸送する際は以下の事項を記載した書類を携行しなければならない。動物の原産地と所有者,出発地,出発日時,予定目的地,想定所要時間(4条)。
・輸送者とその組織者(organizer)は,輸送が国境を越えかつ8時間を上回る場合は付属書IIに従い旅程記録(journey log)を作成しなければならない。第三国との間の輸送にも適用される(5条4項)。
(参考) 付属書II 旅程記録
計画,出発地,目的地,輸送者による行程記録,異常な例の報告
・輸送者は管轄当局の発行する免許を保持しなければならない。8時間を上回る輸送(long journey)には別途の免許を要する(6条1項)。
・輸送者は付属書Iの定める技術的規定に従って輸送しなければならない(6条3項)。
(参考) 付属書I 技術的規定
1章 動物の輸送に適した健康状態
2章 輸送手段
1. 全ての輸送手段に関する規定
2. 道路・鉄道輸送に関する追加規定
3. フェリー船輸送に関する追加規定
4. 航空輸送に関する追加規定
5. コンテナ輸送に関する追加規定
3章 輸送作業
1. 動物の積込み,積下ろしおよび取扱い
2. 輸送中
4章 家畜運搬船ないし海洋コンテナ船に関する追加規定
1節 家畜輸送船の作りと装備に関する要件
2節 家畜運搬船ないし海洋コンテナ船における飼料と水の供給
5章 給水・給餌の間隔,旅程の長さおよび休憩時間
1. ウマ科,ウシ亜科,羊,山羊,豚
2. その他の種
6章 長い旅程に関する追加規定
1. 全ての長い旅程
2. 道路・鉄道・海上コンテナによる輸送時の給水
3. 道路輸送手段の換気と温度監視
4. ナビゲーションシステム
7章 積載密度 (畜種別,輸送手段別)
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
― III-33 ―
ウマ科,ウシ亜科,羊・山羊,豚,家禽
・輸送者が動物の取り扱いを任せる職員は,付属書IおよびIIの関連規定に関する訓練を受けていなければならない(6条4項)。
・輸送者は輸送中に動物の福祉を管理する添乗員を常に配備するようにしなければならない(6条6項)。
・運転手および添乗員は適格証を保持しなければならない(6条5項)。
・輸送者は2009年1月1日以降(新規使用の輸送手段については2007年1月1日以降),8時間を上回る輸送にナビゲーションシステムを使わなければならない(主要な畜種に限る)。
・8時間を上回る輸送に用いる輸送手段とコンテナおよび10海里以上の輸送に用いる家畜運搬船は,予め査察を受けて認可を得なければならない(7条)。
・出発地点,輸送中,目的地の家畜管理者(輸送者以外)は付属書Iの1章および3章1節に定める技術規定を満たすようにしなければならない。家畜管理者は旅程記録に記入,署名し,また目的地(EC内である場合)の家畜管理者は旅程記録を保存する(8条)。
・集合地(assembly center)(異なる農場から集められた動物がまとめて輸送に引き渡される場所のこと)の運営者は,付属書Iの1章および3章1節に定める技術規定に従って動物が取り扱われるようにしなければならない(9条1項)。
・ECの獣医法規にしたがって認可されている集合地の運営者が,動物の取り扱いを任せる職員は,付属書Iの関連技術規定に関する訓練を受けていなければならない(9条2項)。
・輸送者免許の要件(10条)。
・8時間を上回る輸送のための輸送者免許の要件(11条)。
・輸送者免許の申請先は1加盟国の1当局に限る(12条)。
・管轄当局による免許の発行(13条)。
・8時間を上回る輸送の前に管轄当局が行う旅程記録関連の検査等の措置。第三国との間の輸送にも適用される(14条)。
・8時間を上回る輸送の出発地における検査。積込み前に実施。第三国との間の輸送にも適用される(15条2項)。
・8時間を上回る輸送中の任意の段階で管轄当局が行う旅程記録の検査。ランダムにあるいは的を絞って行う(15条1項)。
・訓練課程および適格証(17条)
・道路輸送手段(車両)の認可証(18条)
・家畜運搬船の認可証(19条)
・家畜運搬船の積込み・積下ろし時における査察(20条)
・第三国とEUの間で出入りする場合の検査。加盟国で公認獣医専門家が行う(21条)。
・輸送者の違反が見つかった場合の緊急措置(23条)。
3 現行制度
― III-34 ―
・加盟各国の連絡窓口に関する詳細情報の共有(24条)。
・加盟国は違反の罰則(penalties)を定める(25条)。
・違反に対する管轄当局の措置(26条)。
・管轄当局による査察と年次報告書(27条)。
・欧州委員会の獣医学専門家は当該加盟国と協力して現地の検査を行うことができる(28条)。
・適正実施指針(guides to good practice)の作成・普及の奨励(29条)。
・付属書と実施規定の改正手続き(30条)。
・欧州委員会は2011年1月1日までに欧州議会と理事会に報告書を提出する(32条)。
○輸送される動物,および拡大EC内における貿易の流れに対する本指令の影響に関するもの。
○動物の福祉の要求に関する科学的証拠と,ナビゲーションシステムの実施に関する報告書,および本指令の社会経済的な影響(地域的な側面を含む)を考慮に入れる。
○もし必要であれば,8時間を上回る長さの輸送に関する(とくに輸送時間,休憩時間,積載密度について)適当な立法提案を付することができる。
・本規則は2007年1月5日から適用される。ただし運転手と添乗員の適格証所持は2008年1月5日からの適用とする(37条)。
3-9 有機規則
正式名称:
「有機生産と有機産品表示ならびに規則(EEC)No. 2092/91の廃止に関する2007年6月28日の理事会規則 (EC) No 834/2007」
詳細規定:
「有機生産と有機産品表示に関する理事会規則(EC) No 834/2007の実施のための有機生産,表示および管理に関する詳細規定を定める2008年9月5日の欧州委員会規則 (EC) No 889/2008」
3-9-1 概要
名称のとおり有機農業生産とその産品の表示について定めた規則である。高度の動物福祉基準は有機生産の主要な構成要素の一つ(説明条項1)として扱われており,とくに屋外への常時アクセスが明示的に盛り込まれている。有機畜産は土地に結びついた活動であるので,動物は可能なときはいつでも戸外または放牧地に出られるようにすべきであるとさ
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
― III-35 ―
れている(説明条項16)。詳細規則では各種の具体的な基準が定められている。
3-9-2 背景
有機農業生産に関する最初の法規は1991年の規則((EEC) No. 2092/91)であった。しかし同規則は畜産生産を含まず,適当な期間以内に畜産生産に適用される同等のルールによって補完されるとした。これを受けて最終的には1999年の規則((EC) No. 1804/1999)により,有機規則に家畜生産の基準が導入された。このとき,哺乳類と家禽が屋外に出られるようにする規定が盛り込まれた。
既往の指令:
1991年 農産品の有機生産および農産品・食品におけるその表示に関する規則((EEC) No. 2092/91)
1999年 規則2092/91を補完して家畜生産を含める規則((EC) No. 1804/1999)
現行の規則((EC) No 834/2007)では,別途詳細規定を定める規則((EC) No 889/2008)が追加され,旧規則にあった家畜生産の詳細規定はそちらに移された。
3-9-3 おもな規定
・有機生産の目的の中では,持続可能な農業管理システムを確立する一環として,高度な動物福祉と,とりわけ種に固有の行動にかかる必要の尊重が挙げられている(3条)。
(畜産にかかるルール 14条)
・ 飼養方法と畜舎の状態
○飼養者は動物の健康及び福祉にかかる必要について必要な基礎的知識と技術を有さねばならない(14条1項b(i))。
○飼養密度及び畜舎の状態を含む飼育方法(husbandry practices)は,動物の発育上の,および生理的・動物行動学的な必要を満たすようにしなければならない(14条1項b(ii))。
○家畜は常時(permanent)戸外(牧草地が好ましい)に出られるようにしなければならない(14条1項b(iii))。
○家畜の繋留と隔離は原則禁止。個々の家畜について限られた期間,安全・福祉・獣医学上の正当な理由による場合に限られる(14条1項b(vi))。
○家畜の輸送時間は最小限にしなければならない(14条1項b(vii))。
○切除等の苦痛は動物の一生を通じて最小限にしなければならない(屠殺時を含む)(14条1項b(viii))。
3 現行制度
― III-36 ―
○養蜂で用いられる巣箱と器具はおもに天然素材製でなければならない(14条1項b(x))。
○養蜂産品の収穫にかかる方法として巣にいる蜂を殺すことは禁止(14条1項b(xi))。
・ 繁殖
○繁殖には自然な方法を用いなければならない。しかしながら人工授精は認められる(14条1項c(i))。
○繁殖をホルモンや類似の物質によって引き起こしてはならない(個々の動物の獣医学的な治療の一環でないかぎり)(14条1項c(ii))。
○それ以外の人工的な繁殖形態(クローンや胚移植など)を用いてはならない(14条1項c(iii))。
○適切な品種を選ばねばならない。品種の選択はまた,あらゆる苦痛を防ぎ,動物の切除(mutilation)の必要を避けることに貢献しなければならない(14条1項c(iv))。
・ 飼料
○家畜は常時牧草ないし粗飼料を食べられるようにしなければならない(14条1項d(iii))。
○成長促進剤および合成アミノ酸を使用してはならない(14条1項d(v))。
○乳離れしていない哺乳類は天然の乳(母乳が望ましい)により飼養しなければならない(14条1項d(vi))。
・ 疾病予防と獣医学的治療
○疾病は動物の苦痛を防ぐため直ちに治療しなければならない(14条1項e(ii))。
(水生動物の生産にかかるルール 15条) ※ 概ね14条と類似
・ 飼養方法
○飼養者は動物の健康及び福祉にかかる必要について必要な基礎的知識と技術を有さねばならない(15条1項b(i))。
○給餌,設備の設計(design of installations),飼養密度及び水質を含む飼養方法(husbandry practices)は,動物の発育上の,および生理的・動物行動学的な必要を満たすようにしなければならない(15条1項b(ii))。
○輸送は動物の福祉を維持するようになされなければならない(15条1項b(v))。
○動物の苦痛(屠殺時を含む)は最小限にしなければならない(15条1項b(vi))。
(詳細規定 (EC) No 889/2008)
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
― III-37 ―
・品種ないし系統の選択においては,その品種・系統の現地の諸条件への適応能力や,生命力,そして病気への抵抗力と,および幅広い生物多様性を考慮しなければならない。また,集約的生産に用いられるある種の品種・系統に関係する特定の病気ないし健康障害を避けるよう選択しなければならない。地元の品種・系統が望ましい(8条1項)。
・建物には自然の換気と光が大量に入るようにしなければならない(10条1項)。
・動物が戸外で暮らせる適当な気候の地域では畜舎の使用を義務付けてはならない(10条2項)。
・畜舎内の飼育密度は快適さと安寧を提供し,種に固有の要求を満たさねばならない。十分なスペース(筆者注:ブランベルの5つの自由を十分に満たす)を与える(10条3項)。
・屋内および屋外の最低面積およびその他の畜舎の要件は畜種別に付属書III(割愛)に定める(10条4項)。
・生後1週間より後,子牛を個別の箱で飼育することは禁止(11条3項)。
・雌豚は,妊娠の最終段階と授乳期を除き,群飼しなければならない(11条4項)。
・子豚はフラットデッキや子豚ケージで飼育してはならない(11条5項)。
・豚など(porcine animal)は運動場で糞と掘り返しを許されねばならない(11条6項)。
・家禽はケージ内で飼育してはならない(12条1項)。
・水鳥は天候と衛生状態が許す限りいつでも小川,池,湖あるいはプールを利用できなければならない(12条2項)。
・禽舎は全ての鳥が容易に屋外エリアに出られるように作らなければならない(12条3項(g))。
・禽舎は家禽のための出入り穴を設けなければならない(12条3項(d))。
・禽舎の収容羽数は所定の値を越えてはならない。家禽の種類ごとに規定(鶏4800羽,採卵鶏3000羽など)(12条3項(e))。
・食肉生産用の禽舎は1棟1600平方mを上回ってはならない(12条3項(f))。
・集約的な育成方法の利用を防ぐため,家禽は最低限の日齢に達するまで育成するか,あるいは成長の遅い系統から導入しなければならない。最低育成日齢は家禽の種類別に規定(鶏の場合は81日)(12条5項)。
・草食動物は気象条件が許す限りいつでも放牧のため草地を利用できなければならない(14条2項)。
・ただし冬の間は屋外に出られなくともよい(14条3項)。
・1歳以上の去勢されていない雄牛は気象条件によらず草地ないし屋外に出られなければならない(14条4項)。
・家禽の屋外エリアはおもに植生で覆われ,保護施設を設置し,そして十分な量の水入れと餌入れを利用できるようにしなければならない(14条6項)。
3-10 CAPにおける動物福祉の施策
3 現行制度
― III-38 ―
EUの共通農業政策(CAP)は大きく分けて2つの形で動物福祉を支援している。一つは農業助成の給付要件であり,もう一つは動物福祉に関連した取組みに対する助成である。なお,以下の記述は2014年から施行された新しい規則によっている。
3-10-1 クロスコンプライアンス(直接支払い)
「クロスコンプライアンス」は直接支払いの受給要件の一つであり,農業の多面的機能を促進するための規定である。対象となる分野は①環境・気候変動・土地の良好な農業状態,②公衆・動物・植物衛生,③動物福祉である(横断的規則(1306/2013) 93条)。
クロスコンプライアンスは二つの部分,すなわちEU法の下における法定管理要件(SMR)と,各加盟国の定める「良好な農業・環境の状態」(GAEC)の基準からなる(横断的規則(1306/2013)93条)。前者のSMRは既存法令の順守を求めるものであり,動物福祉はここに含まれる。具体的には以下の3つの理事会指令が挙げられている。
・子牛指令(2008/119/EC 3条,4条)
・豚指令(2008/120/EC 3条,4条)
・農用動物指令(98/58/EC 4条)
3-10-2 牛の生体輸出補助金(市場施策)
肉用牛・肉用子牛の生体輸出に対する輸出補助金(輸出割戻金)は,EU法の規定する動物福祉の要件を順守することが条件となっている(市場管理機構(CMO)規則(1308/2013)200条)。
3-10-3 農村振興政策における動物福祉支
3-10-3-1 農村振興政策の優先課題
CAPの農村振興政策は多様な施策を包含しており,加盟国が任意で施策を選択し組み合わせて農村振興プログラムを策定する。財政費用はCAP財政と加盟国(場合により地域や施策の参加主体も)が共同で拠出する。
農村振興政策の6つの優先課題のうち一つは,以下のとおり動物福祉の促進を含んでいる。
優先課題3 「フードチェーン組織(農産物の加工・販売を含む),動物福祉,および農業のリスク管理を促進すること」(農村振興規則(1305/2013)5条3項)
3-10-3-2 動物福祉支払い
動物福祉支払いは,自発的に動物福祉の取組みを行う(営農実態のある)農業者に対す
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
― III-39 ―
る助成である(33条)。ただしその取組みは,クロスコンプライアンスおよびその他の義務的要件を上回るものでなければならない。取組み期間は1年間から7年間であり,更新可能である。
この助成金は年単位で給付され,当該取組みによる追加的費用および所得減少(income foregone),そして必要であれば取引費用(ただし最高で助成金額の20%まで)の全部または一部を補償する(33条)。支払いの上限は1労働単位当たり5百ユーロである(33条3項および付属書II)。
3-10-3-3 品質保証制度への助成
農産物および食品の品質保証制度(quality scheme)に対する助成(16条)の対象となるのは,(a)EUの各種規則に基づく品質保証のほか,(b)加盟国独自の品質保証(農場の認証制度を含む),(c)加盟国政府が認めた自発的な品質保証制度(第16条b項)である。
このうち(b)(各国独自の品質保証制度)には,以下の種類があり,動物福祉を含んでいる。
・特定の産品の特徴
・特定の農業ないし生産の方法
・公衆・動物・植物衛生,動物福祉....,ないし環境保護について,商業規格(commercial commodity standards)を明らかに上回る最終産品の品質
また(c)(自発的な品質保証制度)には対象分野の規定がないため,動物福祉を対象とすることも可能と考えられる。
4 動物福祉政策の課題と対応
― III-40 ―
4 動物福祉政策の課題と対応
4-1 規制の施行とその影響
4-1-1 加盟国の順守問題
採卵鶏用ケージ規格の変更や,繁殖雌豚のストール飼いの禁止は,長い猶予期間を設けたにも関わらず実施が順調ではなく,以下にみるとおり当初は順守できない加盟国が続出した。
4-1-1-1 EU法の違反手続き
欧州委員会は,加盟国が基本条約の義務に違反した場合は理由を付した意見を表明し,当該国が委員会の定めた期限内に意見に従わない場合は欧州裁判所に提訴することができる(EU機能条約258条)。とくに,加盟国が指令の(理事会と欧州議会の合意を得た)実施期限を守らなかった場合は,欧州委員会が欧州裁判所に対し適当な額を明記して,当該加盟国に罰金を科すよう求めることができる(EU機能条約260条(3))。
実際の違反手続き(infringement procedure)(注16)は,まず欧州委員会が加盟国に正式通知文書(letter of formal notice)を送付し,一定の猶予期間(通常は2カ月)を与える。それでも是正されない場合は,次に理由を付した意見書(reasoned opinion)を送付し,また一定の猶予期間(通常は2カ月)を与える。順守できない場合,欧州委員会は欧州裁判所に提訴することができるが,約95%の違反例では提訴にいたる前に加盟国が法令を順守している。
4-1-1-2 採卵鶏指令の場合
採卵鶏指令については,国内法規の整備と規制実施の両方で複数の国が違反を指摘された。
1999年の指令で狭いケージの使用が禁止された際,12年間の猶予期間が設定された。しかし業界からは猶予期間の終わりが近づいても延長を要望する声が上がっていた(Agra Europe Jan 8 2008, Jan 2 2009)。
採卵鶏指令の規定により,加盟国は2002年1月1日までに指令に対応する国内法規を施行しなければならない。しかし対応の間に合わない加盟国は少なくなかった。1年後の2003年1月13日,欧州委員会は5カ国(オーストリア,ベルギー,ギリシャ,イタリア,ポルトガル)に理由を付した意見書を送付した(以下,欧州委員会の報道発表による)。さらに半年後の同年7月14日,欧州委員会は4カ国(オーストリア,ベルギー,ギリシャ,イタリア)を欧州裁判所に訴えた。
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
― III-41 ―
そして2012年1月1日に,狭いケージの使用禁止が発効すると,今度は加盟国の約半数が違反手続きの対象となった。欧州委員会は規定の発効から1カ月経たない同月26日に,13か国に正式な通知文書を送付し,さらに同年6月21日,欧州委員会は13か国に理由を付した意見書を送付した。うち11か国はその後順守にいたったものの,残り2カ国(ギリシャとイタリア)は翌2013年4月25日,欧州裁判所に訴えられた。
4-1-1-3 豚指令の場合
2001年の豚指令は,妊娠中(最初の4週間を除く)の雌豚を個体別にストールに入れて飼う方式から,群れ飼いに移行することが定められた。採卵鶏指令の場合と同様に12年間の猶予期間が設けられた。
この規定の発効が7カ月ほど先まで迫った2012年4月26日の時点で,発効当初から順守できる加盟国は(27か国のうち)16か国と推定された(以下,欧州委員会の報道発表による)。そして2013年1月1日に,雌豚のストール飼い禁止が発効すると,欧州委員会は翌2月の21に,9カ国に正式通知文書を送付し,雌豚の群れ飼い実施を徹底するよう求めた。さらに翌2014年の1月23日には,欧州委員会は4カ国に意見を付した意見書を送付した(Agra Europe, 23 Jan 2014)。2カ月以内に完全実施しなければ欧州裁判所に訴えることになり,加盟国は敗訴した場合,罰金を科される可能性がある。くわえて欧州委員会はこの時点で2カ国に正式通知文書を出しており,2カ月以内に順守しなければ最終警告へ移行する。また別の5カ国については順守状況を評価中であった。
(注16)EUの報道資料による(http://europa.eu/rapid/press-release_MEMO-12-12_en.htm?locale=en)。
4-1-2 豚の産地移動
第II部報告書でも言及しているとおり,豚指令の適用によって規制の強化された子豚生産から撤退(あるいは当該部門が縮小)する国が出てきた結果,子豚の生体貿易が増加している。動物福祉規制が産地移動をもたらしているといえよう。これがEU内における新たな国際分業として定着する可能性もあろう。
4-2 国際的な側面
4-2-1 競争上の懸念
EUにおける農業動物福祉要件の増大は,関連費用とひいてはEUの競争力と貿易に影響がある,そしてEU(あるいはEU法令の規定よりも高度な動物福祉を定める加盟国)の外からの低福祉産品の輸入が生産費用の面で優位になる,との根強い懸念がある(注17)。そうした懸念には政治的な影響力があり,例えば2007年のブロイラー指令の一部の条項は,EU生産者の世界に対する競争力を弱めるとの懸念から可決前に取り下げられた。
4 動物福祉政策の課題と対応
― III-42 ―
なお,既存の法規のいくつかは輸入される家畜や畜産物にEUと同等の動物福祉基準を義務付けている。子牛指令(2008/119/EC)8条と豚指令(2008/120/EC)9条は,いずれも生体輸入される当該家畜にEUと同等の基準を満たすことを求めている。同様に屠殺規則(No (EC)1099/2009)の12条は輸入される食肉にEUと同等の基準を満たすことを求めている。そして輸送規則((EC) No 1/2005)の5条4項,14条1項,15条2項は第三国との間の輸送にも適用される。そのため「ECのアニマルウェルフェア法制のEU以外の国への影響を過小評価してはならない」(アップルビー&ヒューズ 2009: p.258)。
農相理事会はこれまで,輸入産品に動物福祉要件を課す目的でWTO協定に動物福祉を含めるよう主張してきた。しかし歴史的にEU外の多くの国は国際貿易協定で動物福祉上の関心を正式なものにすることに後ろ向きであった。EUへの輸出に対する非関税障壁になるとみられたためである。EUの農業者は,このような動物福祉と現行貿易ルールの問題により,動物福祉基準の引き上げは困難であるとみなしてきた。
こうした状況下で国際貿易協定に動物福祉の関心をさらに取り込むには,OIEのWTOへの勧告が重要である。OIEの衛生基準はWTOに認められている。
4-2-2 対外的な取組み
EUは欧州委員会を中心に国際機関などEU外における動物福祉を促進している。農用動物に関する取組みは以下のとおり(注18)。
・欧州委員会は世界動物保健機関(略称のOIEは旧称による。日本の加盟条約(1930年)では旧称の「国際獣疫事務局」が用いられている)の活動に積極的に参画している。
OIEは世界178か国(2013年)の参加する政府間機関であり,動物衛生に関する国際基準の作成等を行っている。WTOはOIEをリファレンス組織として認めている。また,すべてのEU加盟国はOIEに加盟している。
OIEは2001-2005年の戦略計画で動物福祉を優先事項と定めて以来,主導的な役割を果たしている。2002年に常設の動物福祉作業部会が設置され,2004年には陸生動物衛生規約に動物福祉の基本指針が盛り込まれた。その後2005年以来,陸生動物衛生規約および水生動物衛生規約に12件の基準が採択された。畜産に関するものとしては動物の輸送,屠殺,肉牛生産,肉用鶏生産などがある。また2004年以来4年ごとにOIE世界動物福祉会議を開催し,動物福祉の普及と実施を支援している。
・欧州委員会はFAO,WHO,世銀とも協力して動物福祉の推進に努めている。FAOによる動物福祉の普及活動に積極的に貢献し,その一環としてFAOのWebサイト内に動物福祉のポータルサイト(注19)が設置された。
・EUは国際食品規格委員会(コーデックス委員会)における有機産品基準の検討にも積極的に関与している。コーデックスは輸出国の有機産品基準をEUと同等と認める際の基
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
― III-43 ―
準に用いられる。
・欧州委員会は,二国間動物衛生協定に自主的な動物福祉基準を組み込むよう努めている。自由貿易協定としてはチリ(2002年)との間で初めて衛生・植物検疫(SPS)の章に動物福祉が盛り込まれ,その後の先例となった。その後欧州外で2004年にカナダ,2010年には韓国,中米(コスタリカ,エルサルバドル,ガテマラ,ホンジュラス,パナマ,ニカラグア),コロンビアおよびペルーへと拡大した。その他にタイおよびヴェトナムとの協力連携協定にも動物福祉が含まれており,ニュージーランド(2007年)およびオーストラリア(2008年)とは動物福祉に関する協力フォーラムを設置している(SEC(2012) 55 final: pp.85-86)。
また,2013年1月にはブラジルとの間で新たな覚書に署名し,農用動物の福祉について協議する仕組みを設置した。協議ではOIEの諸勧告を基準に用いる(Agra Europe, 29 Jan 2013)。最近では米国とのTTIPや,メルコスール(南米共同市場。加盟国はブラジル,ウルグアイ,パラグアイ,アルゼンチン,ヴェネズエラ)との交渉で動物福祉が取り上げられ,難航している。
また,EUでは国際対応のための調査も行っている。農用動物指令(98/58/EEC)はEUへの輸出国における動物福祉政策等の調査を定めた(3-2-3を参照)。また2012-2015年の動物福祉戦略(次節)によれば,世界市場における欧州畜産生産者の競争力に動物福祉の国際的活動が及ぼす影響について,2014年に報告書を提出する見込みである。
(注17)本項はおもにBenett & Appleby(2011: p.253)による。
(注18) おもにDG SANCO(2010)およびOIEのWebサイト(http://www.oie.int/)を参照した。
(注19) Gatesay to Farm Animal Welfare (http://www.fao.org/ag/againfo/themes/animal-welfare/en/)
4-3 2012-2015年の動物福祉戦略
欧州委員会は2006年に初めて,動物福祉に関するEUの各種施策をまとめた「動物の保護と福祉に関する2006-2010年の共同体行動計画」を採択した。この計画の実施期間中には,新規に肉用鶏指令が導入され,屠殺規則,豚指令,子牛指令がそれぞれ改正された。
これを引き継いで2012年には「動物の保護と福祉に関する2012-2015年のEU戦略」が提出された。現在,動物福祉政策に関する取組みはこれに沿って進められている。この戦略では,既存制度の問題への対応に重点が置かれており,法規の枠組み見直しや制度の実効性を確保するための対策が検討されている(注20)。
4-3-1 現状の課題
まず動物福祉分野のEU法規においては,いくつもの規定が完全には適用されていない。一部の加盟国はステークホルダーへの周知,査察官の養成,検査の実施,制裁措置を十分に実施していない。またいくつかの加盟国においては,当局が所定の根拠なしに規定から
4 動物福祉政策の課題と対応
― III-44 ―
の逸脱を許可するので,多数の動物が気絶処置なしに屠殺されている。生産等の方式変更には数年間の猶予期間を認めているのにもかかわらず,移行は必ずしも適時になされない。
その背景としては,加盟国間では農法・気候条件・土地の条件が異なるため,一律のルールは合意が難しく,適切な実施はさらに困難である。またそれにくわえて,法規(の精神と条項)の順守を促進する上では,動物福祉に対する文化的な価値判断(cultural appreciation)が本質的な役割を果たしている。
動物福祉に関する情報の伝達にも問題がある。動物福祉への対応による畜産の追加的コストは2%程度(畜産と実験の合計の値)とみられる。しかし動物福祉基準を達成するためにこれだけの負担がなされているのに対して,そうした取組みについて消費者への周知は十分になされていない。EUにおいて動物福祉は64%の人々にとって重要な問題であるにも関わらず,十分な情報が与えられないため,食品購買時の選択はおもにその食品の価格および直接的に確認できる特徴に従ってなされている。また他の部門でも,多くのステークホルダーは動物福祉について十分な知識を有していない。たとえば生産方式における代替方式を知らない場合は変更に抵抗する傾向にある。
くわえて既存の法規自体についてもいくつかの課題がある。農用動物指令の規定内容はあまりに一般的で効果が薄く,その一方で畜種別法規のない乳牛や肉牛の問題には対応できない。また,豚指令・輸送規則・屠殺規則ではそれぞれ別個に動物取扱者の適格要件が導入されたが,農用動物指令にはそうした規定がないため他の畜種や分野は対象外となっている。
4-3-2 基本方策
4-3-2-1 一般枠組み法規の導入
これまでEUは各種の動物福祉に対応する個別法規を制定してきたが,共通の問題に対処するため,経済活動用に飼育される動物すべて(必要に応じペットを含む)を対象とする簡素化された規定のありかたを検討する。簡素化にくわえて,事務負荷の軽減と,動物福祉基準にかかる費用の増大抑抑制に配慮し,動物福祉基準の潜在的な付加価値とあわせてEU食品産業の競争力に貢献する。
以下の4点が検討される。
(a) 既存の規定はもっぱら各種経済活動のやり方(input)を規制してきたが,新たにその結果である動物の状態に基づいた科学的に根拠のある福祉指標を導入することにより,法規の枠組みを簡素化し,家畜生産者の競争力を改善するための裁量を認めることが可能になるかもしれない。
(b) 消費者に対して購入時の選択に十分な動物福祉の情報を提供する。他のEU政策分野との共同も検討する。
(c) 「欧州照会センター・ネットワーク」を設置する。おもな目的は,加盟国当局に対し,
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
― III-45 ―
とくに新たな動物福祉指標(上述)に関連して整合的かつ統一された専門的情報を提供することである。加盟当局の職員や第三国の専門家を対象とする訓練課程も提供する。
(d) 動物を取扱う従業員の共通適格要件を導入する。さらに工程・施設・機器の設計責任者に適用される適格要件も検討する。
4-3-2-2 加盟国への支援と法規遵守の改善方策
加盟国による法規遵守の強化を優先事項として取り組む。
最も重要な取組みとして,引続き食品獣医局による加盟国の検査と,加盟国の法規違反に対する処置など基本条約に定められた権限(必要であれば欧州裁判所に告訴)を積極的に適用する。
しかしながら欧州委員会は,適切な教育方策が事業者と加盟国に順守の文化を浸透させる強力な手段になり得ると確信しており,欧州照会センター・ネットワークに期待している。また獣医査察官の養成を強化し,加盟国当局への助言を拡大する。
さらに個別の動物福祉法規について,具体的な指針ないし実施ルールを策定する。
4-3-2-3 国際協力の支援
○二国間貿易協定ないし協力フォーラムに動物福祉を盛り込む努力を継続する(2011年には動物福祉を含むFTAが倍増した)。
○多国間の枠組み,とくにOIEとFAOで積極的な関与を続ける。
○近隣諸国政策への組込みを改善する方法を検討する。
○動物福祉に関するEUの考え方を広めるために大がかりな国際イベントを必要に応じて開催する。
4-3-2-4 消費者と公衆に対する適切な情報の提供
EU消費者に食料生産動物に適用されるEU法規について知らせ,動物福祉に関する誤った主張に惑わされないようにする必要がある。既に加盟諸国では各種の取り組みがなされていることから,まずは各国の取組みを調査し,全体像を明らかにしたうえで,国をまたぐ情報キャンペーンへの助成などEUの果たすべき役割を検討する。
4-3-2-5 CAP施策間の相乗効果を最大限にする
EUの動物福祉支援のうち71%はCAPの農村振興プログラムに使われている。緊縮財政の下でCAP施策(クロスコンプライアンス,農振振興,販売促進施策,品質政策,有機農業など)間の協調を強化するため,関係部局間で検討を行う。
4-3-2-6 魚の福祉に関する研究
魚は輸送規則と屠殺規則の適用対象であるが,魚に関する特別な規定はない。科学的諮
4 動物福祉政策の課題と対応
― III-46 ―
問に基づき適切な施策を検討する。
表 「動物の保護と福祉に関する2012-2015年のEU戦略」の実施予定事項
想定される取組み

採卵鶏の保護に関する一連の施行(指令 1999/74/EC)
2012
雌豚の群飼の実施計画と施行(指令2008/120/EC)
屠殺規則の群飼の実施計画と施行(理事会指令 (EC) No 1099/2009)
輸送中の動物のEU実施規定ないし指針
食肉生産のために繁殖・飼育される鶏の福祉に対する遺伝的選抜の影響に関する欧州議会と理事会への報告書*
犬猫の毛皮の販売を禁ずる規則(EC) No 1523/2007の適用に関する欧州議会と理事会への報告書*
養殖魚を殺す際の福祉に関する研究
家禽に対する気絶処置の各種方法に関する欧州議会と理事会への報告書*
2013
指令98/58/ECの実施に関する理事会への報告書*
豚の保護に関するEU指針
動物福祉教育と一般公衆および消費者に向けた情報活動に関する研究
動物の気絶処置に関する適切な情報を消費者に提供するための機会に関する研究*
輸送中における養殖後の福祉に関する研究
動物福祉に関する簡素化されたEU法枠組みの立法提案の可能性
2014
動物福祉の国際的活動が,欧州の畜産生産者の世界市場における競争力に及ぼす影響に関する報告書
牛を上下反転ないしその他の不自然な姿勢で拘束する方式に関する欧州議会と理事会への報告書*
商業活動に用いられる犬と猫の福祉に関する研究
動物を殺す際の保護に関するEU指針ないし実施規定
魚を殺す際の保護に関するある種の要件の導入可能性に関する欧州議会と理事会への報告書*
2015
指令2007/43/ECの適用と,(食肉生産のために繁殖・飼育される)鶏の福祉への影響に関する欧州議会と理事会への報告書*
出所 COM (2012) 6 final/2 付属書
(注)「*」印はEU法規で義務付けられているもの。
4-3-3 具体的な取組み事項
想定されている具体的な取組み事項は表に示したとおりである。既存法規の施行に関わ
第 III 部 EU における動物福祉(アニマルウェルフェア)政策の概要
― III-47 ―
るものと,既存法規で定められた報告書が過半を占めている。それ例外で複数あるのは既存の個別法規に関するEU指針ないし実施規定が3件,養殖魚の福祉に関する研究が2件(くわえて既存法規に基づく報告書1件あり)である。そのほかには簡素化された動物福祉の枠組み法規,動物福祉に関する国際的活動の影響,商業活動に用いられる犬と猫の福祉がある。
4-3-4 戦略の向かう方向
法規順守問題の背景には加盟国間における農業条件の違いと,動物福祉に対する考え方の違いがある。新戦略による対応の方向は,新たな福祉指標の導入により規制を簡素化して加盟国や事業者に柔軟性・裁量を持たせるとともに,EU共通の教育によって順守の文化を根付かせるということのようである。
また消費者には動物福祉政策の内容について,事業者や当局には代替技術や新たな科学的知見についての十分な情報を提供する。それによって施策は消費者に評価され,また関係者に受け入れられやすくなることが期待されている。
規制の簡素化についても,また消費者への情報提供についても,EUより低水準の動物福祉の下で生産された輸入産品との競合に配慮していることが読み取れよう。
この戦略では,新たな分野や畜種の法規を増やすことよりも,既存制度の問題への対処と再検討,そして情報の円滑な提供が中心となっている。動物の状態に基づく新たな福祉指標は,動物の飼養や取扱いの方法に焦点を当てていたこれまでの規制からの大きな転換につながる可能性がある。全体として2012-2015年は次の大きな変革へ向けた準備期間となるのかもしれない。



「餌を得るための探査行動派動物にとって強い欲求を持つ行動の一つである。特にブタは嗅覚が優れており、強靭な鼻を利用して土を掘り起こすルーティングやものを噛むチューイングといった行動に対して強い発現欲求を持っている。その行動を制限されることでブタは強い欲求不満状態に陥る。十分に発現できない行動に対してブタは、施設をかじることや他個体の尾や耳をかじること、もしくは攻撃行動といった行動に転嫁して発現するのである。(「畜産技術」2014.9月号より引用)

ヨーロッパ諸国のと畜場では尾かじりが1~2%、外傷は10%程度観察されている。国内でも尾かじりの発生率は2~3%とされて
いる。「畜産技術」2014.9月号より引用)

「ブタが尾かじりを行う原因は正常行動の不十分な発現だけではない。尾かじりを予防するための断尾が、その尾かじりを助長させているという報告もある。イギリスの92農場を対象として尾かじりが起こる危険因子を調査したところ、断尾を行うことによって尾かじりが起こるリスクが3倍にも増加していた。ほかの要因としては、離乳までの栄養障害も指摘されている。出生から離乳までの増体が285g/日の個体よりも260g/日の個体、つまり成長が悪かった個体で尾かじりを多く発現していたという報告もある。」(「畜産技術」2014.9月号より引用)


2013年のカナダの「豚の飼育と取り扱いに関する規約」(code of practice)の草案に対するパブリックコメントには4700件の意見具申、32340件の個々の批判が寄せられた。意見はカナダ、米国、世界各国の生産者、処理業者、獣医師、動物愛護提唱者、一般市民など多くの人々から寄せられた。(2013年10月「養豚情報」引用)

放牧豚における消化管内寄生虫相に関する研究(2011年)
放牧豚養豚と、舎飼養豚における寄生虫検出量の比較
コクシジウムを除く検出された寄生虫(大腸バランチジウム、豚回虫、豚鞭虫、豚腸結節虫)において、放牧豚は舎内豚と比較して、陽性率は低値もしくは同率であった。これは個体密度の低下のほかに、放牧によりストレスが軽減されることも一因と考えられる。
放牧式の養豚は豚のストレスの軽減や土地の有効活用も可能であり、抗寄生虫対策を十分に施せば現在の畜舎内の養豚にも劣らない清浄度をもって豚を飼養できると推測され、今後是非日本でも拡大して欲しい養豚方式であると考える。(家畜衛生雑誌2012.7月号)

妊娠ストールに変わる飼育方法-小針 大助
・AW対応は必ずしも大規模システムへの転換が必要なわけではない。ポイントさえ抑えれば、小規模経営の農家でも十分対応できる内容なのが分かる。例えば、個別ストールから群飼への移行にともない、多くの個体との接触が可能となる一方で、一番の問題としては闘争が激しくなることが指摘されている。特に給餌エリアなど利用の集中するエリアにおいては、闘争が激化し、十分に摂食することができなくなるおそれもあることから、コントロールが必須となる。この対策としては、個体ごとに給餌エリアに取り込み、栄養摂取状況を監視する大型の自動給餌システムも有効であるが、給餌専用のストールを採用するだけで、かなり改善することが知られている。豚が給餌ストールに入ると自動的に入り口が閉じるオートロック式のストールなども開発されているが、従来の個別ストールを改良し、入り口を主導で開閉できるようにすれば、既存の施設を生かすことも十分可能である。むしろ小規模なほうが、健康状態のチェックなども一日数回の給仕の際に確認でき、飼育労力もそん色ないと考えられる。いっぽうで生産性のめんからは単純に飼育密度が下がることから下がることや自由に動けることから飼料要求率が高まることもあるかもしれない。この点はじつはさまざまなシュミレーションが行われているが、実際の飼育システムは必ずしも一様ではないので、更なる検討が必要である。
(2013年3月「畜産コンサルタント」)

「ACCC(オーストラリア競争・消費者委員会)は、「放し飼い」「放し飼い出産」および「戸外出産」といった表現から生じる養豚産業に誤解を招く行為と主張された調査を終えた。問題のブランドはPrimo smollgoods,kr castlemaine,atway porkであった。「製品の包装や販促飼料での表示は、食肉製品の生産のために飼育した動物の生きていた時の状態を正確に反映することが重要である。言葉は産業における特殊な意味を持つかどうかにかかわらず、マーケティング材料は消費者が理解できる言葉を用いなければならない」とACCC座長のRodSims会長は述べた。ACCCはこれらの調査の結果として、PrimoSmallgoodsと取引のあるP&MQualitySmollgoodsPtyLtd、KRGastlemaineと取引のあるGeorgeWestonFoodsPtyLtdおよびOtwayPorkと取引のあるPastoralPorkCompanyPtyLtdからの法廷強制力のある事業を受け入れた。
これらの三つの事例のそれぞれに、ACCCは豚肉製品の拡宣物やラベルにPrimoSmallgoodsの用いた「放し飼い」またはOtwayPorkおよびKRCastlemaineの用いた「放し飼い出産」のどちらに対しても言及することは、ブタが放し飼いの方法によって飼育されたという全体的な印象を消費者に与えそうであると考えた。これらの飼育方法は、最低でも、ブタはほとんどの日、戸外の運動場で自由に動き回っていることを意味する。実際、これはそうではなかった。
「事業において、生産者は、この行為はオーストラリアの消費者法に違反したかもしれないと思っている。すべて、生産者は、最低でも、ブタはほとんどの日、戸外の運動場で自由に動き回っているといった飼育方法をとらなかったら、そのような同じ表現を用いないと約束した。彼らはまた、消費者法のコンプライアンスプログラムを実施し、訂正報告書を公表することに同意した」とSims氏は述べた。
AustralianPork社は「戸外出産」に変えて「戸外出産。藁の敷いた舎内で飼育」を豚肉生産基準の一つとしての表現とロゴを持ち言うことに同意した。
ACCCは「戸外出産。藁の敷いた舎内で飼育」の言葉を加えると、ブタは戸外で生まれたが、離乳から出荷まで舎内で飼育されたことが消費者にとってよりわかりやすくなると考えている。ある業者は、消費者に販売される豚肉製品として、飼育され出荷された豚肉よりも、母豚の生活状況を示した「戸外出産」および「放し飼い出産」という言葉を用いたと思っている。
ACCCは、消費者が母豚のことを述べたこれらの表現を正しく理解しそうでないと考えており、この言葉の中に、これらの表現を用いることは誤解を招くだろうと考えている。「「放し飼い」や「放し飼い出産」といった表現は間違った使い方であると、消費者は存在しない製品の性質により多くの出費となるかもしれない。合法的な放し飼いの生産者は、その有利な差別化を不当に失って、競争相手にも害を与える。消費者とビジネスが表現の誠実性に対して信頼をなくすと、革新は損なわれる」とSims氏は述べた。
(養豚情報2015.12)
参考
Primo Smallgoods, KR Castlemaine and Otway Pork to change labels on some pork products
http://www.weeklytimesnow.com.au/agribusiness/primo-smallgoods-kr-castlemaine-and-otway-pork-to-change-labels-on-some-pork-products/news-story/dc2398749c42039bec5f56fffeabf9ea?=




卵用鶏

ドイツとイギリスは独自の基準を設けており、エンリッチドケージさえも使用が禁止され、鶏が床面などを自由に動き回れる平飼いや放し飼いを基本とした飼養方式に移行しています。(2013.3月号 畜産コンサルタント より)

強換鶏は、断餌すると、目の前のものを何でも口に入れる(ので餌箱の掃除が必要 2015.2「鶏の研究」)

ISA(家畜改良会社)「取締役営業部長 アリアン・グルート「●世界の鶏舎システムの変化 2012年時点の主な鶏卵生産国の飼養システムを、従来型ケージ、平飼い、フリーレンジに分けてみてみると、インド、メキシコ、ロシア、トルコ、イランでは100%従来型ケージでの飼養が行われている。日本は97%が従来型ケージで、若干の平飼いとフリーレンジの飼養が行われている。アメリカは94%が従来型ケージの飼養システムである。南アフリカのフリーレンジの割合が多いのは、アニマルウェルフェアとは関係がなく、単に設備投資が少ないことが原因だ。一方オーストラリアとニュージーランドでは過去5年間でフリーレンジと平飼いの割合が増加している。これはアニマルウェルフェアがオセアニア地域で広まりつつあること、プレミアム・エッグという考え方が広まっていることなどが主な要因である。従来型ケージは、先進国、発展途上国を問わず、世界のほとんどの市場において、いまだに一般的な飼養システムだ。しかし、ヨーロッパでは大きな変化が生じている。オセアニア地域においても、ヨーロッパと同様な方向に進んでおり、オーストラリアでは近いうちに従来型ケージシステムは禁止されるだろう。(中略)アメリカのいくつかの採卵業者はすでにエンリッチド・ケージに投資し始めている。(中略)現在、ヨーロッパにおけるビークトリミングは、熱刃の使用は禁止され、孵化場における赤外線方式のみ許可されている。イギリス、オランダ、ベルギー、スカンジナビア諸国などの北欧は、2016年もしくは2018年にビークトリミング自体を完全禁止にする方向で議論が進められている。また雄雛の淘汰については、ヨーロッパでも現在は認められている。しかし、雄雛を孵化後一日齢で殺すことがいいのかどうかについては、多くの技術的あるいは政治的な議論が重ねられている状況だ。この状況下で、育種会社がどのように対応していくかという点においては、たとえば、卵肉兼用種の復活がひとつの検討課題となっている。現在は鶏卵の販売方法がより重要な意味を持つようになっている。とくにスーパーマーケットの動きが大きな役割を担っている。消費者の志向は別にして、スーパーマーケットがケージの卵を売らない(仕入れない)ということを決めることが可能だからだ。実際にヨーロッパにおいては、早期にアニマルウェルフェアに対応した業者が大きく利益を上げているということがいえる。(中略)2012年尾EU諸国における飼養システムの割合を見てみると、スペインでは94%がエンリッチドケージ(改良型ケージ)、6%がフリーレンジとなっている。イタリアでは70%がエンリッチド、25%がアビアリー/平飼い、残りがフリーレンジとオーガニックだ。ドイツやオランダではエンリッチド・ケージ、また、フリーレンジの割合は多くない。その代わりにアビアリー/平飼いが60%ほどを占めている。なぜこのような状況が起こっているかといえば、ドイツやオランダのスーパーマーケットがケージ飼い(従来型はもちろん改良型であっても)の卵の仕入れを拒否する動きがあるからだ。イギリスにおいては、エンリッチドケージとフリーレンジがそれぞれ40%強を占めている。フランスではエンリッチドケージが70%を占めており、次フリーレンジが20%、そしてアビアリー/平飼いとオーガニックが5%ずつとなっている。
(2015.2「鶏の研究」)

㈱丸永 成鶏舎移動について
「とくに夏場は、若鶏が蒸れて死亡する場合があるので、成鶏舎に移動したら、成鶏舎内では間隔を置いて配置し、風通しを良くしておく」「若鶏は直射日光に慣れていなくて、夏季は簡単に死亡することがある」
(「鶏の研究」2014.5)

「㈱ゲン・コーポレーションが2/26に開催した第17回孵化場経営懇話会で「トリのアニマルウェルフェア-世界的、地域的な視点から-」と題した講演が行われた。同社の親会社EWグループで動物愛護の責任者を務めるアリスター・フィリンガム氏が講師を務めた。」
同社(ゲン・コーポレーション)エリッヒ・ウエスヨハン取締役会長の挨拶
「動物愛護は、弊社の重要な事業である。ここ年で、われわれが取り扱うすべたの動物のための特別なガイドラインと教育プログラムを確立した。弊社グループで動物愛護の責任者を務めるアリスター・フィリンガム氏がすべての関連会社を監査している」
(「鶏の研究」2014.5)

・新村ら(2007)は平飼および放牧飼育の産卵鶏の行動を比較し、放牧飼養した鶏では羽毛つつき行動の減少が見られ、カニバリズムのリスクが低いことを示唆し、また驚愕反応性が低いことからも放牧飼育は福祉レベルが高いとした。(2013年3月「畜産コンサルタント」)

・2012年現在で、EUでは38%、イギリスでは43%がファーニッシュドケージ(エンリッチドケージ)で飼育されている。(2013年3月「畜産コンサルタント」)

・ファーニッシュドケージは従来型ケージと比較して、砂浴び行動などが発現することで行動が多様化し、活動量も増加する。それにより、爪の伸びすぎや羽毛状態の悪化などは改善が認められ、管理者への驚愕反応性も低くなる。(中略)ファーニッシュドケージの生産性は高く、改良が進んだファーニッシュドケージの産卵率、摂食量、死亡率は、従来型ケージと遜色がない。そのようなファーニッシュドケージでは、ほぼ100%の卵が巣箱で産卵され、卵質も従来型ケージのそれと同様である。全体としてのコストは(中略)550平方センチメートル/羽をみたした従来型ケージを100とした場合、ファーニッシュ110程度と算出されている。(中略)エイビアリーは従来単段式のものと、多段式のものがあり、日本でいう平飼いは単段式エイビアリーに相当する。(中略)エイビアリーでは、利用可能面積や敷料床の増加により行動が多様化し、その発現頻度も高い。それにより、爪の長さは適切な長さで維持され、羽毛状態も良好で、管理者への驚愕反応も著しく低下する。しかしながら一つの飼育システムの羽数が多くなるため、ビークトリミングを実施しない場合では、羽毛つつきなどの問題行動が頻発し、体の損傷が大きくなる。また糞との摂食により衛生状態は悪化し、コクシジウム症などの感染症のリスクは高くなるため、全体として死亡率は増加する。生産性については活動量が増加するため、産卵率、飼料効率などは低下し、また巣箱以外で産卵することで汚卵が増加する傾向がある。コストは、550平方センチメートル/羽をみたした従来型ケージを100とした場合エイビアリーは120程度と算出されている。放牧の場合は、550平方センチメートル/羽をみたした従来型ケージを100とした場合、放牧は140程度8。(鶏の健康Ⅲ2014.8月)

・一般的な減耗要因は尻つつきや卵墜、熱暑等が多い。(中略)餌樋カバーの下に、はまり込んだ状況で羽毛や爪がつつかれている鶏や死亡したニアw鳥が散見された。そのときに発見した死鶏を解剖した。三羽を解剖したが死鶏はすべて卵管内に放卵寸前の卵をもっており、中には卵管内で壊れているものもあった。このことから、死因は他の鶏に踏み潰された圧死と判断した。本養鶏場では、集卵作業が午前8時から開始されるにさきだって、死鶏が集卵ベルトにかからないよう、舎内を見回りし除去する作業が行われていた(中略)除去作業に余計に時間がかかった。減耗の主因は、死鶏除去作業がちょうど産卵行動に移行した鶏(動かなくなる)が、除去作業に驚いたほかの鶏に卵管内の卵が壊れるほど踏みつけられ、ついに死亡したものと推測した。(鶏の健康Ⅲ2014.8月)
*少し黄色いようなげりもしているはずです、卵もうんでませんね、卵墜症(らんついしょう)がうたがわれます、卵が卵巣(らんそう:卵の素がいっぱい集まっているところ)からから出て、卵のとおる管に入り、うまれてきますが、おどろかされたり、なにか大きなショックをうけると、卵はこの管に入れず、お腹の中に落ちてしまいます、落ちた卵はうまく吸収(きゅうしゅう)されることもありますが、お腹の中がおかしくなって、死ぬこともあります、どうしようもありません。

・レグホーン種は、産卵後期に骨が弱くなる傾向がある。その結果、と鳥までの過程で骨折を起こす危険性が高い。(自然と農業2007.2月)

採卵鶏の飼育に関し「どの週齢まで飼育するのか」は大きく分けて二通りに分かれます。80週齢前後で淘汰してしまう方法と、70週齢前後に強制換羽(FM)を行い、90週齢以上まで飼育を継続する方法です。FMを実施するメリットとしては鶏1羽あたりの稼働日数、産卵個数を増やし初期投資(鶏の導入コスト)を低減できることが挙げられますが、「卵重量の増加による商品化率の低下」「卵殻質低下による規格外卵の増加」などのデメリットもあります。(鶏卵肉情報2015.12)





ブロイラー

イギリスmoy park社(処理場、KFC社の取引先)では
「鶏が落ち着くように荷受では青い光を使っており、鶏の鳴き声などほとんどなく静かに対応していた。スタニングにはアルゴンと窒素と二酸化炭素の混合ガスに2分45秒暴露していた。懸鳥時にはすでに鶏は死亡していた1年半前までは電気バスによるスタニングを使用していたが、ガススタニングの方が鶏にも懸鳥するスタッフにも負担が少なく、さらに骨折や傷物率も減り、AWへの配慮が実益にも結び付いたことだった。放血の状態を確認したところ放血(頭ごとの切断)後、1羽当たり55ミリアンペアの電流を流して筋肉を弛緩させることで、放血もきちんとできるとのことだった。」

矢元氏は、プライフーズ生産部の概要紹介に続いて、輸送・と畜に関する同社の取り組みをOIE規約に照らしながら解説。同規約に「最小限に保たれるべき(と殺待機時間を含めて飲水できない時間を12時間以上続けない)」とある輸送時間については、昼キャッチ実施地区では「と殺の3~4時間前に補鳥し、最長40分の輸送を経て処理場に搬入、と殺開始(飲水できない時間は最長9時間)」できているが、夜キャッチ実施地区では「農場から処理場までの輸送距離が最長100キロメートルと長く、広範囲に農場が点在しているため、夜間に補鳥し、処理場で待機。最長輸送時間は2.5時間、最長待機時間は6時間、補鳥・積込作業の2~3時間を含め、飲水できない時間を何とか12時間以下に抑えている」
(鶏肉卵情報 2014.10月号)

・ブロイラーでも個体間のつつき行動を抑制させるために飼育場に乾草やボール、CD、ペットボトルなどを提示する方法がある。
(農林水産技術研究ジャーナル2008.10月)

欧米では無意識の状態でと殺しなければならない法律や規則が定められていることから、鶏は電気的、機械的あるいは他の方法で気絶させる方法が導入されている(AVMA2001.EFSA2004)。しかしわが国では食鳥処理方法の法律、規則などはなく、また気絶後放血時の血抜けが不十分と言う理由で、電気的気絶方法を実施していない処理場が多い。と殺放血後にスタニング(以下、アフタースタニング)を導入している食鳥処理場もあるが、その処理条件については経験的に調整しているのが現状である。
・・・・アフタースタニング通電処理の手羽折れ発生率は処理の有無により(無31.8%、有10%)に違いが認められ、
(日本畜産学会報 2014.8)

乳牛

農地に恵まれたフランスでも、酪農を中心に穀物多給による舎飼が増加していることから研究所(INRA)では放牧価値の見直しを提案している。(2013.3月号 畜産コンサルタント より)

わが国では、平成14年に牛群検定牛の305日乳量が初めて9千kgを超え、当時、北米との乳量差は700~800kg程度にまで縮小していた。ところがその後、それまで年100kgを超えていた乳量の伸びが急速に鈍化し、10年を経過した直近の平成年でも平均乳量は9286kgにとどまっている。
当時、「このままでは牛はつぶれる」「もう乳量はいらない」など、能力向上が繁殖性や長命性に及ぼす影響を懸念する声が聞こえていた。
しかし、世界中が同じ課題を抱えていたはずなのに、各国は能力向上への手綱を緩めず、今やイスラエル(11689kg)やアメリカ(10791kg)、カナダ(9979kg)だけでなく、韓国(9771kg)やスペイン(9504kg)といった国までもが、わが国を上回る泌乳量を確保。
(2014.3畜産技術より引用)

中洞式山地酪農
放牧における問題点
ピロプラズマ病
族に放牧病と呼ばれる中の代表的なのが上記である。
オウシマダニ、フタトゲチマダニというダニの仲間が媒介する原虫が、ダニの吸血の際にウシの血液中に侵入し赤血球に寄生する病気で寄生されたウシは貧血か肝臓障害を起こしたり受胎している母ウシの場合は流産をしてしまったりする。対処としてはダニの駆虫剤を獣医に処方してもらいウシ体にかけることである。しかし中洞牧場では薬を散布したことがない上に、この病気になったことがない。この病気は免疫ができれば次はかからない病気なので、子牛の時期にかかり免疫が出来ているからだと考える。
(畜産の研究2013年10月)





めん羊

めん羊の毛刈りは一般的には動物福祉に反するものとされていないが、電気バリカンによる損傷がしばし発生する。近年、上皮細胞成長因子EGFを注射して羊毛の成長を一時的に止めることによりコートのように脱がすように羊毛を収穫する生物学的羊毛収穫法 biological wool harvesting method という技術が開発されオーストラリアで用いられている。(2011年6月号 日本気象学会雑誌より)



と殺

「しばたパッカーズ」2012年に設立、「2015年にHACCP対応の新工場として変わった。最高1000頭の処理能力を有し、平均処理能力は1日800頭、」「食肉センター内に前処理としてのと畜部門を持ち」「また係留所では豚が安静に休めるよう一頭当たり0.6㎡が確保され、給水や換気、断熱構造など豚の休息環境に配慮されてる。その後、円形追い込み機に入れ、と畜ラインに追い込むが、電気ムチなどは社内規定により使用しない。そして腹乗せコンベアに移動し、両側の眉間、心臓の三点に電撃を与え瞬時に仮死状態にすることで、ブタの苦痛を最小限にしている」
(養豚情報2015.12)

食品企業の約2/3は屠殺前に動物を気絶させるという約束事に対する情報がないことにBVA(英国獣医師協会)は懸念を示した。この事実は、1月27日の出版されたBBFAW報告の中で発表された。そして、予備気絶無しでの屠殺は唯一の福祉の処置であることも示すが、この処置に対する特別の制作を持った食品会社の割合が2014年の34%から2015年32%に減少を示した。
BVAは、12万人の署名を集め、2015年公共請願にこぎつけた英国における気絶無しでの屠殺をなくすため、長期にわたり注目を浴びたキャンペーンを実行した。すべての動物は痛みを感じなくするために、屠殺前に気絶させるべきであると、BVAは提唱している。科学的な証拠は、動物の福祉を守るため、予備気絶を行うことを裏付ける。2015年、BVA会員の2/3は、この問題を政府にとっての最優先事項の一つとして問題提起した。
ThePoultrySite news desk (2016.4養豚情報)




全般


カリフォルニア動物福祉州法(Prop2)
肉用の子牛や採卵鶏、ブロイラー、母豚が寝転がったり立ったり反対のほうを向いたり、羽を広げるのを妨げてはならないとしている。
州外の鶏卵業者もカリフォルニア州に卵を出荷するためには、今後ケージフリーに切り替えるか、鶏が自由に動き回り羽を伸ばすことのできるケージに入れ替えることが求められる。しかしこのProp2は連邦法案「ある特定の州法は他州に影響を与えない」により妨げられる可能性がある。この連邦法案は2014年のファームビルから除外された。
(2014.3 畜産技術を参照)

育種改良により家畜の生産機能は高度に高められたが、代謝、繁殖、健康に関する問題を抱えるようになってきている(Rauw et al.,1998)。ブロイラー種鶏や種豚では、遺伝的に食欲が旺盛となっているにもかかわらず、繁殖機能に悪影響が生じないように給餌量が制限されることで常に空腹感を抱いている状態にある。乳用牛のホルスタイン種は遺伝的に乳を異常ともいえるほど生産するようになった。消化器系の負担が増え、代謝性の疾患が増加した。また、遺伝的に難産を特色とするようになった。

2014年9月
NGOの世界動物保護協会との連携協定の締結に従って、ネスレハサプライチェーンにおける家畜福祉を改善するという主要な公約を公表した。ネスレに乳、食肉、家禽肉および卵を供給する数十万社の農場が、より窮屈な動物福祉標準に従わねばならないことを、この契約は意味する。また、世界的な購買による環境負荷を伴い、ネスレは、動物福祉協会と世界的な連携を築く最初の主要な食品会社となる。(鶏卵肉情報 2014.10月号)


日本でもIGP認証導入の動き
「地理的表示(GI)とは「農林水産物や食品などの名称であって、その名称から当該産品の産地を特定でき、産品の品質などの確立した特性が当該産地と結びついているということを特定できるもの」(2014.10月号「鶏卵肉情報」)

「12年には食品専門委員会総会でOIEガイドラインに基づくAWに関するより具体的な技術仕様を作成することが提案され、承認された。13年には食品専門委員会総会でOIEコードに基づいたAWのマネジメントに関する企画策定にかかわる作業開始の賛否を問う投票が行われ、過半数以上の賛成により作業を開始することが決定した」(2014.10月号「鶏卵肉情報」)

「鶏卵に関しては他の畜産物とは区別した「ライオン品質」マークを、卵一つ一つに赤くスタンプするスキームを導入した。ライオンマークは英国鶏卵産業協会(BEIC)が1998年に開発したもので、現在では英国内で販売される卵の85%にスタンプされており、消費者にとってはなじみのあるものとなっている。現在ではライオンスタンプとともに消費期限と生産方法も表示されている。有機は0、放牧は1、平飼いは2、(改良(追記))ケージは3で表示され、どの生産者によって生産されたものかや、温度管理や衛生管理についても基準が定められている。その結果、ライオンマークの導入後は卵のサルモネラ汚染が激減している。
イギリスのスーパーのうち、M&Sとウェイトローズでは、すでにケージ卵の販売を行っていない。M&Sは2005年に、イギリススーパーで初めてケージ卵の販売を加工品も含めて中止している。現在ではセインズベリーズやモリソンズといった他のスーパーでも、卵の大半はフリーレンジや放牧卵に置き換わっている。イギリスのマクドナルドでは、10年以上前から放牧卵を使用している。
フランスのスーパーでも、都市部を中心に400店以上を展開しているモノプリの自社ブランドでは、卵は放牧卵しか取り扱わないことを決定している。また、卵売り場には卵殻の印字の見方を解説した看板を掲げている店もある。卵殻への印字の内容は、生産者番号、飼育方法、賞味期限などで、0が有機、1が放牧、などはイギリスとまったく同じ。(2014.10月号「鶏卵肉情報」)

「米国鶏卵生産者協会(UEP)では、段階的に広くすることでバタリーケージは維持する、断嘴は孵化後10日以内に実施する、絶食を伴う換羽は禁止-を定めた新しいガイドラインを2005年に発表しているが、UEPとHSUS(米国人道協会)は29年までの従来型ケージ廃止に向けて合意している。」(2014.10月号「鶏卵肉情報」)

スウェーデンでは2016年から麻酔なしでの子豚の外科的去勢を禁止する。スウェーエン政府は麻酔を使用せずに子豚の去勢を禁止することによって、動物福祉を強化することを計画している。政府は、この独自の養豚業界のキャンペーンを取り上げた。スウェーデン議会は、去勢前に種子豚への義務的な麻酔を導入したいと考えている。この規定は、2016年1月1日から有効な国内動物福祉法の一部となる。2012年9月には早くも、養豚農家は麻酔、または雄豚のワクチン接種のために負担した費用を補償しなければならない。さらに、無料のトレーニングは子豚を麻酔する方法スキルの開発を支援するために、豚肉生産者に提供されなければならない。(中略)変更が大々的に有効になる前に、生産者が改善された動物福祉のためにコスト高にもかかわらず、自由市場で競争するために存続できることを絶対的に明確にする必要があることが示された。
EU欧州連合
EUでは、豚肉業界が自主的に2018年までに物理的去勢を禁止することで合意した。この期限が満たされるかどうかは不明である。
「日本における動物愛護は不明だ。しかし去勢の代わりのワクチンの効果でロース芯が大きくなる数字に、雄臭よりも生産性採算性で行かせるのではないかと感じた。実際問題としての雄臭についてもっと論じる、また研究結果が必要に思う。
(2012.10月「養豚情報)

彼らは農産物をスーパーマーケット「コールズ」に供給を継続したい場合は、オーストラリアの生産者は、すぐに畜舎や農場ヤードに監視カメラを設置する必要がある。スーパーマーケット「コールズ」の施策および品質部門のヘッド、ジャッキー・ヒーリング氏は、生産者と小売店が顧客にその食品が農場から食卓の皿までの人道的な動物の処理の保証することができる常時カメラ撮影の導入を検討する必要があるかもしれないと示唆した。オーストラリア動物キャンペーンのディレクターのホワイト氏は、と畜場と農場での強制的なCCTVは、動物保護団体によって称賛されるだろうと述べた。社会の期待と合致すると確信していると畜場や生産者は、そのようなイニシアチブを歓迎すべきであろう。また、これは小売業者が真剣に動物福祉に関する地域の懸念を考慮していたことを消費者に納得させるでしょうと、ホワイト氏は言った。
憤慨した生産者
農場が自分の家であり、この計画がプライバシーの侵害であると主張して、生産者が憤慨している。彼らはその市場支配力を「コールズ」が誤用していると非難した。ヒーリング氏は、プリスベンのクイーンズランドロイヤルショーの集会で語った。生産者が隠すことはないもないし、良く動物を治療していれば、このアイデアが問題になることはない。あなたがモデル例を英国から取り入れる場合、と場で常時カメラを回さないと、子羊をテスコ社に供給することができない。オーストラリアの農場研究所のミック所長は「コールズ」の提案は文脈を欠いていたと述べ、裕福な消費者へのシニカルな魅力であるように思われた。同様のサプライチェーンの保証を求めず、「コールズ」が海外からの安価な冷凍野菜や加工食品の最近数十億ドルの輸入量増加は、顧客のために主張された懸念に合致しているのかどうかミック所長が質問した。大規模養豚場を運営するビクトリア生産者連盟のジョン・ハーク代表は、この考えにうんざりしていると述べた。まったくの偽善だ。彼らはただ、海外からのベーコンを輸入し、それがオーストラリアであるふりをし続ける。
(2012.10月「養豚情報」)
コールズはオーストラリアの二大スーパーの一つ。(もう一社はウールワース)
自社ブランドの卵のケージフリーと自社ブランドの妊娠ストール廃止を約束している。


養鶏場におけるアニマルウェルフェアの取り組みと課題について(有限会社 一柳養鶏場代表 一柳氏)
日本でのAW普及のカギは、グローバル食品企業によるAWの推進、韓国・台湾でのエンリッチドケージの進展などで、これまでのような飼料メーカー主導のビタミン添加増による付加価値卵から、生産者主導による飼育方法による付加価値卵への移行が求められるのではないか。(中略)和合氏「できる範囲で対応することで、一つのビジネスチャンスにもつながるのでは」と応えた。(鶏卵肉情報2014.10月号)


2012年10月にISO(国際標準化機構)はAWの国際基準作成を決め、2013年10月までに完成させるとしている。ISOはOIEと国際基準作成で協働することを2011年6月に合意しており、OIE基準はISO基準を通して拘束力を持つこととなると思われる」(2013.3月号 畜産コンサルタント 佐藤衆介より)
追記:ISO基準は2016年をターゲットに動いている。

ISOは2011年にOIEとAW規約実行について強力文書を締結した。つまり、ISOはOIEのAW規約実行の担保となったのである。OIE規約に基づいたAWのマネージメントに関するISO企画策定作業部会は始まっており、3年後にAWのISO規格=ISO/TS34700(畜産物サプライチェーンのAW認証という技術仕様書)が政策予定となっている。

放牧飼育が家畜の福祉に及ぼす影響―近藤誠司 北海道大学院農学研究院
・放牧による牛肉生産の成績をさまざまな研究報告で渉猟すると、おおむね日増体量は0.7kg前後であり、舎飼いに比べて決して良好な増体成績ではない。
乳量についてはkolver muller(1998)が、放牧のみで飼養した場合、乳量は最大でも日量30kgを超えないとしており、最近のわが国の乳検成績から推測する日生産量よりはるかに低い。
豚については東北大、北里大および麻布大の研究チームが精力的に研究発表をおこなっているが、育成豚では舎飼に比べて大きな差はないとしている。
採卵鶏では新村(2009)の総説によれば、いわゆる放し飼い放牧飼養ではバタリー飼養に比べて産卵率の低下、卵殻・卵黄の退色や作業時間の点から経済コストは高くなるとしており、生産性は低下する傾向にある。
・北里大の高橋らは応用動物行動学会の発表で、離乳豚および育成豚において、放牧飼養は外傷が少なく(2012)、唾液中コルチゾル濃度が低い(2011)ことを示した。また戸澤ら(東北大)は放牧飼養した豚では、土壌との接触が多いにもかかわらず、糞便中総菌数が少ないことを示し、感染に対する抵抗力がより強いことを示唆した(2012)小原ら(2008)も放牧豚は行動学的・免疫学的に健全であり、高品質な肉生産の可能性があるとしている。
乳牛で大きな問題になっているラムネス(歩行異常)については柏原(2007)がけい590頭の搾乳乳について調査を行った。すなわち、歩行中の乳牛の動作をデジタルカメラで撮影し(中略)昼夜放牧、時間制限放牧および放牧をまったく行っていないフリーストール飼養で観察された各スコアの割合は、どの分類においてもスコア1(正常)がもっとも多かったが、昼夜放牧および時間制限放牧ではその割合は76~83%であったのに対して、放牧をまったく行っていないフリーストールでは50%程度であった。また明らかな歩行異常は、昼夜放牧、時間制限放牧では0~1頭であったのに対して、フリーストールでは3~16頭を占めた。
・牛では、つなぎ飼いされた牛と放牧地の牛で伏臥動作と起立動作に要する時間が比較されている(近藤ら 2006)伏臥動作では前足を折り始めてから伏臥が完了するまでの時間は放牧牛が9.2秒であったのに対して舎飼牛は10.7秒と有意な差がみられた。舎飼牛は伏臥を開始した時点で躊躇があることが伺われた。
(2013年3月「畜産コンサルタント」)

・高泌乳に向けて育種された乳牛においては、泌乳がピークになる泌乳初期には摂取できる乾物摂取量と乳量の乖離が大きくなり、負のエネルギーバランスの状態にとなる。(中略)繁殖豚で消費量の60%、鶏で半分から1/4までに削減されており、繁殖鶏の多飲症など栄養不足や摂食行動の欲求不満に特徴的な行動を引き起こす。
繁殖に用いる個体に対しては、繁殖せいを向上するために食事制限が行われる。(農林水産技術研究ジャーナル2008.10月)

2010年8月17日に出された「第三国からの生体並びに畜産物に対するEUへの輸入及び経由規則に関する一般指針書」(EC2010)では、「欧州委員会は欧州での食品供給は世界で最も安全であること、食品安全に関わる基準は原産地にかかわらず適用することを確認すべく動く。食料の最大の輸出・輸入国であることから、EUは国際組織と密に動き、第三国の輸出入相手への支援と助言を提供する」としている。これは欧州委員会の採択事項でも認証事項でもなく、情報としてのみ提供していることが謳われている。つづけて、EUへの輸出を希望する国の監督官庁は、EUすべての対応する法律に適合しているかを確認する責任があるとする。そして、その法律リストの一つに「肉用鶏の保護最低規則も含まれている。すなわち規則ではなく、推奨と言うことであろうが、貿易障壁になっていることは言うまでもない。
鶏卵肉情報(2013.8 佐藤衆介)
と畜・輸送・ブロイラー指令が対象となっている。

OIE規約は、加盟各国の獣医当局(わが国では消費安全局)がその実行を担保することになっている。したがって本来なら消費安全局が各条文における閾値を設定し、その実行を監督する必要がある。しかし、わが国では生産システムについては生産局が担当していることから、同局が飼養管理指針作成を主導している。同局は、本年度中にその実行のためのパンフレットを作成し、それをもって生産者に指針の周知を図ろうとしている。
しかし、世界の動きはもっと急である。OIE規約の実行を一層加速させるため、OIEは2011年にISOと家畜福祉に関する協同の合意をおこなった。その結果、ISOは12年に食品専門委員会(ISO/TC4)の中に作業部会を作り、16年をめどに「家畜福祉管理-食品サプライチェーンの組織に関する要件」という技術仕様書を作成することを決定した。この動きを主導しているのは、カーギル、コカコーラ、ダノン、ネスレ、マクドナルド、ケロッグなど(*)世界的な畜産食品の販売を行っているグローバル企業である。生産者に各国のISO認証をとらせることで「製品の世界的均一化」を図ろうとしているといえる。
(酪農ジャーナル2014.12佐藤衆介)
*全部SSAFEの会員(食品安全・動物の健康を推進する国際NGO)

ネスレが中国に700人規模の酪農研修施設を開設 スイス
研修生は安全・安心な乳製品の製造に向けて、乳牛の飼養管理やアニマルウェルフェア、生乳の衛生管理、環境保全、社会とのかかわりや影響など酪農全般について総合的に学習する。
(酪農ジャーナル2014.12)

こうした消費者の購買行動を助けるのが動物福祉認証表示でしょう。最も進んでいるイギリスでは1994年から動物福祉の定義とも言うべき「五つの自由」に配慮していることを表す動物福祉認証表示である「フリーダムフード」の青いカモメのマークをつけた卵屋鶏肉、トラウトサーモンまでもがスーパーマーケットの棚や冷蔵ケースに数多く並んでいます。フリーダムフード以外にも各スーパーマーケットが独自のプライベートブランドを開発し、さらに上位基準である有機牛乳、有機畜産物、放牧豚や放牧鶏を扱っています。チャールズ皇太子の有機食品ブランドも揃っています。加工型畜産の国であるオランダでもBeter levenという先進的動物福祉表示が行われています。フランスは欧州第一の農業大国であり美食の国ですが、歴史のある地域の伝統的な食品を守るためにラベル・ルージュ表示を1960年代に始めており、すでに半世紀の歴史があります。例えば肉質がよいとされる赤鶏ブレスは認証を受けるためには放牧や長い飼育期間が必須条件であり、その意味では動物福祉を早くから唱えている畜産食品といえるでしょう。こうした動物福祉に配慮した畜産物はec時代からの加盟国だけではなく、新しくメンバーとなったハンガリーのマンガリッツア豚などにも当てはまります。
(養牛の友2015.8 植木美希)

「どのような飼育システムにおいても設備まかせではなくそこでの管理者のスキルが求められることは当然であり、euではawを考慮した生産はコストの上昇を伴う一方で同時に生産力を向上させ、また高品質の生産物をもたらすことになるとかんがえられています。つまり、精密に管理することによって、疾病や損傷による死亡または淘汰をを減少でき、さらには労働環境も改善されるので、十分な競争力を持てるとされています。」
(2015年8月 養鶏の友 田中智夫)

妊娠ストールを使っていない宮城県の(有)久保畜産(大地を守る会に豚肉を卸している)
「例えば妊娠豚舎の構造はフリーストールになっており、分娩豚舎へ移動するまで群飼にしている。一頭当たりのスペースは約5平方メートルあり、給餌の時間以外は豚房内の好きな場所で寝そべることができる。小さなスペースではあるものの、動き回ることも可能だ。一方で離乳母豚が分娩豚舎から帰ってきてすぐに群飼になるためケンカも懸念されるが、こうしたトラブルはほとんどないという。これには、育成期間中の群編成がポイントとなっている。同農場ではF1を自家育成しており、候補豚が小さな時期から、豚房ごとに交配グループを編成している。離乳後に群飼されるグループは以前からの顔見知りのため、ケンカが起こらないというのだ。再発など交配日のズレが発生した場合も、もといたグループの豚房に戻すようにしている。給餌の際にはストール内に母豚が入るため、ボディコンディションチェックなど個体管理にも問題はないという。」
(2015.11養豚界)

「欧州食品安全機関はウェルフェアの観点から、平均生存産子数が12頭を上回るような遺伝改良を推奨していません。総産子数の増加は、高い生産性を期待できる見返りに、子豚のウェルフェアを大きく障害する可能性があるとの考えからです。」(2015.11養豚界)

分娩豚房をフリーストールに(デンマーク)
・フリーストールの分娩豚房は、母豚と離乳後に子豚の豚舎となる。
・「分娩豚舎で放し飼いをする際に重要なのは、新生子豚の事故率を抑えることと、母豚が子豚を抱えている時に、人がトラブルなく豚房内にはいれることである。われわれは決して母豚を驚かせてはいけない。我々の存在を母豚に認識させることも重要である。候補豚にホルモン剤を接種して発情同期することは大きな助けである。なぜなら、候補豚はホルモン剤接種を心地よく感じているから。母豚に慣れてもらうのは、子供を懐かせるのと同じで、妊娠豚舎の豚房前を歩けば、そのあとをおとなしくついてくるようになる」と彼は言う。
・妊娠豚舎について「スタートしたばかりのころは、一部の母豚に落ち着きがなかったが、飼料に砂糖大根のしぼりかすペレットを混合すると、状態が変わってきた。現在、母豚は十分に落ち着いており、闘争や肢蹄の障害も少ない。」
・「私が新農場を建設した時期に、この地域の多くの生産者がアントニウス豚の生産をやめてしまった。この銘柄には、母豚が分娩豚舎で放し飼いにされていなければならないという要求が課されていた。」(2015.11養豚界)

イギリスではRSPCAの「フリーダムフード基準を指標にする場合が多くなっている。」
「イギリスでは2003年から2011年にかけて、非ケージ卵の占める割合が31から51%に増加した。同様にオーストリアでは57%に増加し、イタリアでは24%、ドイツでも57%に増加した。
EU egg labelling scheme
http://www.labellingmatters.org/about-us/eu-egg-labelling-scheme.html
(フランスについて)「イギリス同様、有機畜産だけではなく動物福祉にも力を入れ始めている。最もフランスはもともと自国の農産物に対して強い誇りとこだわりがあり、世界的にもその農産物や食品は評価が高い。こだわりの農産物や食品に対しては、ラベルルージュ、AOCなど産地や品質を表すロゴ表示がありラベルルージュ畜産物は味もよく動物福祉を実現している食品として関係者から認められている。ラベルルージュは1960年に始まっており歴史は長い。ラベルルージュ食品であるブレス鶏の飼育方法は、放牧や長い飼育期間などに詳細な基準があり、動物福祉畜産は欧州の加太になる前からすでに導入されていたとみることもできる。
(WQプロジェクト-評価法-について)現在はこの評価法を使用して実際の農場現場における動物福祉の実践と改善の段階に入っているという。(*WQプロジェクトは以前サイトで見ることができたが、現在はWQネットワークサイトが開設されており、こちらは関係者しか見ることができない)
(アメリカ連邦レベルでの畜産動物の福祉は28時間法と人道的と畜のみだが)
「生産者団体による自主基準
1996年全米養豚協会「養豚使用ハンドブック」
1996年全米肉牛生産者協会「肉牛飼養規範」
1999年全米鶏肉協会「動物福祉ガイドライン」
2000年全米鶏卵生産者組合「採卵鶏飼育ガイドライン」
2002年全米酪農生産者組合「乳牛飼育技術ガイドライン」」
(概要:HSUSは鶏卵生産者組合のガイドラインを非難していた。2010年にHSUSが潜入告発。それがきっかけで世論が反ケージとなりエッグビル合意にこぎつけた。しかしその後不成立に。
「アメリカでは州によって動物福祉への取り組みに格段の差がある。家畜のみならずペットや野生動物の対応も含めてカリフォルニア州が最も進んでいるとのランク付けも発表されている。(中略)カリフォルニア州内のサンディエゴ州立大学では2010年にカフェテリアがケージ卵の使用をやめ、ケージフリー卵を提供することを公表し、カリフォルニア州内のUSサンディエゴ、UCLA、サンフランシスコ大学、バークレー他多くの大学がこれに同調してことも発表した」
「アメリカ市民の食料品購入の主要な場所であるスーパーマーケットは、規模の大きさと低価格がセールスポイントで世界第一位の売り上げを誇るウォルマートが君臨する一方で、最近の市民の健康志向を反映して、有機食品や自然食品、高品質食品の品ぞろえに力を入れるホールフーズマーケットも大変人気がある。勇気や自然食品そして地産地消などを重要な戦略にするスーパーマーケットチェーンである。野菜の品ぞろえやディスプレイには目を見張るが、畜産物については日本と同様、アメリカ国内の動物福祉への対応が遅れていることから必ずしも進んでいるとはいえなかったものの2005年にケージ卵の取り扱いを中止すると発表している。イギリスロンドンに出店し、成功を収めたことから、動物福祉の重要性を認識し、アメリカ本土でも動物福祉の普及を目指して2008年から動物福祉5段階基準を策定し、消費者に理解されやすいよう色と数字で表示をするようになった。同時にこの動物福祉認証ができる組織を独立した組織「グローバルアニマルパートナーシップ」として立ち上げた。その後段階の大まかな基準と色は、数字0(赤):取り扱わない、ステップ1(橙):ケージやストールを使用しない、ステップ2(橙):エンリッチメント、ステップ3(黄色):屋外アクセス可能、ステップ4(緑):放牧、ステップ5(緑):動物中心主義-肉体改造禁止、ステップ5以上(緑):動物中心主義一貫生産、屠畜条件などまで考慮となっている。」
(大地と共生する、人・農・畜産(2015.7))
(ゾエティスジャパン主催の生産者ミーティング)
国内B社
取引先の大手ファストフード企業からAWに関するケーススタディを行うよ求められている。鶏などの飼育面積は生産コストに影響する生命線であるが、AW対応の畜舎構造などを考える必要性はあると感じている。しかし容易ではない。ブレインが欲しい。
国内C社
当社ではサウフィーダーを導入しているが、弱い豚が弾かれ餌が十分に摂取できない場合や病豚を発見しにくい場合があり、それが果たしてAWなのか疑問になる。
国内D社
欧州に
豚肉を輸出しているパッカーでは、輸送時間は8時間以内、ペンでの休憩時間は2時間以上といったAW規制への対応によりと畜効率が悪化しているのと同時に、パッカーで働く作業員がAWを意識して作業するように教育も必要だと感じている。
ゾエティスジャパン アルバレツ氏
イギリスでは必要以上に(AWの)圧力がかかってしまったため、10年間で母豚が10万頭も減少してしまった。
全体を通しての記者会見
母豚1000頭以下の家族経営などは生き残れるのか?
欧州では枝肉1kgあたり1ユーロを目標にさらなる生産コスト削減に腐心している。そのため母豚800頭以下では欧州ではもはや生き残れない。
(2016.05養豚情報)

農水省は、これまでにすでに動物用抗菌薬に対して様々なリスク管理対策を講じてきた。特に承認時や使用時に置いての規制を強化している。家畜由来細菌の薬剤耐性モニタリングシステムを開始して15年経過した。統一された方法で食用動物由来細菌の薬剤感受性試験を実施してきているので、耐性菌動態を確認できる。この15年で指標細菌である腸管内常在性大腸菌や腸球菌の耐性率は、多くの抗菌薬に対して低下傾向にあり、一方、抗菌薬使用量も減少傾向にある。
これはリスク管理対策が有効に機能した結果だとされる。しかし、いまだ特定の抗菌薬に対しては耐性率が高く、今後の課題である。
(2016.05養豚情報)

TPPの影響
農水省は「畜産物の生産減少額資産については、豚肉が約169億円~332億円、牛肉が約311~623億円、鶏肉が約19~36億円、鶏卵が約26~53億円、牛乳乳製品が約198~291億円と試算されている。